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【恒例洋楽新年企画#3】DJ Boonzzyの第64回グラミー賞大予想#5~ラップ部門

今年のグラミー賞大予想ブログシリーズも5本目になり、だんだん佳境に入ってきました。続いては去年に続いていろいろと話題含みのラップ部門です。

18.最優秀ラップ・パフォーマンス部門

○ Family Ties - Baby Keem Featuring Kendrick Lamar(受賞)
  Up - Cardi B
◎ M Y. L I F E - J. Cole Featuring 21 Savage & Morray
× Thot S*** - Megan Thee Stallion

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あれ?何でこの部門4作品しか候補がないの?と思ったあなた、疑問を持つのもごもっとも。実はこの部門、去年11月にノミネーションが発表された時にはちゃんと5作品ノミネートされてました。その5作品目はドレイクの「Way 2 Sexy」。ところがその後12月にドレイクが自らグラミーのノミネーションを辞退してしまったのです。なので、彼のもう一つのノミネート作品、アルバム『Certified Lover Boy』も最優秀ラップ・アルバム部門から姿を消してしまったのでした。「でもさ、一つ候補が減ったんだったら、ノミネーション投票リストから6位の候補を繰上当選させてあげたらいいんじゃない?」うん、いいこと言いますね。自分も全くそう思います。ただアカデミー・グラミーはそれをしなかったんですね、今回。アカデミーが発表した表向きの理由としては、ドレイクがノミネーション辞退した時は既に本選の投票期間が開始してたから、というものですが、バラエティ誌がドレイクの辞退を報道したのは12/6、本選投票期間の初日なんです。しかも記事には「既にドレイクのマネジメントチームがアカデミーに辞退を申し入れて受け入れられた」とあるから、6番目の候補を繰上させることは可能だったはずなんですけどね。ドレイクは以前からグラミーへの批判を隠さない発言で知られてますけど、去年の同じカナダ人のザ・ウィークンドのガン無視事件にもかなり批判的だったようです。新会長のハーヴィー・メイソンJr.が去年からいろいろ頑張ってはいるんですが、依然グラミー・アカデミーを取り巻く不信と批判はなかなか消え去らないですね。自分だって2年連続ブルースのガン無視事件でかなり不信感溜まってきてますから。ええ。

ということで4作品の争いとなったこの部門、この中で作品として高く評価すべきは、という観点になると、本命◎はジェイZ、カニエ、ドレイク、ケンドリック・ラマーといったこの部門の受賞常連組の陰で過去2回、2016年第58回(この時はケンドリック・ラマーが受賞)、2020年第62回(この時は故ニプシー・ハッスルが受賞)と受賞を逃してきたJ.コールの久々の力作『The Off-Season』からの「M Y.L I F E」じゃないですかね。そしてそれに対抗○しそうなのは新人賞部門にもノミネートされてる、ケンドリック・ラマーの従兄弟、ベイビー・キームがそのケンドリックとコラボしてる「Family Ties」でしょうか。やっぱケンドリック絡みってのは無視できないですね。

そしてそのベイビー・キームと同じくらいJ.コールに迫りそうな穴×は、去年この部門とラップ・ソング部門を「Savage」で受賞、主要部門でも新人賞取っちゃった勢いのあるミーガン・ザ・スタリオン。この「Thot S***」も彼女一流の女性エンパワーメント・アンセムなので、こちらが対抗○でもいいくらいです。そしてドレイクの「Way 2 Sexy」は多分残ってても受賞の目はなかったでしょうねえ。そもそもサンプリング・アイディア(ライト・セッド・フレッドの「I'm Too Sexy」だもんねー)がイマイチだしね。

19.最優秀メロディック・ラップ・パフォーマンス部門

× P R I D E. I S. T H E. D E V I L - J. Cole Featuring Lil Baby
  Need To Know - Doja Cat
  Industry Baby - Lil Nas X Featuring Jack Harlow
◎ Wusyaname - Tyler, The Creator Featuring YoungBoy Never Broke Again & Ty Dolla $ign
○ Hurricane - Kanye West Featuring The Weeknd & Lil Baby(受賞)

