DJ Boonzzyの第66回グラミー賞大予想#9〜ゴスペル&CCM部門
吉岡正晴さんとの例年のグラミー賞予想DJ&トークイベント『ソウルサーチン・ラウンジ』も今週無事に開催、あとは残る部門予想をアップするだけになりました。何とか今週末にはコンプリートしたいと思ってますがどうなりますか。
一方この時期毎年NFLのプレーオフと重なる時期でして、ちょうどディヴィジョン・シリーズが終わって、リーグ優勝決定シリーズがこの週末開催予定。週明けには2/11開催予定の第58回スーパーボウルで激突する2チームが決定します。果たしてテイラーの今カレ、トラヴィス・ケルシー所属のカンザスシティ・チーフスはスーパーボウル連覇を達成するのか?個人的にはスーパーボウルはチーフスと49ersの4年前の対決の再現になるのでは(その時はチーフスが31-20で勝利)、と見ています。そしてハーフタイムショーは、出演打診を断ったテイラー・スウィフトに代わってアッシャー。テイラーは前日の2/10まで東京ドーム、翌週はオーストラリアなので、おそらくホテルからチーフスを応援するんでしょう。いろんな意味で今年のスーパーボウルは楽しみですね。では、さっそくゴスペル&CCM部門の予想行きます。
36.最優秀ゴスペル・パフォーマンス/ソング部門(アーティストと作者の両方に与えられる賞)
✗ God Is Good - Stanley Brown featuring Hezekiah Walker, Kierra Sheard & Karen Clark Sheard (Stanley Brown, Karen V Clark Sheard, Kaylah Jiavanni Harvey, Rodney Jerkins, Elyse Victoria Johnson, J Drew Sheard II, Kierra Valencia Sheard & Hezekiah Walker)
◯ Feel Alright (Blessed) - Erica Campbell (Erica Campbell, Warryn Campbell, William Weatherspoon, Juan Winans & Marvin L. Winans)
Lord Do It For Me (Live) - Zacardi Cortez (Marcus Calyen, Zacardi Cortez & Kerry Douglas)
God Is - Melvin Crispell III (Melvin Crispell III)
◎ All Things - Kirk Franklin (Kirk Franklin)
毎年このゴスペル&CCM部門は、大体知っているアーティストとそうでないアーティストが半々、といった感じですが、このゴスペル部門でまず受賞を外さないのが、90年代後半以降のゴスペル界の帝王ともいえるカーク・フランクリン。過去この部門で「ゴスペル」と名の付くカテゴリーに24回ノミネート中22回受賞という正しく絶対王者ですから、今回も燦然とノミネートされているカーク・フランクリン師には本命◎付けるしかないでしょう。クワイアをバックにR&Bポップ風に軽く歌うこの自作オリジナルの「All Things」は、なぜかアルバム部門にノミネートされてない師のアルバム『Father’s Day』からのカット。
この部門でもう一人光っているノミニーは、昨年もこの部門にノミネートされていた、元メアリー・メアリーのエリカ・キャンベル。去年のノミネート曲もそうでしたが、旦那のウォリン・キャンベルとこちらもゴスペル・ファミリーとして重鎮のワイナンズ・ファミリーのホアン・ワイナンズと叔父のマーヴィン・ワイナンズと共作したこの曲「Feel Alright (Blessed)」は、アップテンポでダンサブルなこちらもポップR&B風のアップリフティングなゴスペル・ナンバー。まあカーク師には勝てないでしょうが、2番手を選ぶなら彼女でしょう。
そして穴✗には、この部門2017年第59回に続く2回目のノミネートになる、NYブルックリン出身のスタンリー・ブラウンが、子供の頃からの友人のヘゼカイア・ウォーカーを始め、キエラ・シアード、カレン・クラーク・シアードといったゴスペル界の中堅どころのシンガー達をフィーチャーした「God Is Good」を挙げておきます。
37.最優秀コンテンポラリー・クリスチャン・パフォーマンス/ソング部門(アーティストと作者の両方に与えられる賞)
Believe - Blessing Offor (Hank Bentley & Blessing Offor)
Firm Foundation (He Won’t)[Live] - Cody Carnes (Cody Carne)
◯ Thank God I Do - Lauren Daigle (Lauren Daigle & Jason Ingram)
