【恒例洋楽新年企画#3】DJ Boonzzyの第64回グラミー賞大予想#2~ダンス&エレクトロニック部門
1月もあっという間にもう終わりが見えて来ましたね。来週からは中華圏の春節も始まりますが、今年は北京オリンピックですら無観客の方向なのに今年も例年ほどではないにせよ、1億人規模の大移動が予想されてるとか。今週家族からコロナ陽性者が出た身としては、本当に不要不急の外出はやめてほしい、と強く思うばかりです。自分も濃厚接触者(昨日受けたPCR検査の結果待ち中)なので来週いっぱいは家で大人しくして、このグラミー予想の執筆に精を出すかな。さてDJ Boonzzyのグラミー賞大予想の第2回、今回はダンス&エレクトロニック部門、そしてロック&オルタナ部門です。まずはダンス&エレクトロニック部門2部門。
6.最優秀ダンス・レコーディング部門
◎ Hero - Afrojack & David Guetta
× Loom - Ólafur Arnalds Featuring Bonobo
○ Before - James Blake
Heartbreak - Bonobo & Totally Enormous Extinct Dinosaurs
You Can Do It - Caribou
Alive - Rüfüs Du Sol(受賞)
The Business - Tiësto
このノミネーションを見て「おや?」と思った人はかなりのグラミー通。今回この部門、通常の5つを2つも上回る7候補がノミネートされているという、1998年第40回にこの部門が創設されて以来の状況なんですね。過去に6候補ノミネート、というのは3回あったのみ。今年はノミネーション・コミティーが撤廃されたので、おそらく単純に5番目の投票獲得数が同じものが3候補あった、ということなんでしょうが、それぞれのノミネート作品を聴いてみると、明らかに抜き出てるな、と思う作品2つくらいとそれ以外の作品、という感じに別れていて、ある意味予想はしやすい感じです。また今回はあまりレイヴ系、っぽい作品が見当たらないのもこのコロナ禍の影響かもしれません。
この部門は歴代で圧倒的なアーティスト、というのはあまりおらず、一番受賞回数が多いのがスクリレックスの3回(54回、55回、58回)で2回受賞してるのがケミカルズ(48回、62回)とジャスティン・ティンバレイク(49回、50回)のみ、ここ8年は毎回違うアーティストが取ってます。あと、今回のノミニーで過去ノミネーション経験があるのがデヴィッド・ゲッタ(2回)、ボノボ(2回)、ルーファス・ドゥ・ソル(1回)のみで、今回は比較的フレッシュな顔ぶれということになります。
で、その抜き出てる2つのうち多分こちらが◎本命だろう、というのがトップ40ファンだとピットブルの2011年のNo.1ヒット「Give Me Everything」や今回コラボ組んでるデヴィッド・ゲッタの2015年の8位ヒット「Hey Mama」にフィーチャリングされてたことでお馴染みの、オランダ人DJアフロジャックと、そのデヴィッド・ゲッタ(彼はフランス人なんでヨーロッパ軍団ですね)の「Hero」。もう曲が始まった冒頭から、ひたすらアップビートでどんどんカタルシスに引っ張り上げていくエレクトロなトラックが、「君もあなたも、一人一人がヒーローなんだ!」とひたすら高揚感を感じさせる、とってもキャッチーな曲。言わばみんなが下を向いているこのコロナ禍の時代に、気持ちを揚げてくれる曲としてはもう間違いない、そんな曲です。えらいキャッチーだな、と思ったらこの曲、この二人とポップ・プロデューサーのスターゲイトの二人、UKのポップ女性シンガー、エリー・ゴールディングとUKのソングライター、ジェイミー・スコット、そしてあのワンリパブリックのライアン・テダーというまあ豪華な当代一のメインストリーム・ポップ・ソングライター陣が寄ってたかって書いたらしく、キャッチーなのは当たり前。いやいや悪い意味じゃないですよ。61回で主要部門にもノミネートされた「The Middle」みたいなこういうアップリフティングな曲、こういう時勢だからこそ受賞してほしいですね。