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去年から「メロディック・ラップ」と名称が変わったこの部門の考察は去年のグラミー賞予想ブログのこの部門のところでガッツリやってますので、詳細はこちらをご覧下さい。いずれにしても、この部門は名実共にラップ+うた、ではなく、ラッパーが歌いながらラップする作品だったり、鼻歌っぽくラップするヤツとガッツリラップするヤツのコラボ作品だったりする、そんな作品に賞を与える部門だと思って下さい。そうなってくると最近のそういうスタイルで代表的なのはドレイクで、去年もこの部門にリル・ダークとコラボした「Laugh Now Cry Later」でノミネートされてましたが、今回は入ってません(あ、辞退したわけではないのでw)。それでも結構そうそうたるメンツが並んでますが、今年のメンツで一際光っているのは何といってもタイラー・ザ・クリエイターの「Wusyaname」。この曲収録のアルバム『Call Me If You Get Lost』も2021年のヒップホップ作品の中では一際抜きんでてたので、自分も年間のアルバムランキングの7位に選んだくらいで。そこからのシングルカットだったこの曲、タイラーがタイトルをだるーく歌う、全体的に気持ち良ーくオールドスクールなグルーヴで流れていくようなトラックにところどころでYBNBAタイ・ダラ・サインのラップが絡んでくるというもので、作品の出来から言ってもやはりこれが本命◎でしょう。

対抗○は迷うところで、全編一人で歌もラップも達者にこなすドジャ・キャットや、何故かアカデミー・メンバーに人気あるリル・ナズXなんかもそれなりに強そうではあるのですが、今回主要部門のアルバム部門になぜか『Donda』がノミネートされてしまったカニエがここにいるということで、過去に2回この部門受賞したのは大分昔なんですが(2012年第54回「All Of The Lights」と2009年第51回エステルの「American Boy」にフィーチャー)、ザ・ウィークンドのボーカルも素晴らしいし、なかなか無視できないので対抗○はカニエ。でも、今回全く自分の作品をグラミー対象に提出しなかったザ・ウィークンドがこの曲で受賞したりしたら面白いね。

そして穴×は、後半のラップはリル・ベイビーに任せて、自分はタイトなトラックに乗って気持ちよさげに歌ってるJ.コールの曲に付けておきます。

20.最優秀ラップ・ソング部門(作者に与えられる賞)

× Bath Salts - DMX Featuring Jay-Z & Nas (Shawn Carter, Kasseem Dean, Michael Forno, Nasir Jones & Earl Simmons)
  Best Friend - Saweetie Featuring Doja Cat (Amala Zandelie Dlamini, Lukasz Gottwald, Randall Avery Hammers, Diamonté Harper, Asia Smith, Theron Thomas & Rocco Valdes)
  Family Ties - Baby Keem Featuring Kendrick Lamar (Roshwita Larisha Bacha, Hykeem Carter, Tobias Dekker, Colin Franken, Jasper Harris, Kendrick Lamar, Ronald Latour & Dominik Patzek)
○ Jail - Kanye West Featuring Jay-Z (Dwayne Albernathy, Jr., Shawn Carter, Raul Cubina, Michael Dean, Charles M. Njapa, Sean Solymar, Kanye WEst & Mark Williams)(受賞)
◎ M Y. L I F E - J. Cole Featuring 21 Savage & Morray (Shéyaa Bin Abraham-Joseph, Jermaine Cole & Jacob Dutton)

