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恒例グラミー賞企画第1弾!第66回グラミー賞主要4部門ノミネート予想
今年もやってきましたグラミー賞シーズン。今年も例年通り、年末から年始にかけて第66回グラミー賞各部門の受賞予想ブログをここnote.comで行いますよ。前回は計54部門を12回のブログ記事に亘って大予想、うち本命◎対抗○が受賞的中したのが37部門、的中率68.5%とまずまずの結果でしたが、主要4部門は散々の結果で、特に新人賞部門でサマラ・ジョイ、そしてソング・オブ・ジ・イヤー(SOY)を何とボニー・レイットの「Just Like That」が受賞するという、2つの驚きの(でも素晴らしい)受賞はいずれも無印で外したのが個人的には残念だったので、今年の予想は気合い入れて行きたいと思っております、はい。
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今回の第66回グラミー賞の授賞式は2024年2月4日(日)(日本時間2月5日の月曜日朝)、いつものロサンゼルスのクリプト・ドットコム・アリーナで開催予定ですが、その前にノミネーション発表が11月10日金曜日の西海岸時間の朝7:45(日本時間は同日の夜11:45)からほぼ1時間にわたって、グラミー賞のライブストリーミング・サイト(https://live.grammy.com)とレコーディング・アカデミーのYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/grammy)でストリーミング配信されるようです。ノミネーション発表イベントには、アカデミー会長のハーヴィー・メイソンJr.をはじめ、今年2024年ミュージケア・パーソン・オブ・ジ・イヤー(音楽業界での芸術的功績と慈善活動への献身的貢献を評価して毎年レコーディング・アカデミーが授与。去年はモータウン会長のベリー・ゴーディとスモーキー・ロビンソンが受賞)を受賞したジョン・ボン・ジョヴィ、セント・ヴィンセント、ウィルコのジェフ・トウィーディー、マニー・ロング、キム・ペトラスらの出演が発表されてますね。本来なら自分もライブでストリーミングを観たいところですが、実は今度の日曜日から検査入院で一週間ほど入院することになってしまって、この日もまだ病院にいる可能性が大なのでその場合は残念ながら見れないことになります。時間的にも悪くないし、皆さんは是非ライブで見て下さいね。
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さて今年もいろいろ変化がアナウンスされているグラミー。最優秀アフリカ音楽パフォーマンス部門、最優秀オルタナティブ・ジャズ・アルバム部門、最優秀ポップ・ダンス・レコーディング部門の3部門の新設と、最優秀プロデューサー部門と最優秀ソングライター部門(昨年新設)の主要部門への移行あたりが大きな変化でしょうか。なので本来このノミネート予想も「主要4部門」ではなく「主要6部門」とすべきなのかもしれませんが、まあ例年にならうということで4部門のノミネート予想とさせて下さい。
一方、この主要部門のノミニー数が、第64回、65回はそれまでの8候補から10候補に増やされてたんですが、今回66回からまた元の8候補ノミネートに戻っています。なお、今回の対象作品は、2022年10月1日から2023年9月15日までに発表された作品と、例年よりちょっと対象期間が短くなっています。
昨年は新人賞部門で第53回(2011年)のエスペランザ・スポールディングに続いて史上2人目のジャズ・アーティスト受賞となったサマラ・ジョイの受賞や、SOY部門によーわからんDJキャリドのノミネートがありながら、臓器提供による人命救済の素晴らしさを歌ったボニー・レイットの曲が受賞したり、アルバム部門とROY部門にあっと驚くアバのノミネートがあったりと、いつものことながら意外性も充分見せてくれた主要部門、今年もノミネーション予想行ってみましょう。最初は最優秀新人賞部門の予想から行きます。
1.最優秀新人賞部門ノミネート予想
昨年の予想では、ノミネートされたら受賞間違いないと思っていたザック・ブライアンがノミネートされなかったり(彼は「Something In The Orange」で最優秀カントリー・ソロ・パフォーマンス部門にノミネート)、それ以外にも堅いと思ったミツキやゲイル(彼女は「abcdefu」がSOYにノミネート)、レイニー・ウィルソンらがノミネートされずと、この部門のノミネート予想の難しさを改めて実感してました。ノミネート的中したのはマネスキンとラットだけで、結局受賞したサマラ・ジョイなんてこの時点ではそもそも知らなかったしw
去年のノミニーを見ると、定番のカントリー・フォーク系1名(モリー・タトル)、R&Bヒップホップ系3名(オマー・アポロ、マニー・ロング、ラット)、ロック系2名(ウェット・レッグ、マネスキン)の他、ラテンのアニッタ、アフリカ系のトーベ・ンウィグウェ(この人も知らんかったなあ)、そして何とジャズ系でサマラ・ジョイとDOMi & JDベックの2組と、実に多様性に富んだ顔ぶれで、かなりレコーディング・アカデミーが音楽的・人種的多様性を意識している様子が窺える内容でしたね。今年もノミネーション対象アーティストとして405アーティストの申込があったそうです(去年は368)。その中で自分が選んだのはこの8組です。
