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今週の全米アルバムチャート事情 #122- 2022/3/12付

ロシア軍のウクライナ原発攻撃はさすがに驚きました。ちょっとプーチンの精神状態が不安定かもしれない、という分析もあるようで、いよいよ早期の停戦交渉が必要ですが、ウクライナとの一対一で合意するとは思えませんね。USが動いてプーチンが耳を貸すとは思えないし、ここは英独仏の欧州チームに連携して交渉提案するしかないと思うのですが…ともかくも一日も早い停戦を祈るばかりです

並行してお届けしているグラミー賞大予想ブログ、先週末にはゴスペル&CCM部門の予想をアップしてます。CCMって何?というあなたもそうでないあなたも、上記のリンクから覗いて見て下さい。現在アメリカーナ部門の予想を準備中で、こちらも今度の週末までにはアップの予定です。お楽しみに。

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さて今週の全米アルバムチャートBillboard 200、3月12日付チャートの1位は、今週もポイント数を80,000ポイント(実売10,000枚)で踏みとどまった『Encanto(ミラベルと魔法だらけの家)』がとうとう8週目の1位をキープ、ここ2年でいうと昨年のモーガン・ウォレンDangerous: The Double Album』の10週に次ぐ長さで、あのテイラーの『folklore』に並んじゃいました。2016年以降でもドレイクの『Views』13 週、モーガン・ウォレンアデル25』の10週に続く4位(テイラーと同率)なわけですからもうこのデケイドを代表するヒットアルバムと言っていいでしょうね。

でもそういいながら、日本ではあまりこの映画盛り上がってないこともあってか、何だか大ヒット感がすごい薄いですよねえ。でも来週は多分10万ポイントは稼げるヒップホップのメジャー重量級が控えているので、ここまでがミラベルの天下、ということかもしれません。今週1位を競うと思ったコダック・ブラックは意外に弱かったんですが、今週Hot 100の方でも5週1位を続けた「秘密のブルーノ」が陥落、何とチャートイン59週目でUKのグラス・アニマルズ「Heat Wave」が1位を取るという1位までの週数新記録を打ち立てるなど(これまでの記録はマライアの「All I Want For Christmas Is You」の35週ですから大幅な更新)、地合が少しずつ変わってきている感じもありますので、来週くらいは首位交代あるかもしれません。

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そのコダック・ブラック、久々の大ヒットシングル「Super Gremlin」を搭載してのアルバム『Back For Everything』、中身の好き嫌いは別にして、8万ポイントくらいストリーミング主体で稼いでくると思ったんですが、蓋を開けてみると60,000ポイント(実売3,000枚)と意外と弱めのポイントで初登場2位でした。プロモーションの段取りとしては理想的なリリースパターンだったんですが。

でもねえ、何曲か聴いてみましたが、そのシングルの「Super Gremlin」も含めてやっぱり作品の内容的に、ごくごく普通のトラップ作品に終わってしまってるあたりが、トラップ中毒のティーンエイジャーのトラップヘッズ以外への広がりが確保できなかったことによる、予想外のポイントの弱さにつながったんじゃないでしょうかね。同じトラップ中心の作品作りでも、ロッド・ウェイヴみたいにオールドスクールなR&Bフレイバーをうまく使ったりとか、リル・ベイビーダベイビーみたいに、トラップっぽくないトラックも織り交ぜながら、みたいな工夫があんまり見られないというのがこのポイント伸び悩みにつながったんじゃないですかね。そんな気がオジサンにはします、はい

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それより予想がまんまと当たってちょっとうれしかったのは、しばらく前から一部の僕の周りでは期待が高まっていた18年ぶりのあの!ティアーズ・フォー・フィアーズの新作『The Tipping Point』が見事に31,000ポイント(実売29,000枚で、今週の売上ナンバーワン!)で8位に初登場、あの『The Seeds Of Love』(1989年8位)以来33年ぶりにトップ10を決めたこと。何と言っても我々アラフィフ〜還世代にはアルバム『Songs From The Big Chair』(1985年1位)と覚醒した切れ味鋭い大ヒット「Shout」「Everybody Wants To Rule The World」(1984年と85年、いずれも1位)が忘れられないわけで、この復活は嬉しい限りですね。特に今正にプーチンのウクライナ侵攻で「Everybody Wants To Rule The World(誰でも世界を征服したがってる)」を思い出した人も多かったと思うし、そのタイミングに『The Tipping Point(発火点)』というアルバムを出す、というのに何らかの意図を読み取った人も多いのではないでしょうか。

もちろん、このアルバムのタイトル曲は男女関係の発火点を歌ったもので、政治的なメッセージはないんですが、それでもこのタイミングにこのアルバムが出たことに何とも言えない感慨を持ってしまいますね。今この原稿書きながら聴いてますが、あの『Songs From〜』のようなクールな華やかさや、『The Seeds Of Love』のようなネオ・サイケデリック・ポップな感じはないですが、静かに、クールに、淡々と楽曲を紡いでくれている内容は抑えた感じながらなかなか素晴らしいものです。本国UKでも今週初登場2位と、1993年の『Eternal』(UK5位)以来のトップ10と好調。メタクリティックの点数も83点と高い評価を得て、今年前半の作品ではちょっと注目ですね。

