今週の全米アルバムチャート事情 #118- 2022/2/12付
北京オリンピックも始まって、日本選手のメダルのニュースも入り始めましたが、やはり中国の人権問題や香港問題を考えると、アスリートの皆さんには申し訳ないですがまったく観戦の意欲が起きませんねえ。それよりも今は今週末いっぱいに迫ったマンボウ期限がどうなるかが気になってます(と言ってたらやはり延長になってしまいました)。今週末の予定だった自分のDJイベントも、このマンボウで取り敢えず中止になりました。オミクロンの感染実態を踏まえた緊急事態宣言の新基準は健全な方向性だと思いますが、それにしても検査体制やワクチン体制の不備はあいも変わらず。我が家は先週家族に陽性者が出たときはラッキーにも近くのクリニックでPCR検査できましたが、濃厚接触者の疑いがある人でもなかなか検査も受けられず苦労したと言う話は未だに聞こえてきます。一人一人が気を付ける以外は当面なさそうです。
さて、並行してアップしている第64回グラミー賞大予想ブログ、先週末に第3弾(ロック・オルタナ部門)をアップしましたので、上記のリンクから是非ご覧下さい。第4弾のR&Bも今週頑張ってアップの予定です。お楽しみに。
さて今週付全米アルバムチャート、2月12日付Billboard 200ですが、先週の予想どおり、今週もわずかにポイント減を2%に押さえた『Encanto(ミラベルと魔法だらけの家)』のサントラ盤が、113,000ポイント(実売16,000枚)という堂々たる成績で、余裕の4週目の1位をマークしています。
これだけ毎週安定したポイントを稼ぎ続けるミラベル、自分もビートルズの『Get Back』見たさにディズニープラスを契約した口なので、ちょっとさわりのオープニングのところを観てみました。まあ、カラフルでとっても楽しそうな映像はいいのですが、何だか従来のディズニー・アニメ(例えば『アナ雪』とか)に比べると、CGが完璧すぎて、アニメ感が希薄で、どっちかというとライブアクション感が強いので、微妙に違和感があるんですよね。まあでも最近のゲーム世代の若い子とかにはこういう質感のアニメ作品が受けるのかもしれません。あと、何と言っても南米コロンビアが舞台で、ラテン系テーマ、というのがきょうびのラテン・ブームにマッチしているのかもしれません。先週Hot 100でもディズニー・アニメからの2曲目のナンバーワンとなり、今週2週目の1位をキープしている「We Don’t Talk About Bruno」にしても楽曲としてリン・マニュエル・ミランダの作品の中で最高、と言うわけでもなく(というかむしろ楽曲としては地味な感じ)なかなかこの大人気、映画を全編観ないとわからないのかもしれませんね。ちなみにUKでは「We Don’t Talk About Bruno」は今週3週目の1位。まだまだミラベル人気、続きそうです。
今週は今年に入って2回目のトップ10内初登場ゼロの週なんですが、その中でぐっと伸ばしてきたのが、ザ・ウィークンドの『Dawn FM』。先週比で63%増の70,000ポイント(うち実売37,000枚)で先週4位から2位にバウンスバックしてます。この上昇は今週の集計期間初日の1/28にこのアルバムのCDバージョンがリリースされたことによるので(当初リリース時はデジタルとストリーミングのみ)、本来彼のアーティストパワーから言って、ミラベルを蹴落として1位を決めてもおかしくなかったんですが、今一つポイントが伸びてないですね。
CDリリースで売上枚数としては今週トップなんですが、彼のサイトでのサイン入りCDの販売とか、いろいろマーケティングしててこのポイント数だとちょっと期待外れだったのでは。ヴァイナルとカセットは4/29リリースらしいので、その時もまたバウンスバックするでしょうが、今週全部リリースしておけば1位、あったかもしれませんね。
さて今週はトップ10内の初登場はゼロでしたが、11位以下100位までには4枚初登場してますので、そちらのご紹介。まず13位に初登場してきたのは、もうお馴染みの、グレイトフル・デッドのライブ音源コレクター、デイヴ・ラミューさんによる選りすぐりライブ音源集第41弾『Dave’s Picks, Volume 41: Baltimore Civic Center, Baltimore, MD - 5/26/77』。
今回はメリーランド州ボルチモア(MLBのオリオールズの本拠地ですな)のボルチモア・シヴィック・センターでの1977年の音源です。今回は前回の第40弾のインディアナ州ノーブルズヴィルでのライブ音源集に入りきらなかった曲「U.S. Blues」がボーナス音源で入ってるという、デッドヘッズのファンにはお得なセットです。しかし今回も22,500枚を実売で売ってアルバム・セールス・チャートの堂々2位というこのシリーズ、アメリカでのデッド人気の根強さを改めて実感しますねえ。YouTubeでちょっと検索するとこの日のライブ全編の動画が何本も上がっていて、同じようなことをやってる人がいっぱいいるのが判ります。すごいね。