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Ice Spice
Jelly Roll
Noah Kahan
Tate McCrae
Mitski
Peso Pluma
Stephen Sanchez
Lainey Wilson
いつもBoonzzyの記事を読んで頂いてる方なら気が付いたかもしれませんが、今年も去年同様、その前の年のノミネート予想に挙げていたアーティストを2組入れてます。一人は我等がミツキ。「えー、ミツキの『Laurel Hell』のブレイクは対象期間前じゃないの?」と思われる方も多いでしょうね。でも彼女の名前も今回この部門の対象者として申し込まれてることが確認されてます。だいたいこの新人賞部門の「新人」の定義がごくあいまいで過去には時にかなり恣意性が高かったことは何度もここでお話ししてきたことで、過去にいろんな物議を醸してきた部門ですが、特に最近は「新人かそうでないか」をギリギリチェックするというよりは、「新たに大きくシーンでブレイクしたアーティストを評価しようではないか」的に運営される傾向が強くなってます。対象期間の遙か前にアルバムが全米トップ10を記録していたにもかかわらず、第63回でミーガン・ザ・スタリオンがこの部門を受賞したのはその象徴的な事件でしたよね。なのでミツキは今回ノミネートされてもおかしくないと思っているわけです。今年こそ日本人のノミネートを!
もう一人はカントリーのレイニー・ウィルソン。彼女は昨年のこの時期に開催されたCMAアウォードで最優秀新人賞と最優秀女性ボーカリスト部門の2部門受賞していたので、昨年ノミネート予想に入れたのですがノミネートされず。となると今年はノミネート間違いないということで入れてます。そして同じカントリー系、というよりはロック寄りではありますが、今年ブレイクして、来週開催予定の今年のCMAアウォードでやはり新人賞と最優秀男性ボーカリスト部門の2部門の受賞が有力視されているジェリー・ロールも外せないところでしょう。そしてカントリーではないですが、アメリカーナ系ということでノア・カーン。去年何故かノミネートされなかったザック・ブライアンは、昨年最優秀カントリーソロ部門でノミネートされちゃってるので今年は資格落ちですから、その代わりと言っては何ですが今年登場したアメリカーナ・カントリー系のアーティスト代表としてノア君には是非ノミネートされて欲しいところです。
R&Bヒップホップ系も例年複数のアーティストがノミネートされますが、今年から8候補に減ったことで多様性を重んじると見られるアカデミーの選択で、この分野は割を食いやすいのかな、と見ています。その中で選んだのがアイス・スパイス。この子は今年のヒップホップ系新人の中でも存在感がずば抜けてますからね。彼女以外だとこのジャンルではココ・ジョーンズやトゥーシーくらいですが、ちょっと存在感的には薄くてノミネーションは厳しいかな、と思ってます。
ポップ系ではソングライターとしても優れてると思う、テイト・マクレーとスティーヴン・サンチェスを挙げました。前者は2020年の「You Broke Me First」のヒットでブレイクしてたりと、対象にならなそうですが今回の対象者リストに入ってるようです。スティーヴン・サンチェスあたりはクラシックなポップ・シンガーソングライターで、レコーディング・アカデミーのシニア層にも受けるんじゃないかということで入れました。そして最後は今年のトレンドで逃してはいけないラテン系代表、ペソ・プルーマ。今年一気にブレイクしてシーンに露出しまくってるという意味では問題ないところでしょう。アカデミーの多様性重視の路線にも乗ってますしね。
そして残念ながらKポップ勢は2枚のナンバーワン・アルバムをぶち込んでるストレイ・キッズを筆頭に、フィフティ・フィフティやエスパ、SEVENTEENとか対象には充分なるはずですが、BTSですらノミネートされないくらいKポップ勢にはグラミーの壁が厚いので今年も難しいんでしょうねえ。
2.最優秀レコード賞(Record Of The Year)部門ノミネート予想
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Anti-Hero - Taylor Swift
Kill Bill - SZA
Flowers - Miley Cyrus
Vampire - Olivia Rodrigo
I Remember Everything - Zach Bryan featuring Kacey Musgraves
Paint The Town Red - Doja Cat
All My Life - Lil Durk featuring J. Cole
Ella Baila Sola - Eslabon Armado x Peso Pluma
