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2021グラミー・ショーのみどころ〜Boonzzyの直前レポート

さていよいよ週明け月曜日の日本時間午前9時から日本ではWOWOW第63回グラミー賞授賞式(今年は「2021グラミー・ショー」って言うらしいですが)の模様が放映されます。従来であれば日本時間10時からなんですが、ちょうどこの週末でアメリカは夏時間に移行して、1時間繰り上がるのでこの時間になります。日本では毎年このためだけにWOWOWを短期聴取申込する音楽ファンも多いでしょうね。Boonzzyもその一人です(笑)。さて今日は当日の授賞式に向けていくつかのみどころと、最新ニュースをまとめて「Boonzzyの2021グラミー・ショー直前レポート」としてお送りします。当日の授賞式視聴の予習にご活用ください。

1.司会者と当日の進行フォーマット

今年のグラミー・ショーの司会は、昨年まで2年務めたアリシア・キーズに代わって、アメリカの人気コメディアン、トレバー・ノア。彼は南アフリカ出身で、現地アフリカ先住民の血を引く母親とスイス人の父親の間に、まだアパルトヘイト下の南アフリカでは人種間結婚が違法だった頃に生まれたいわゆるバイレイシャル。生後すぐに法改正で違法性を免除されたトレバーは、その後現地のTVやメディアで、政治的風刺をテーマにしたコメディアン活動で人気を博して2011年、27歳の時にアメリカに移住。日本と違って政治風刺がコメディアン成功の鍵であるアメリカで人気を博し、2015年からは、やはり政治風刺コメディ・ホストのジョン・スチュアート(彼も2001年第43回から2回グラミーの司会をしてます)の後任として、ケーブルチャンネルのコメディ・セントラルエミー賞も受賞している『The Daily Show』のホストを務めているという、言わば知性派のコメディアンです。日本ではあまり知られていいないトレバーですが、2018年第60回のジェイムス・コーデン(カープール・カラオケで有名でしたね)以来のコメディアン・ホストとなる彼のどんな政治風刺コメントが炸裂するか、結構楽しみですね。

開催のフォーマットについては、NARASハーヴィー・メイソンJr.臨時会長代行が再三言ってた「前撮りはしない」というポリシーと、コロナ感染防止対応を確保する目的を両立させるために、ステイプルズ・センターではなく、ロサンゼルスの某所にある屋外の4つのステージで行われるパフォーマンスを、順番に切替ながら放映されるようです。当然観客はなしか、最小限となる予定とのこと。そしてどうやら例年のように部門ごとに次々に異なるプレゼンターが登場するのではなく、その4つのステージに一人ずつのプレゼンターが付いて、ホストステージにいるトレバーと連携しながら授賞式を進めるというフォーマットのようです。そのプレゼンターも昨日アナウンスされていて、今回主要部門の最優秀アルバム部門にノミネートされている二人、ジェネ・アイコジェイコブ・コリエー、昨年主要3部門ノミネートのリゾ、そして何とリンゴ・スターが4人目という顔ぶれ。これはこれで結構楽しめるかも。

2.当日のパフォーマー

上記のとおり、4つのステージで順繰りにパフォーマンスを展開する当日のパフォーマーもアナウンスされてます。リストは下記をご参照。個人的にはフィービー・ブリッジャーズらオルタナ系のアーティストがブッキングされてないのがやや不満ですが。

テイラー、ポスティ、ミーガン・ザ・スタリオン、デュア・リパ、ブリタニー・ハワード、ハイム、ドジャ・キャット、ビリー・アイリッシュなど、主要部門ノミネートのメンバーのパフォーマンスも見ものですが、個人的に注目してるのはこの3組

ミッキー・ガイトン

今回カントリー・パフォーマンス部門にノミネートされて、グラミーの歴史でも初の黒人女性アーティストのノミネートとなった、ミッキー・ガイトンNARAMのダイバーシティ重視のノミネーション方針に大きく影響を受けたとはいえ、その彼女が授賞式でパフォーマンスするシーンはグラミー63年の中でも歴史的なシーンになるでしょうね。特に黒人差別発言で最近物議を醸した、昨年来大人気のモーガン・ウォレンが今回全く無視されていて、パフォーマンスの前後に彼女が何かこれについてコメントするかどうかも興味あるところです。