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そしてそのTFFほどではないけど9年ぶりのトップ10をマークしたのは、9位に30,000ポイント(実売19,000枚)で登場してきた、アヴリル・ラヴィーンの『Love Sux』。こちらも出る前から、90年代に熱ーくアヴリルを聴いていた現在アラフォーくらいの洋楽ファンの知人の間では結構話題でしたが、アメリカでも同じようなファンは多かったと見えて、久々のトップ10となりました。

タイトルが『愛なんてサイテー』と、いかにもアヴリルらしい感じを醸し出していて、サウンドも「アヴリルって今何歳?(まだ30代ですw)」って感じのガンガンカッ飛びな、あのブリンク182トラヴィス・バーカーとの共作ナンバーもあれば、やっぱりねーという感じのマシンガン・ケリーとのコラボのポップ・パンクなナンバー、そしてブラックベアとコラボった「Love It When You Hate Me」みたいなヒリヒリするエモーショナルなナンバーもあり、と昔からのアヴリル・ファンなら充分に満足できそうな内容になってますね。こちらもUKでも好評で今週TFFに次いで初登場3位と大ヒットになってます。

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さて一方今週の圏外11位から100位の初登場ですが、珍しく今週はわずか1枚。UKチャートでTFFを抑えて初登場1位のUKラッパーのセントラル・シー、4位初登場の元スミスジョニー・マー、そして初登場10位とグローバルに大躍進したオーストラリアから登場の久しぶりの本格派ロック・バンド、ギャング・オブ・ユースといったあたりは軒並み全米では討ち死にで200位にも入ってません。で、その唯一の圏外初登場はというと、これが59位初登場、19作目になる『Rock Believer』をぶち込んできた何とスコーピオンズ(笑)。いや、笑っちゃいけませんね。かくいう自分だって20〜30代の頃はAC/DCと並んでスコーピオンズかなり好きで、日本のみシングル発売だった「He’s A Woman-She’s A Man(すごい邦題:暴虐のハードロッカー)」とかかなり好きだったし、US駐在時に遭遇した9−11の後、全米でアンセム化して大ヒットした「Wind Of Change」なんかには結構感動してたもんです。

今回7年ぶりになるこの新作、ボーカルのクラウス・マイネによると制作の予定は全くなかったらしく「だって俺たちあんだけバックカタログあって永遠にツアーできるくらい楽曲もあるし」って感じだったところ、アテネ在住の彼らの大ファンに「ファンはライブで合唱できるようなアンセム満載の新作アルバムを待ってるぜ」と焚き付けられて作ったって、結構彼ら純真ですなあ(笑)。結果はアルバム満載のスピード感いっぱいのハードだけど軽快で重すぎない(バラードは1曲のみ)、いつものスコーピオン節の作品に仕上がってて、ああこれは世界中のスコーピオンズファン喜ぶだろうなあ、という感じです。ただ自分が若い頃血をたぎらせて聴いていた頃に比べるとさすがに落ち着きや円熟味が感じられるあたりが年代の経過を感じさせる、UKっぽいバンドや新しいバンドについていけないオジサンロックファンにはストライクゾーンの作品ですねえ。まあこういう作品も必要ですね。

というところでいつものようにトップ10おさらい。ガンナの実売14枚ってヤバいですね。ホントに数えてるんかしら、これって感じで(笑)(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)

1 (1) (14) Encanto ● - Soundtrack <80,000 pt/10,000枚>
*2 (-) (1) Back For Everything - Kodak Black <60,000 pt/3,000枚>
3 (3) (60) Dangerous: The Double Album ▲2 - Morgan Wallen <42,000 pt/1,477枚*>
4 (2) (8) DS4Ever - Gunna <38,000 pt/14枚*>
5 (4) (55) The Highlights - The Weeknd <34,000 pt/1,190枚*>
6 (7) (26) Certified Lover Boy - Drake <32,000 pt/72枚*>
7 (5) (41) Sour ▲2 - Olivia Rodrigo <31,000+ pt/7,000枚>
*8 (-) (1) The Tipping Point - Tears For Fears <31,000 pt/29,000枚>
*9 (-) (1) Love Sux - Avril Lavigne <30,000 pt/19,000枚>

10 (8) (36) Planet Her - Doja Cat <29,000 pt/513枚*>

ということで今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。最後にいつもの恒例、来週の1位予想。来週のチャートの集計対象期間は3/4-10ですが、今回はミラベルにガチで対抗しそうなリリースが1枚、それはダベイビーヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲインのコラボアルバムという、今メインストリームのヒップホップでは一番乗ってる二人のタッグなので、これは普通で考えても10万ポイントは行きそう。持ちこたえながらも今週8万ポイントまで落ちてきたミラベルに代わって来週は首位交代、という可能性が高いと思います。それ以外でトップ10入ってきそうなのは、同じくヒップホップの故キング・ヴォンくらいかな。個人的には好きなバンドのバンド・オブ・ホーセズの新作がすごく良かったのでトップ10入ってくれると嬉しいんですが。ということでまた来週。

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