グラミー賞には毎年大きなシナリオというか流れがある、というのはこれまでもここで言って来たことですが、今年のグラミーの大きなシナリオの軸は「テイラー対SZA」ではないかと。いずれも2023年を代表する大ヒットアルバムであり、評価も高いアルバム、『Midnights』と『SOS』をリリースして、今年のポップシーンの正しく大きな軸となってるこの二人は主要部門残り3部門では外せないところでしょう。このROYではそれぞれのナンバーワン・ヒット、「Anti-Hero」と「Kill Bill」を挙げてます。同じく大ヒットという意味ではマイリーの「Flowers」、そしてアルバムは今回の対象期間外ですが先行シングルで期間内にリリースされたオリヴィア・ロドリゴの「Vampire」もノミネートされるだろうと思ってます。アルバムは来年の主要賞部門候補ですね。
そして個人的に推したいのはザック・ブライアンとケイシー・マスグレイヴの「I Remeber Everything」。ザックは新人賞だけじゃなくて昨年の主要部門ノミネートでも全くおかしくなかったんですが、カントリー部門ノミネート止まり。しかし今年は是非このROYをはじめ主要部門ノミネート期待で、しかも第61回『Golden Hour』で最優秀アルバムを受賞しているケイシーとのデュエットとくれば百人力、というわけでこの曲のノミネートは必至とみてます。
ドジャはここ3回のグラミーで連続でこのROY部門ノミネートされている(受賞はせず)、ある意味グラミー・ダーリン。今回も「Walk On By」のループを使ってラッパー、ドジャを見事に演出している「Paint The Town Red」は問題なくノミネートされるでしょう。そして同じヒップホップ系ということでいうと今年はなかなか対象になりそうな楽曲が少ないんですが、子供のコーラスをフィーチャーして作品性を高めているリル・ダークとJ.コールの「All My Life」あたりはノミネートされてもいいんじゃないでしょうか。ちなみにザ・ウィークンド問題以来グラミー批判を重ねているドレイクは今年も選んでません(笑)。
最後にノミネート候補として入れたのは、今年の新しいラテンのトレンド、リージョナル・メキシカン代表で、エスラボン・アルマド&ペソ・プルーマの「Ella Baila Sola」。他の部門では難しいでしょうが、今年を代表する楽曲を選ぶ部門であるROYで多様性を代表するという意味でノミネートはされそう。そして候補数が8に減らずに10のままだったらノミネートされたかも、ということでいうとリマ&セリーナ・ゴメスの「Calm Down」(アフリカン・ミュージック代表)とビリー・アイリッシュの「What Was I Made For?」が次点でしょうかね。
3.最優秀歌曲賞(Song Of The Year)部門ノミネート予想
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Not Strong Enough (boygenius)
I Remember Everything (Zach Bryan featuring Kacey Musgraves)
Fast Car (Luke Combs)
What Was I Made For? (Billie Eilish)
Vampire (Olivia Rodrigo)
Life Goes On (Ed Sheeran featuring Luke Combs)
Anti-Hero (Taylor Swift)
Snooze (SZA)
既にご存知のように、このSOY部門は、楽曲の素晴らしさをそのメロディや構成、歌詞によって評価される部門で、アーティストではなくて楽曲の作者に与えられますよね。なのでヒットしたかどうかは重要ではないというところがROYとは大きく異なるところで、それを正に実証したのが、昨年のボニー・レイット「Just Like That」の受賞だったわけです。ここ数年はそうはいいながら大ヒット曲が受賞しがちだったこの部門の正当性を改めて主張した、そんな昨年の受賞でしたね。ちなみに昨年のノミネート予想は10曲中6曲は当てていて、ケンドリック・ラマーは曲違いでした。
で今年ですが、ROYのところでも触れたように「テイラー対SZA」のシナリオ軸はここでも同じだと思うので、「Anti-Hero」と「Snooze」(「Kill Bill」より楽曲としてはこちらの方が優れてると個人的に思うので)の対決で、そこにオリヴィアの「Vampire」やザック・ブライアンの「I Remember Everything」が絡んで行くというのが自分の見立てです。また、ROYでは次点にしましたが、楽曲のクオリティという意味では、ビリー・アイリッシュの「What Was I Made For?」はSOY部門で評価されるのがより適切だと思うし、結構この部門で強いかもしれません。