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去年のブレイクぶりからいったら主要部門のROYあたりに「Dynamite」がノミネートされても何もおかしくなかった彼らですが、多分アジア系アーティストとしては初かもしれない授賞式でのパフォーマンス、どういう感じでやるのか楽しみです。彼らがロサンゼルスに行けるわけないのでおそらくライブストリーミング中継でパフォーマンスを披露すると思うので、逆にこのジェイムス・コーデンのレイトショーで見せてくれたようなかなり独自の演出が期待できるのではと思いますね。

シルク・ソニック(ブルーノ・マーズ&アンダーソン・パーク)

まだグラミーの公式サイトではアナウンスされてませんが、複数の音楽メディアの報道によると3/5にシングル「Leave The Door Open」をリリースしたばかりのブルーノアンダーソンのワンタイム・ユニット、シルク・ソニック当日のパフォーマンス・ロスターに含まれることが決定したそうです。何でもブルーノ自らグラミーへパフォーマンスさせてくれー、とアピールしたのが聞き届けられたらしいです。先日Zoomで開催した吉岡正晴さんとの毎年恒例の「ソウル・サーチン・ラウンジ〜グラミー予想スペシャル」でもオープニングに使わせてもらったこの70年代レトロなR&Bグルーヴが好き者にはたまらないこの曲、コロナ下で異例のフォーマットで開催される授賞式当日に、きっとホンワカした暖かい雰囲気を届けてくれること間違いなしですね。

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そして今回最多の9ノミネートのビヨンセは、今の段階ではラインアップに名前が挙がってません。さてさてサプライズ出演はあるのか?

3.授賞式の見方

今年はコロナ感染防止対策ということもあって、例年よりストリーミング等でいろいろなイベントが日本からでも見れそうですが、授賞式本編だけはやはりCBSがライセンスをがっちり持ってるので、日本からだとWOWOWで見るしかないようですね。CBSのサイトや、CBS傘下のパラマウント+ディズニー+と同じような、映像動画コンテンツをストリーミング配信する会員制サービス)でも見れることになっていますが、恐らくUS以外の場所からの視聴はアウトでしょうから、まだの人は今のうちにWOWOW臨時サインアップしといて下さい

今年もジョン・カビラホラン千秋の司会で、WOWOWプライム・チャンネル(オンデマンドでも配信)で3/15の午前9時から終わるまで放送の予定。去年は現地レポーターで山Pこと山下智久が出演してましたが、多分今年は現地会場には入れないのでおそらくなし。代わりにスタジオ・ゲストにクリエイティブマンプロダクション社長の清水氏NulbarichJQ(すみません、この人日本のR&B系のシンガーソングライターらしいんですがよく知りませんw)、音楽評論家の高橋芳朗といった人達が出演するらしいです。例年に比べると地味なメンツですが、例年のように会場に来ている外タレをサテライトスタジオに引っ張り込んで、というわけにも行かないから致し方ないですかね。なお、グラミーのウェブサイトでは本編中随時、授賞スピーチやインタビューの動画は配信されるようです。

本編ではないですが、3/15の日本時間午前4時から、グラミーのウェブサイトと何とYouTubeで、「第63回グラミー賞プレミア・セレモニー」として、本編で放映されない70以上の部門の授賞の模様や、本編には登場しないアーティストたちのパフォーマンス(個人的には最優秀トラディショナル・ポップ・ボーカルアルバム部門ノミネートのルーファス・ウェインライトや、最優秀アメリカーナ・アルバム部門ノミネートのサラ・ジャローズとかのライブが見たいですね。ラインアップは下記の記事ご参照)を、ジェネ・アイコの司会でストリーミング配信するらしいです!夏時間の関係で例年以上に早朝になってますが、何とか後半だけでも覗いてみてはどうでしょうか。BoonzzyもさっそくYouTubeのストリーミングページを登録して、月曜日起きたらすぐ見れるようにしときましたw

4.日本人ノミニー

昨年はROYとアルバム部門にノミネートのH.E.R.の『Hard Place』のエンジニア、堤幹成さん、最優秀ラージ・ジャズ・アンサンブル・アルバム部門ノミネートの挟間美帆さん、アルバム部門ノミネートのヴァンパイア・ウィークエンド『Father Of The Bride』のエンジニア、コサカ・タケマサさんとタカヤマ・ヒロヤさん、最優秀ボックス/特別限定エディション・パッケージ部門の『Woodstock: Back To The Garden - The Definitive 50th Anniversary Archive』のアート・ディレクターの小池マサキさん(見事2度目の受賞、おめでとうございます!)など計6人の日本人がノミネートされてましたが、今回はグッとその数は減って、今の所確認できているのは下記のお二人です。