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ドレイクが消えてしまってジェイZケンドリック・ラマーが作品出してない今年のラップ部門は、多分構図的にはカニエとJ.コールの一騎打ちになるはず、というのが今年の自分のラップ部門全般の見立て。そしてカニエはここ最近大統領選には出馬しちゃうわ、トランプ支持を声高に叫ぶわ、かと思うといきなりゴスペル合唱隊を組んでゴスペル番組の配信を始めるわで、その分裂ぶりに磨きをかけてる感もあり、加えて去年鳴り物入りでドロップした『Donda』が軒並み音楽メディアから低評価だったりと、何かあまりアカデミーメンバーの票を集める要素がないと思うんですよね。まあカニエカニエなので、ノミネーション投票にはこうやって入ってくるんでしょうが、こうして他のノミネーション、特にJ.コールの気迫のこもった作品と並べちゃうと、やはり勝ち目なさそうですよねえ。だいたいパフォーマンス部門では「Hurricane」なのにこちらはなぜか「Jail」というバラバラなノミネーションなのは、両方とも「M Y. L I F E」というJ.コールに対して不利に働きこそすれ、決して有利には働かないと思うし。なので、本命◎はJ・コール、カニエはいいとこ対抗○でしょう

そしてここで何と昨年4月に惜しくも他界したDMXの遺作『Exodus』から、DMXジェイZナスという、同じ90年代後半~2000年代にかけてNYラップ・シーン黄金時代を共に生きた二人をフィーチャリングした「Bath Salts」がノミネートされていてビックリするやら嬉しいやら。アカデミー・メンバーのリスペクトの現れ以外の何ものでもないこの事実に涙をおさえられないので、自分もリスペクトを込めてこの曲に穴×を進呈致します。

21.最優秀ラップ・アルバム部門

× The Off-Season - J. Cole
○ King's Disease II - Nas
◎ Call Me If You Get Lost - Tyler, The Creator(受賞)

  Donda - Kanye West

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さて先ほどもお伝えしたように、この部門も『Certified Lover Boy』がノミネートされてたドレイクが辞退したので、4作品の戦いになっています。で、前の部門のところで「今年のラップ部門はカニエとJ.コールの一騎打ち」と言いましたが、このアルバム部門だけはちょっと話が違いますね。去年もこの部門、他のラップ部門では全くノミネートなしだった5組のアーティストの作品がノミネートされる、というちょっと驚く事態だったの、覚えてますか?ちょっと調べてみると、このアルバム部門の他部門からの乖離状況って、2019年第61回くらいから出てきてるんですね。そして昨年は何とナスの久々の快作『King's Disease』の受賞を全く予想できなくて、うれしいやらまたまたビックリするやら。そのナスがその『King's Disease』のパート2アルバムを昨年ドロップして、見事アルバムチャートの3位にランクイン。それがまた素晴らしい出来だったので、今年も当然のようにノミネートされてます。毎週の「全米アルバムチャート事情!」のブログでもチャートインの時に解説してますが、特にあの!ローリン・ヒルと客演した「Nobody」での二人のフロウの存在感とトラックのグルーヴとの相乗効果といったら素晴らしいの一言。プロデュースのヒット・ボーイ会心の仕事ですね。なので本当ならナス本命◎、2年連続受賞!と行きたいところですが、残念ながら付けるのは対抗○印。

というのも、ナスのこの作品以上にコンテンポラリーとオールド・スクールの音像とグルーヴを自由自在に駆使し、独創的なブレイクビーツを絶妙に使ったトラックと、ある時は歌い、ある時は鼻歌ラップとこちらも自由自在なパフォーマンスを全編見せてくれるタイラー・ザ・クリエイターの『Call Me If You Get Lost』がいるから。そしてタイラーは一昨年、ナス受賞の前の年に前作『Igor』でこの部門受賞してます。その時の他のノミネート作品は今回ほどの強力作品たちではなかったので、今年の方が激しい競争になるでしょうが、やはり2021年のラップ作品というとタイラーのこの作品になるのでは。だから本命◎です。

そしてこんな強力作品ばかりでなければ、多分余裕で受賞できていたと思うJ.コールの『The Off-Season』は残念ながら穴×ですね。タイラーナス、強力過ぎますから。え?カニエ?いやいや最初から問題になってませんわ。

ということでドレイクのノミネーション辞退などいろいろ話題含みのラップ部門でした。次の部門はカントリー部門。こちらはこちらでいろいろ話題がありますので、数日中にアップしますね。お楽しみに。

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