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今週の全米アルバムチャート事情 #226- 2024/3/9付

いきなり寒波が日本全体を襲ってる今週ですが、皆さんは体調など崩してませんか?うちではとうとう長年寒い時期に花を楽しませてくれた河津桜の木を月曜日には伐採してしまい、庭にぽっかり穴が空いたようで淋しい景色になってます。これから春に向けて庭に新たに植栽したりしてリノベするので、春爛漫の頃には新しい庭が再生の目処がついてるといいな、と思いながら庭を眺める今日この頃です。

"With YOU-th (EP)" by TWICE

さて今週の全米アルバムチャート、3月9日付のBillboard 200の首位は、期待を上回る出力を記録したKポップの9人組ガールグループTWICEが『With YOU-th (EP)』で念願の初の全米ナンバーワンを決めました!先週の予想では66,000ポイント出せば首位もあるのでは、と言ってましたが蓋を開ければ何の何の、95,000ポイント(うち実売90,000枚は今年最高の週間売上枚数)という立派な出力で2位のモーガン野郎(67,000ポイント)を押さえて堂々の一位初登場でした。これでTWICEは去年のニュージーンズ、一昨年のブラックピンクに続いて、全米ナンバーワンを達成した3組目のKポップ・ガールグループになります。

今回の初の首位はもちろんKポップのマーケティングの常で、ランダムの封入特典による14種類のCDと3種類のヴァイナル・ピクチャーディスクを用意するなどファン向けの物量作戦によるところは大ですが、作品の路線自体今回は従来のメインストリーム・ポップ路線からかなり今風エレクトロ・ポップの方向に寄せてきたな、という感じなのでそういう新しい試みが広くファンに受け入れられたという面はあるのかも。その路線のアメリカのボーイズ・バンド、ホワイ・ドント・ウィのメンバーが共作したオープニングで先頭シングルの「I Got You」なんて、いきなりテーム・インパラ風だし、「One Spark」や「Rush」なんてピンクパンサレスか!っと呟いちゃうほどのドラムンベース・ポップ。出力自体は昨年2位で自己最高をマークした前作『Ready To Be (EP)』の153,000ポイントからはかなり今回落ちてはいますが、こういう風に自己改革を怠らないアーティスト姿勢は多分今後いい方向に働いていくような気がします。何と言っても今回1位だし

"Easy (EP)" by Le Sserafim

さて今週のトップ10は久しぶりにKポップ・パワーが炸裂。首位だけでなく、もう一組こちらはもう少しエッジの立ったポップ寄りの5人組ガールズ・グループ、日本でも昨年末紅白に出演するなどここのところ人気沸騰中のル・セラフィム(Le Sserafim)の3枚目のEP『Easy』が41,000ポイント(うち実売34,000枚)で今週8位に初登場しています。彼女達にとっては昨年のファースト・フル・アルバム『Unforgiven』(6位)に続く2作目の全米トップ10。そしてこのチャートインで、上記のTWICEの首位と合わせてトップ10内にKポップ・ガール・グループが2組同時チャートイン、という全米アルバムチャート史上初の快挙を達成してます。Kポップに限らず、女性のみグループが2組トップ10にチャートインしたのは、2006年8月にチックス(旧ディキシー・チックス)の『Taking The Long Way』が9位、プッシーキャット・ドールズの『PCD』が10位に入って以来17年7ヶ月ぶりだというから、レア中のレア・イベントということになります。そして更に!毎度言ってますが、TWICEル・セラフィムもメンバーに日本人がいるので(TWICE3名、ル・セラフィム2名)今回の同時トップ10は、日本人または日本人が正式メンバーのグループが同時に2組トップ10入りしたという、歴史的快挙でもあるわけです!(あまりこういうことを報道するメディアもないと思うのでここで声高に言っておきますw)

今回の作品の内容ですが、僅か5曲のEPとはいえ楽曲の多彩さと充実度ではこれまでにない高いレベルになっているのに驚きます。タイトなロック調のトラックに乗って、日本語と韓国語と英語のモノローグが交互に繰り出されるシネマティックなオープニング・ナンバー「Good Bones」、うちの末娘が最近脳内ループしてるという、切れ味鋭いトラップ・ポップ「Easy」、今回の中では一番オーソドックスなメインストリーム・ポップ・ナンバー「Swan Song」、しっかり流行のアフロビートを採り入れたポップ・ナンバー「Smart」、そしてラストはドリーム・ポップなキャッチーなメロディとベッドルーム・ポップ的ビートが快感な「We Got So Much」と、なかなかル・セラフィム、侮れないな!という内容です。これは次のアルバムあたり、TWICEに続くKポップ・ガール・グループ首位の4番目のグループになる可能性充分ですね。

"Mac & Cheese 5" by French Montana

週末にひな祭りをまたいだ今週、トップ10は時ならぬKポップ・ガール・グループ旋風で盛り上がってますが、11位以降100位までの圏外の初登場は今週も2作のみ。まず14位にチャートインしてきているのは、モロッコ系アメリカ人ラッパーのフレンチ・モンタナ、23作目のミックステープ『Mac & Cheese 5』。2009年から数年おきにリリースしている「Mac & Cheese」シリーズのミックステープの第5弾。ちなみにアメリカに住んだことのある人はよく知ってると思うけど、「Mac & Cheese」はアメリカ人の子供達大好きな「マカロニ&チーズ」のことですよね。

