【恒例洋楽新年企画】DJ Boonzzyの第65回グラミー賞大予想#9~アメリカン・ルーツ部門(その1)
一気に冷え込んで来た今週、いよいよ吉岡正晴さんとのグラミー賞授賞式直前大予想トーク&DJイベント「ソウル/サーチン・ラウンジ」は明日1月24日(火)19時から新宿カブキラウンジで開催します!寒い中、熱いグラミー・トークをお届けするべく自分も登壇しますので、お時間ある方は是非お越し下さい。
ではアメリカン・ルーツ部門の予想に参ります。
37.最優秀アメリカン・ルーツ・パフォーマンス部門
Someday It’ll All Make Sense (Bluegrass Version) - Bill Anderson Featuring Dolly Parton
○ Life According To Raechel - Madison Cunningham
✗ Oh Betty - Fantastic Negrito
Stompin’ Ground - Aaron Neville with The Dirty Dozen Brass Band
◎ Prodigal Daughter - Aoife O’Donovan & Allison Russell
この前の部門の「ゴスペル」と「CCM」の違い以上に違いがよく判らないのがグラミーの「アメリカン・ルーツ」と「アメリカーナ」部門の違い。「アメリカン・ルーツ」にはパフォーマンス部門とソング部門がある一方、「アメリカーナ」は従来アルバム部門だけだったので、「そうか、アメリカン・ルーツのアルバム部門がアメリカーナ・アルバム部門なのだな」と思っていたら何と今年からアメリカーナにもパフォーマンス部門が新設。この微妙な部門のズレ具合は何なんだ、と思ってしまうのは自分だけか。この2つに違いを定義するんだったら、それぞれパフォーマンス/ソング/アルバム部門があるべきじゃないの?そしてもっと言うと、この部門と「ブルース」「フォーク」部門の違いも不明。特に今回はフォーク部門にノミネートされてるマディソン・カニンガムとイーファ・オドノヴァン(いずれも個人的に大好きですが)がここでもノミネート、普通だとブルース部門にノミネートされてるファンタスティック・ネグリートがここにノミネートと、もう何だかますます判らんことになっています。
で、本命◎を付けたのは、今回このアメリカン・ルーツ2部門とフォーク・アルバム部門でもノミネートのイーファ・オドノヴァン。ピーター・バラカンさんのファンならよくご存知の女性3人組フォーク・ユニットのアイム・ウィズ・ハーの一人、ギター担当の子です。個性の強い女性シンガーソングライター、アリソン・ラッセルをフィーチャーしたこの曲を含むアルバム『Age Of Apathy』は自分も去年の年間アルバムランキング10位に入れた、彼女の瑞々しい歌声とギター主体の楽曲が詰まった素敵な作品で、シーンの評価も高いので本命◎付けました。そして対抗○はこちらも自分の昨年の年間アルバムランキングで21位に入れていた、カリフォルニア出身の新世代のシンガーソングライター、マディソン・カニンガムの、サード・アルバム『Revealer』からの曲。西海岸のフォーク・ロックをベースにジャズやクラシック、オルタナ・ロックなどの要素が渾然一体となった粒揃いの楽曲が並ぶ中、聴き手のイメージを喚起するような音像とメロディが印象的な曲です。
そして穴✗は、去年の新作アルバム『White Jesus Black Problem』が何故か最優秀ブルース・アルバム部門にノミネートされなかった(ここ3作は全てノミネートされてしかも受賞していた)ファンタスティック・ネグリートのアーシーでジャンピーなブルース・ナンバーに。これを聴いてて気付いたのは、過去作品同様、この曲にも日本人ギタリストのマサ小浜さんがフィーチャーされてノミネートされてること。これで今年の日本人ノミニーは合計5人が判明ですが、まだ実は他にもいるのかも知れません。気付いた方は是非一報を。
38.最優秀アメリカン・ルーツ・ソング部門(作者に与えられる賞)
Bright Star - Anaïs Mitchell (Anaïs Mitchell)
Forever - Sheryl Crow (Sheryl Crow & Jeff Trott)
High And Lonesome - Robert Plant & Alison Krauss (T Bone Burnett & Robert Plant)
◎ Just Like That - Bonnie Raitt (Bonnie Raitt)
✗ Prodigal Daughter - Aoife O’Donovan & Allison Russell (Tim O'Brien & Aoife O'Donovan)
○ You And Me On The Rock - Brandi Carlile Featuring Lucius (Brandi Carlile, Phil Hanseroth & Tim Hanseroth)