続いてそのすぐ下、14位に登場してきたのは、ヨー・ゴッティやマニーバッグ・ヨ、先週は先頃非業の死を遂げたヤング・ドルフのトリビュート盤がチャートインしたりして、相変わらず安定した勢力のメンフィス・ラップ・シーンの若手、まだ19歳のNLEチョッパの2本目のミックステープ『Me Vs. Me』。
若干17歳でリリースしたシングル「Shotta Flow」(2019年36位)でブレイク、デビュー・アルバム『Top Shotta』(10位)がいきなりトップ10入りするなど華々しく登場したNLEチョッパ、相変わらずそのイキのいいトラップ・フロウがトラップ・ファンには人気みたいですね。先週のヤング・ドルフの追悼版のリリースとかち合わないように、今週にリリースをずらした、なんていう配慮するあたり、若いのになかなか感心なヤツですね(笑)。
少し下って31位に入ってきたのは、デトロイトのラッパー、ベイビーフェイス・レイの5作目になるアルバム『Face』。同じデトロイト出身で昨年ロディ・リッチとのコラボシングル「4 Da Gang」でブレイクした42ダッグの2018年のシングル「The Streets」にフィーチャーされたのが多分最初のブレイクになるベイビーフェイス・レイ、このアルバムはピッチフォークあたりでは結構評価高いみたいですが(7.1点)内容はごくごく普通のトラップ・アルバムですね。
他にもトリッピー・レッドやリル・ウジ・ヴァートらのトラックにフィーチャーされたりもしてるようなので、シーンではそれなりに有名なヤツなのかもしれません。
そして今週最後の圏外初登場は、39位に入って来た、2000年代に「It’s Been Awhile」(2001年Hot 100最高位5位)などのヒットで人気のあったロック・バンド、ステインドの元ボーカル、アーロン・ルイスの4作目のアルバム『Frayed At Both Ends』。しかし彼のこのアルバムの人気には結構ゲンナリさせられますね。というのも、このアルバムに収録された先行シングル「Am I The Only One」というアコギバラード、歌詞の内容がひたすら右翼的なコンサバなもので、南北戦争の南部連合を象徴する銅像(奴隷制を容認する意味合いあり)の取り壊しを嘆いたり、リベラル派で知られるブルース・スプリングスティーンをディスったりするというものでまあ、トランピストが喜びそうな曲なんですわ。
この曲がカントリーチャートで初登場1位になったりするあたりにまだまだアメリカ分断状態の闇が色濃く出ているなあと思わざるを得ないですね。まったくこの闇はいつ晴れるんでしょう。
ということで以上100位までの今週の初登場アルバムをご紹介しました。ここでいつものトップ10おさらい。いよいよヒップホップ勢の実売枚数二桁が2枚も登場、しかもガンナに至っては27枚!そんな中でザ・ウィークンドは先ほどもお伝えしたように今週アルバム売上1位です(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。
1 (1) (10) Encanto - Soundtrack <113,000 pt/16,000枚>
*2 (4) (4) Dawn FM - The Weeknd <70,000 pt/37,000枚>
3 (3) (4) DS4Ever - Gunna <54,000 pt/27枚*>
4 (5) (56) Dangerous: The Double Album ▲2 - Morgan Wallen <41,000 pt/2,101枚*>
5 (2) (2) Colors - YoungBoy Never Broke Again <39,000 pt/168*枚>
6 (6) (11) 30 ▲3 - Adele <34,000 pt/13,000枚>
7 (7) (22) Certified Lover Boy - Drake <34,000 pt/82枚*>
8 (8) (51) The Highlights - The Weeknd <33,000 pt/1,322枚*>
9 (10) (32) Planet Her - Doja Cat <32,000 pt/555枚*>
10 (12) (37) Sour - Olivia Rodrigo <29,000 pt/3,635枚*>
ちょっと静かな今週の全米アルバムチャート事情、いかがでしたか。さて最後にいつもの来週の1位予想ですが、うーん微妙。今回の対象期間である2/4-10にドロップされる作品で、トップ10は堅そうだな、と思うのが、ヒップホップの2チェインズとさっき名前の出たヨー・ゴッティ、前作が2位だったけどこのコロナ影響で微妙なフローレンス+ザ・マシーン、久々のコーンに今回ブレイクが期待されるミツキなど多士済々なんだけど、決定的な一打がないかなあ、という感じ。来週もミラベルが10万ポイント台をキープすると、5週目の1位になりそうです。ではまた来週。