フレンチ・モンタナというと2013年登場した頃の当初はアルバム2作連続トップ5入りなど、かなりの勢いでしたが、ここのところアルバムのチャート成績も今一つですし、ピンのヒットも2017年のスウェイ・リーをフィーチャーした「Unforgettable」(Hot 100最高位3位)以降出ておらず、ちょっと過去の人っぽくなりつつあるという印象。しかし今回のこのミックステープは彼的にはかなり気合いが入っているらしい様子が、ちょっと何曲かトラックを聴いただけでも伝わって来ます。90年代から2000年代にかけてのちょっとクラシックな感じのビートとトラック作りに、フレンチ・モンタナのエネルギーを感じるフロウが乗っかっていて、ヒップホップに留まらないヴァイブのトラックもいくつかあり「お、なかなかいいのでは?」と思わせてくれる瞬間があちこちに。ゲスト陣もそうした全体のトーンをサポートするかのように、2曲にフィーチャーされたカニエを始め、リル・ウェイン、リック・ロスの両巨頭をフィーチャーしたアンセミックな「Splash Brothers」や、若手のリル・ベイビーリル・ダークらをフィーチャーしたトラック、ブライソン・ティラーミッキー・エコー、ジェレマイらR&Bシンガー達をフィーチャーしたトラックなどミックステープにしてはかなり豪華な造り。本人曰く「最近ヒップホップがドープだった頃みたいにミックステープを作らずにアルバムに行くヤツが多いけど、俺はリル・ウェインとかリック・ロスとかウィズ・カリファのミックステープ聴きたいと思うし、そういうヴァイブを復活させたいからこのミックステープを出すんや」とのこと(何で大阪弁?w)。その意気込みに違わぬ、ソリッドな出来だと思います。思わぬ拾いものの一作

"10,000 Volts" by Ace Frehley

そしてもう一枚の圏外初登場は、何とキッスエース・フレーリーの何故かソロ・アルバム『10,000 Volts』が72位に登場してきてます。2019年にキッスのファイナル・ツアーの前後から、ジーンポールエースピーター、という2組の関係はあまりうまく行っていないような感じで、ソロ活動に専念していたエースですが、今回のアルバムは前作のカバー・アルバム『Origins Vol. 2』(2020)以来4年ぶりの新作になります。

内容は…まあ皆さん想像が付く通りの、キッス時代のエースのイメージそのままのオールド・スタイルで軽めのハードロック・ナンバーやポップ・メタル・ナンバーが11曲。1曲を除いてはすべてエース自身が、あるいはメインのバックバンド・メンバーでベースやキーボード担当のスティーヴ・ブラウン(90年代にちょっと人気があったグラム・メタル・バンド、トリックスターの元リーダー)との共作です。90年代ならいざ知らず、この2020年代にこの手のサウンドの作品が100位内にチャートインするというのはなかなかレアな現象ですし、ウォルマートなどでも売られているらしいCDのジャケもかなり大時代なもので、なかなか驚くべき現象ですが、やはり元キッスエースへの根強い人気はシニア・ロック・ファンを中心にあるということなんでしょうね。

ということで全米アルバムチャート、今週の100位までの初登場は都合4枚でした。一方Hot 100の方は特に対抗馬もない中、ビヨンセの「Texas Hold ’Em」が2週目の首位をキープしていますが、こちらのトップ10には今年リリースが予定されているSZAの『SOS』の続編アルバム『Lana』からの先行シングル、「Saturn」が6位に初登場してます。本来SZAのアーティストパワーだと、来週も強力な対抗馬がない中ビヨンセと首位を張り合う可能性もあるかな、とは思いますが、今週こっそりと2位に上昇してるカニエタイの「Carnival」が3/1付スポティファイ・デイリー・チャートで首位を取ってるので、来週はこれが1位になってしまう可能性が高いのかなあ。何か嫌だな。さて今週のトップ10おさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (-) (1) With YOU-th (EP) - TWICE <95,000 pt/90,000枚>
*2 (3) (52) One Thing At A Time ▲5 - Morgan Wallen <67,000 pt/1,467枚*>
3 (1) (3) Vultures 1 - ¥$ (Kanye West & Ty Dolla $ign) <64,000 pt/5,156枚*>
4 (4) (66) Stick Season ▲ - Noah Kahan <57,000 pt/4,908枚*>
5 (5) (64) SOS ▲3 - SZA <47,000 pt/1,896枚*>
6 (8) (21) For All The Dogs - Drake <43,000 pt/42枚*>
7 (6) (18) 1989 (Taylor’s Version) - Taylor Swift <41,000 pt/9,041枚*>
*8 (-) (1) Easy (EP) - LE SSERAFIM <41,000 pt/34,000枚>
9 (7) (236) Lover ▲3 - Taylor Swift <40,000 pt/7,253枚*>
10 (10) (7) American Dream - 21 Savage <38,000 pt/95枚*>

久々にアルバムチャート上位でKポップ・パワー、それも女性パワーが炸裂した今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。では最後はいつもの来週の1位予想(チャート集計対象期間:3/1~7)ですが、来週もワイルドカード的に変な動きが懸念されるのがモーガン野郎。ただしポイントを大きく積み上げる要素はないので、70,000ポイントを叩き出す新譜があれば充分来週1位は安泰ですが、それをやってくれそうなのはスクールボーイQぐらいかなあ…頑張れQ!ではまた来週。


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