で、もう一曲の抜き出てるのがこの部門初ノミネートのジェームス・ブレイクの「Before」。昨年末にリリースされた新作アルバムは今回の対象期間外なので、そのほぼ1年前にリリースの4曲入りEPのタイトルナンバー。この曲のMVが、ちょうどコロナ・ロックダウンの最中で外に出られずに鬱屈していたいろんな場所の人々にリモートで参加してもらって、それぞれの家でこの曲に合わせてダンスしている様子と、自宅スタジオで歌うジェームスの映像がフラッシュバックで延々流れるという、これもまた時節にピッタリの作品なんですよね。音数を極限までそぎ落としたトラックにのったジェームス独得の浮遊感満点の楽曲とボーカルもいい感じで。なのでこちらが○対抗。これ、どちらが取ってもおかしくないと思います。
残る×穴。残ったのはいずれもやや暗さを感じさせる作品ですが、その中で幻想的な曲調とMVの映像が心地よい、シガー・ロスらとも一緒に活動している、アイスランド人のエレクトロニカな作曲家、オーラヴル・アルナルズがアメリカ人DJボノボとコラボした「Loom」にしておきましょう。
7.最優秀ダンス/エレクトロニック・ミュージック・アルバム部門
○ Subconsciously - Black Coffee(受賞)
Fallen Embers - ILLENIUM
◎ Music Is The Weapon (Reloaded) - Major Lazer
Shockwave - Marshmello
Free Love - Sylvan Esso
× Judgement - Ten City
しかし毎回この部門(今年から部門名がエレクトリックからエレクトロニック・ミュージックに微妙に変更されてます)、よくいろんなところから決して一般には知名度が高くない作品がいろいろ集まってくるなと感心します。それでも毎年一つか二つは知ってる名前があって、今年のこの部門だと、Hot 100でもヒットの多いメジャー・レザーとマシュメロがそれなので、まずはこの2作品を聴いてみたところ、マシュメロの方が予想以上に全編ハイテンションのレイヴっぽい作りになっているのに対し、メジャー・レザーは(中心人物のディプロのキャラもあるでしょうが)様々な存在感たっぷりの客演アーティストをちりばめた、質の高いポップ作品になってるのが印象的でした。中でも映画『アベンジャーズ』シリーズを彷彿させるイメージのPVでアフリカはマリ出身のシンガー、アヤ・ナカムラ(日本とはまったく関係ありません、念のため)がダンスホール調のビートに乗ってフランス語で歌う「C'est Cuit」や、さっきのジェームス・ブレイクと似たコンセプトのコロナ・リモートでつながろう的メッセージで何とマムフォード&サンズのマーカス・マムフォードとコラボした「Lay Your Head On Me」など、映像と音楽の見事なシンクロが感動すら覚える出来だったので、◎本命はメジャー・レザーに決めました。
残った候補は、南アフリカ出身のDJのブラック・コーヒー、アメリカ人エレクトロDJのイレニアム(このアルバムは去年7月に49位に登場した時「きっとグラミーのダンス部門に出てくるだろう」とブログに書いてたんですがやはりその通りになりました)、同じくアメリカはノース・キャロライナ州ダーラム出身のインディ・ポップ・デュオ、シルヴァン・エッソ、そして最後はあら懐かしや80年代後半から90年代初頭にシカゴ・ハウスの中心的なグループの一つだったテン・シティの27年ぶりの新作と、なかなかこちらも多様な顔ぶれです。
オーガニックで流れるような心地よいエレクトロ・ソウルといった趣のブラック・コーヒー、21世紀メインストリーム・エレクトロ・ポップ王道路線のイレニアムはいかにも今時のダンス・ミュージック、という感じですが、シルヴァン・エッソはエレクトロなサウンドは使ってるものの、ちょっとこの中にあっては異色な感じのインディ・ポップ作品。そしてテン・シティは四半世紀経って、使ってる音は今風でもやっぱりハウス風なビートとグルーヴが気持ちいいなあ、という訳でなかなか予想が難しいのですが、個人的な好みで対抗○はブラック・コーヒー、そして×穴は不死鳥のように甦ってきたテン・シティに。
さて次にロック部門、というところなんですが、思いの外ダンス・エレクトロニック部門が充実してたのと、予想で大いに悩んでしまった関係で大分気合い入れて書きすぎてしまいました。これにあとロック4部門を追加するとそっちも書きたいこといろいろ満載なんで、一回の読み物としてはトゥーマッチかとも思うので、ここらで一回切りますね。ロック部門は次回ということで、数日中にこちらもアップしますので、お楽しみに。