✗ Love Me Like I Am - for KING & COUNTRY featuring Jordin Sparks (Joel Smallbone, Luke Smallbone, Josh Kerr & Michael Pollack)
Your Power - Lecrae & Tasha Cobbs Leonard
◎ God Problems - Maverick City Music, Chandler Moore & Naomi Raine (Daniel Bashta, Chris Davenport, Ryan Ellis & Naomi Raine)
ゴスペルの方はカーク師が圧倒的な存在感を放ってますが、CCM(コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック)部門の方は毎年実力派のせめぎ合いが激しく、ほぼ毎年受賞者が代わる部門。今回この部門には、ここ最近でこの部門受賞経験がある3組、女性ポップ・ゴスペル・シンガーソングライターのローレン・デイグル(2019年第61回受賞)、オーストラリア生まれナッシュヴィル育ちのゴスペル兄弟デュオのフォー・キング&カントリー(2015年第57回と2020年第62回受賞)、そして去年第65回にこの部門受賞している人種混合のゴスペル集団、メイヴェリック・シティ・ミュージックがノミネートされてて、この3組がやはり光ってますね。
過去2回受賞のフォー・キング&カントリーももちろん強力ではあるのですが、何といっても人種・年齢・性別の多様性を自己体現しているメイヴェリック・シティ・ミュージックのこの分野における存在感は近年どんどん大きくなってますし、エモーショナルに盛り上がる観客を前にマイクリレーのように10人ほどのメンバーが「この世には神様だけが解決できる問題がある」と歌うこの曲で、今年も彼らが受賞しそうな気がします。なので本命◎はメイヴェリック・シティ・ミュージック。
一方、ポップ・フィールドでも2018年の「You Say」(Hot 100最高位29位)のクロスオーバーヒット以降知られるようになったローレン・デイグルの昨年のアルバム『Lauren Daigle』は純粋にポップアルバムとしても優れた作品だったと思いますが、そこからの「Thank God I Do」も静かに盛り上がるドラマチックな曲で対抗◯はローレンかなと。久々に名前を聞くジョーダン・スパークスをフィーチャーしたフォー・キング&カントリーの「Love Me Like I Am」もなかなかドラマチックでいい曲なんですが、ここでは穴✗としておきます。
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38.最優秀ゴスペル・アルバム部門
◯ I Love You - Erica Campbell
Hymns (Live) - Tasha Cobbs Leonard
◎ The Maverick Way - Maverick City Music
My Truth - Jonathan McReynolds
✗ All Things New: Live In Orlando - Tye Tribbett
さて、この間アメリカン・ルーツとアメリカーナ部門のところでも同じようなことがありましたが、このゴスペル部門とCCM部門でも毎年往々にして両部門間の「ねじれ」が発生してます。今回も、CCMパフォーマンス/ソング部門ノミネートのメイヴェリック・シティ・ミュージックが、その曲収録してるアルバム『The Maverick Way』はこのゴスペル・アルバム部門ノミネートされてるというねじれ発生中。そして先程も言ったように、ゴスペル部門で本命◎付けていたカーク師のアルバムはなぜかノミネートされてません。そうなると、メイヴェリック・シティ・ミュージックと、ゴスペル部門で対抗◯付けてたエリカ・キャンベルの一騎打ちの様相を呈してくるのですが、先程も触れたメイヴェリック・シティ・ミュージックの多様性の強さというのはやはりかなり大きなものがあると思っていて、その線で考えると昨年のツアーのライブを収めた彼らの『The Maverick Way』が臨場感なんかも考えると本命◎でしょうねえ。
そして対抗◯はエリカ・キャンベルの『I Love You』に。ちなみにこのアルバム、リリースが去年の9/15ですので、今回のグラミー賞対象期間ギリギリすべり込みで資格を得たアルバムということになります。残る穴✗は2007年第49回以降この分野でコンスタントにノミネートされてる(今回ゴスペル分野で10回目のノミネート、2回受賞)、ゴスペルのキャリア以前はフェイス・ヒルやアッシャー、ジャスティン・ティンバレイクらのバックボーカルを努めていたという、ニュージャージー州出身のタイ・トリベットのライブ盤に。
39.最優秀コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック・アルバム部門
My Tribe - Blessing Offor
Emanuel - Da’ T.R.U.T.H.