小川慶太

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NYはブロンクスを拠点に世界的に活躍する、マイケル・リーグ(b)を中心にしたジャズ・ファンク・フュージョン集団、スナーキー・パピーの中心メンバーの一人としてパーカッションを担当する小川さんは、今年の最優秀コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム部門でノミネートのスナーキー・パピーのアルバム『Live At The Royal Albert Hall』でノミネートされてます。小川さんは、第59回2017年に同じ部門で受賞した、スナーキー・パピーの『Cultura Vulcha』のメンバーとしても既に受賞してますから、今回も是非決めて2度目の受賞を果たして欲しいもんです。

マサ小浜

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そして吉岡正晴さんのお友達で「ソウル・サーチン・ラウンジ」にも何度か来られたことのあるギタリストのマサ小浜さんは、今年も最優秀コンテンポラリー・ブルース・アルバム部門にノミネートされたファンタスティック・ネグリートの『Have You Lost Your Mind Yet?』にメインギタリストとして全面参加、6曲目の「Your Sex Is Overrated」ではフィーチャリング・マサ小浜とクレジット入りで、素晴らしいリードを聴かせてくれてます。マサさんは、ファンタスティック・ネグリートがこの部門受賞している前2作『The Last Days Of Oakland』(2016)、『Please Don't Be Dead』(2018)にもそれぞれ全面参加で同じく受賞しており、今回受賞となると、ネグリート共々三作連続受賞の偉業を成し遂げることになります。ほぼ確実じゃないかな、とこの間吉岡さんとは話してました。

5.グラミーノミネート・レビュー委員会の影

さてここまでは楽しげな話が続いたのですが、ここで一つちょっと興を殺ぐようなお話を。でもグラミーを見るにあたって予備知識としては重要だと思うので。

先々週、上記のビルボード誌の記事が改めて明らかにしたのは、グラミー全84部門中、14,000人にのぼる一般のNARAS会員の投票メンバーが最終ノミネートを決められるのは、僅か12部門だという衝撃の事実。これ、どういうことかというと、84部門中、78部門については第一次のノミネート候補は、一般会員メンバーの投票によって決定されるんですが、そのうち主要4部門を含む59部門については、ノミネート・レビュー委員会が一般投票から上がってきたリストをもとに最終ノミニーを決定するんです。実はこのノミネート・レビュー委員会におけるノミニー決定のプロセスが不透明であり、委員の個人的嗜好や場合によっては利害によって恣意的に行われている、といってNARASのボード(役員会)に訴えた結果、今年の1月に解任されたのが、昨年前任のニール・ポートナウ退任後、ダイバーシティ推進を期待されてNARAS会長に就任したデボラ・デューガンだったんです

この件は既に昨年デボラが解任された直後にローリング・ストーン誌が詳細に報道しています(上記記事)が、要は主要部門を含む大半の部門については、最後の最後にノミネート・レビュー委員会の恣意によってノミニーが入れ替えられたりするリスクがあり、それは一般会員のダイバーシティを改善したり、年齢層を下げたりしても根本的には解決しないということ。昨年を代表するアルバムと楽曲を出しながら、今年ノミネート皆無だったザ・ウィークンドの件(彼の場合、当初の開催予定日の一週間前に予定されていたスーパーボウル・ハーフタイムショーへの出演を決めたことが、グラミー・アカデミー上部の不興を買ったためカットされた、といういかにもな噂も立っています)、昨年の対象アルバムなのに、デラックス・エディションが今年の対象期間に出たということで主要4部門中2部門ノミネートのブラック・プーマの件、そして極端に知名度レベルの低いノミニーが例年以上に目立つ最優秀新人賞部門の件など、この恣意性の結果ではと思われる状況については、これまでBoonzzyのグラミー予想の記事でも再三触れてきましたが、今回ビルボード誌の記事で改めてその影響が想像以上に大きいことが判ったわけです。

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純粋に一般会員の投票によってノミネートが決まる部門は、ポップ部門、オルタナ部門、レゲエ部門、スポークン・ワード部門、コメディ部門、ミュージカル・シアター部門、そしてビジュアルメディア向け楽曲部門の計12部門。これ以外の部門のノミニーのラインナップが時にして納得感がないのは、こういう要素があるんだな、ということを頭の片隅におきながら、当日の授賞式をご覧になって下さい。ただ、唯一いいことは、最終受賞者の投票は恣意性なく、一般会員の投票で決定されるということ

さあ、コロナの年を反映した特異な形で行われる月曜日のグラミー授賞式主要4部門、そして各ジャンル部門の受賞の行方はいかに?ではまた授賞式当日に。




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