フィービー・ブリッジャーズは第63回グラミーで新人賞部門やロック部門、オルタナティブ・アルバム部門など4部門ノミネートされるなど、グラミーでは高い評価を受けているのが伺えることもあって、そのフィービーとジュリエン・ベイカー、ルーシー・ダカスによるボーイジニアスは、今年のグラミーの一つの軸を担うような気がしています。なので、今年メディアから評価がとても高かったアルバム『The Record』から「Not Strong Enough」がSOYにノミネートされるのでは、と思ってます。
今年リリースのアルバム『- (Subtract)』がアメリカではなぜか商業的に振るわなかったので、ROYには出しませんでしたが、やはりグラミー常連のエド・シーランは外せないということで、ルーク・コムズをフィーチャーした「Life Goes On」くらいはSOYにノミネートされるんじゃないかということで入れてます。そしてそのルーク・コムズと言えば、モーガン野郎の「Last Night」とソング・オブ・サマーを激しく争った、トレイシー・チャップマンの「Fast Car」のカバー、これこそSOYノミネートにうってつけの作品だと思いますね。受賞すると賞はルークではなく、トレイシー・チャップマンに行く、というのもなかなかソングライター達に対する今後のいい作品へのモティベーションを上げるのにいいストーリーだと思いますねえ。
4.最優秀アルバム部門ノミネート予想
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The Record - boygenius
Zach Bryan - Zach Bryan
Did You Know That There’s A Tunnel Under Ocean Blvd - Lana Del Rey
But Here We Are - Foo Fighters
Utopia - Travis Scott
- - Ed Sheeran
Midnights - Taylor Swift
SOS - SZA
さてここまでROY、SOYを予想してきて、ある程度自然の帰着的に最優秀アルバム部門にもノミネートされるのは間違いなさそうだな、と思うのはテイラーの『Midnights』とSZAの『SOS』、それにエド・シーランの『-』くらいかな、と思うのですが、ザック・ブライアンの『Zach Bryan』はひょっとしたら微妙かも。いや、個人的には是非ノミネートされて欲しいし、それだけのクオリティの内容のアルバムに仕上がってるのは間違いないのだけど、昨年のグラミー・アカデミーの、ザックの扱いを見ると「いちカントリー・アーティスト」としてしか見てない怖れがあるような気がするんですよね。そうでないことを祈ってますが。
さて昨年もグラミー賞授賞式の最後に発表されて、ハリー・スタイルズが歓喜の中で『Harry’s House』で受賞したこの部門ですが、過去の歴史の中ではいわゆる大ヒット曲を含むアルバム以外の作品がノミネート・受賞されることの多い部門だというのは皆さん既にご存知のとおりですよね。その観点から自分が推すのは、SOYのノミネートのところでも触れた、ボーイジニアスの『The Record』。音楽メディアの評価が軒並み高く、メタクリティックで90点を叩き出していたこのアルバム、是非ノミネートされて欲しいところです。もう一つオルタナ系では、第62回グラミーのこの部門での『Norman F***ing Rockwell!』ノミネート以来ご無沙汰のラナ・デル・レイの今回のアルバムがノミネートされるのではないかと思っています。ある意味ここ最近のドリーミーな世界観を持った女性インディ・ポップ・アーティスト達に大きな影響を与えてきた彼女を評価するに十分な作品だと思うので。
同じくノミネート希望なのは、フー・ファイターズの『But Here We Are』。昨年のテイラー・ホーキンスの早すぎた逝去による痛みと苦しみと感情を昇華したような、ふつふつと湧き上がるようなこのアルバムは作品としても過去のフーファイの作品と充分肩を並べる作品だったと思うし、グラミー・ダーリンでもあるフーファイならこのアルバムノミネートされてもおかしくないよね。いやあでも今年のフジロックでのフーファイの熱演を思い出すと身体が熱くなるね。
そして、ヒップホップ誕生50周年ということで、グラミー賞授賞式に先立って11月8日に新旧の様々なヒップホップ・アーティストが出演するイベント『A Grammy Salute To 50 Years Of Hip Hop』の開催が予定されているということもあり、ヒップホップからも1枚、ということになるともうトラヴィスの『Utopia』しかないだろうね。今年リリースされたヒップホップ系のアルバムの中でも、その楽曲の完成度や多様性、先進性といったいろんな面で頭一つ飛び抜けていたこのアルバム、ノミネートは必ずしてもらいたいものです。でないとヒップホップ・ファン、怒るで(笑)。
ということで以上、第66回グラミー賞主要4部門のノミネーション予想をお届けしました。冒頭にも述べた通り実際のノミネーション発表は来週11月10日金曜日の真夜中、自分がライブで観れるかどうかは別にして、ノミネートの結果を踏まえて今年も年末から54部門受賞予想のブログを、ここnote.comでお届けする予定ですので乞うご期待。
では皆さんハッピー・ノミネーション!