そして事実上アメリカーナ全体のソング部門となっているこの部門ですが、ここには主要4部門にもノミネートされてる2人、ブランディ・カーライルとボニー・レイットが並んでいて、いかにもこの2人が光ってますよねえ。で、どちらが本命◎かというと、ROYと最優秀アルバムにノミネートのブランディ・カーライルはひょっとするとアルバム取っちゃう可能性もある一方、SOYでノミネートされてるボニー・レイットのこの静かなバラードは多分受賞無理でしょうから、せめてこのジャンル部門で花を持たせてあげるという意味で、ボニーを本命◎にします。対抗○はブランディ・カーライルとルシアスのこちらはROYにノミネートされているちょっとテックス・メックスっぽい「You And Me On The Rock」に付けましょう。
そうなると穴✗は先ほどのパフォーマンス部門で本命◎付けたイーファ・オドノヴァンになっちゃうんだよなあ。でも本当はロバプラとアリソン・クラウスのコラボ第2弾アルバムからの「High And Lonesome」とか普通だったら充分受賞してもおかしくないし、ミュージカル『Hadestown』の作者としても知られる、フォーキーな曲調と特徴あるボーカルが魅力的なアネイス・ミッチェルの「Bright Star」なんかも実は是非受賞してほしい、個人的にはイチオシなんですが(アルバムは自分の昨年年間ランキングの堂々4位!)、この部門にはいい作品が集まり過ぎってことですねえ。
39.最優秀アメリカーナ・アルバム部門
◎ In These Silent Days - Brandi Carlile
Things Happen That Way - Dr. John
Good To Be… - Keb’ Mo’
✗ Raise The Roof - Robert Plant & Alison Krauss
○ Just Like That… - Bonnie Raitt
そしてアルバム部門。ここにもブランディとボニーの2人のアルバム、それもいずれも素晴らしいアルバムでが無茶苦茶存在感を放ってます。ブランディのアルバムは主要4部門の最優秀アルバム部門にもノミネートされてて、個人的には受賞候補の一角を構成してると思ってるので強いのは間違いないところ。従ってこのジャンル部門では彼女のこのアルバム(自分の一昨年の年間アルバムランキング5位です)に本命◎を付けざるを得ないですねえ。そして対抗○は、自分の去年の年間アルバムランキング堂々2位の、ボニー6年ぶりのこちらもアーシーなミュージシャンシップが素晴らしいアルバムになります。
そして穴✗は、ロバプラとアリソン・クラウスのコラボ第2弾アルバムの『Raise The Roof』。さすがに2009年第51回で主要の最優秀アルバムを受賞した1作目『Raising Sand』に比べるとその衝撃度や圧倒感はやや見劣りするものの、内容的には普通であればこの部門なんて軽々受賞してもおかしくないところなんですが、今回は主要部門にもノミネートされず、一方主要部門ノミネートのブランディとボニーがいる中では穴✗に甘んじざるを得ないでしょうね。
40.最優秀アメリカーナ・パフォーマンス部門(新設)
Silver Moon (A Tribute To Michael Nesmith) - Eric Alexandrakis
There You Go Again - Asleep At The Wheel Featuring Lyle Lovett
✗ The Message - Blind Boys Of Alabama Featuring Black Violin
○ You And Me On The Rock - Brandi Carlile Featuring Lucius
◎ Made Up Mind - Bonnie Raitt
最後に今年新設のアメリカーナ・パフォーマンス部門。「アメリカン・ルーツ・パフォーマンス部門」との違いは依然不明ですが、あああ、ここでも主要4部門ノミネートのブランディとボニーがいるではないですか。結局この2人はこのアメリカン・ルーツ/アメリカーナ部門4部門中、3部門でガチンコに激突しているわけで、その3部門ではこの2人のどちらかを本命◎、もう一人を対抗○に予想せざるを得ないという状況です。で、この部門はどちらが本命◎かというと、静かなバラードの「Just Like That」ではなく、イントロからカッコいいギターリフで一発で我々長年ボニーを聴いてきたオールド・タイマーなロック・ファンのハートをつかむ「Made Up Mind」に差し上げたいですねえ。何せこの曲をYouTubeで聴いて即購入を決めたくらいですから。
いきおい対抗○はマリアッチな感じのブランディ・カーライルのこの曲になりますが、困ったのは✗をどうするかの予想。残り3アーティストのうち、元モンキースのマイケル・ネスミスのヒット曲「Silver Moon」をタイトルにしたエリック・アレクサンドラキスって人は調べてもよく判らないのでまず外すとして、残り二組で考えた場合、やっぱりサザン・ゴスペル・グループのブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマが、バイオリンを操ってヒップホップをやってる二人組、ブラック・バイオリンとコラボった重厚なナンバーが聴いててちょっと響いたので、こちらに付けることにしました。まあアスリープ・アット・ザ・ホイールとライル・ラヴェットの曲でもよかったんですが(笑)。
さてこの後は、アメリカン・ルーツ部門の後半、ブルーグラス、ブルース、フォーク部門の予想です。お楽しみに。