◎ Lauren Daigle - Lauren Daigle
◯ Church Clothes 4 - Lecrae
✗ I Believe - Phil Wickham
CCM部門で圧倒的な存在感だったメイヴェリック・シティ・ミュージックのアルバムがゴスペル・アルバム部門に行っちゃったからには、このCCMアルバム部門、正直ローレン・デイグルの独壇場といっていいでしょう。自分もこのアルバム買って、今回プロデュースをロック・ポップ系での仕事の評価が高いマイク・エリゾンド(最近ではディズニーの『ミラベルと魔法だらけの家(Encanto)』のサントラ盤の仕事で一昨年第64回グラミーの最優秀プロデューサー部門にもノミネート)を迎えたこともあってか、内容が純粋にポップ・アルバムとしても素晴らしかったんで去年の秋ごろは結構パワロテで愛聴してました。なので本命◎はローレンで決まりです。
対抗◯を付けたのはもうベテランの、ゴスペル・ラッパーというジャンルの先駆者でもあり、2012年第55回最優秀ゴスペル・アルバム部門を受賞して、ヒップホップ・アーティストとしてこの部門初の受賞を果たしたルクレイのミックステープ『Church Clothes 4』。ゴスペル・CCMファンには根強いファン層を持つルクレイ、基本トラップ・ベースってのが個人的にはやや引っかかるんですが、彼の場合の人気と評価はそのリリックの内容だと思うのでまあ実績も考えると対抗◯は彼かなと。
残り3組はあまり聞かない名前ばかりなんですが(笑)ブレッシング・オファーは片眼盲目、ナイジェリア出身のCCMシンガーで今回初ノミネート、ダ・T.R.U.T.H.はフィラデルフィア出身のクリスチャン・ラッパー、そしてフィル・ウィッカムは既に10枚のアルバムをリリースしているサンディエゴ出身の白人CCMシンガー。この中で穴✗は、11枚目のアルバム『I Believe』でノミネートのフィル・ウィッカムにしました。彼の前作『Hymn Of Heaven』(2021)は2022年のダヴ・アウォード(ゴスペル・CCM界のグラミー賞相当)で年間最優秀ワーシップ・アルバムを受賞したということなので、その実績に敬意を表して。
40.最優秀ルーツ・ゴスペル・アルバム部門
✗ Tribute To The King - The Blackwood Brothers Quartet
◎ Echoes Of The South - Blind Boys Of Alabama
Songs That Pulled Me Through The Tough Times - Becky Isaacs Bowman
Meet Me At The Cross - Brian Free & Assurance
◯ Shine: The Darker The Night The Brighter The Light - Gaither Vocal Band
去年のこのブログで書いてたんですが、この部門は基本、南部のブルースとかカントリーとかをベースにしたゴスペル作品を対象にしているはずなのに、往々にして何かしら「ちょっと違うんじゃないか」的な作品がノミネートされてて、昨年はアイリッシュ系ニューエイジ的なデュオ、キース&クリスティン・ゲティ、一昨年第64回は何とジャズ・シンガーのハリー・コニックJr.、もう少し前はソウル・シンガーのグロリア・ゲイナーとかがノミネートされてました(グロリアは受賞までしてた)。でも今年はご安心(笑)。久しぶりに見事なまでにサザン・ゴスペル・グループがずらり4組と、同じくサザン・ゴスペル系のシンガー、ベッキー・アイザックス・バウマンという、誰が見ても「ああルーツ・ゴスペル部門だわ」という顔ぶれになってます。
グループ4組のうち、特に2組は1940年代から活動している長い歴史を誇るグループで、メンバーチェンジを重ねながらもグループの看板は維持してきたという、このジャンルのイメージに正にぴったりのグループ。一つは白人4人組のザ・ブラックウッド・ブラザーズ・カルテットで、もう一つが黒人4人組(ほとんどのメンバーは目が不自由)のブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマ(BBOA)です。いずれ劣らぬ歴史と風格のグループですが、ブラックウッドの方は過去19回この部門(及びこの部門の前身部門、以下同じ)ノミネート(最古は1966年第8回)8回受賞ながら、今回は20年ぶりのノミネート。一方BBOAの方は過去15回ノミネート(最古は1972年第14回)で2回受賞ながらその2回はすべて2000年代と、最近の評価は明らかにBBOAが上。しかも今回彼らはこのゴスペル部門だけでなく、このアルバムからの曲がアメリカーナとアメリカン・ルーツの両パフォーマンス部門にノミネートされているということ、あとBBOAはピーター・ガブリエルやプリンス、ボニー・レイットなどロック系のアーティストとの共演も多く、間口の広さを考えると、ここは本命◎BBOAでしょう。
ではブラックウッド対抗◯かというとさにあらず。ここの対抗◯は、今回でこの部門3年連続ノミネートされてて、1980年代以来のサザン・ゴスペル・シーンで一際存在感の大きい、ゲイザー・ボーカル・バンドではないかと。彼らもこの部門過去12回ノミネートで2回(1992年第34回と2009年第51回)受賞しており、ここ最近ではこちらの方が存在感ありとのことで対抗◯。20年ぶりのノミネートのブラックウッドには穴✗で勘弁してもらうことにしました。
ということでほぼ全体の3分の2、ゴスペル&CCM部門まで何とかたどり着きました。次はジャズ部門の予想です。引き続きお付き合い下さい。