「この世界の片隅に」(原作漫画)を読んで想うことあれこれ
今日はこれ!
アニメも見に行きたいな〜^^。
アニメが話題になってたので原作を読みました。
この5年、広島県民として福山という街に住んで、呉も何度か行く機会がありました。作者のこうのさんが語られているように、9つの山に囲まれた「勇ましさとたおやかさを併せ持った不思議な都市」です。素敵な体育館もあります^^。正直、車以外でのアクセスはあまりよくありません。でも、魅力ある街です。そういう意味では僕の好きな山口県萩市と自分の中では位置付けが似ています(行くのが遠いけど、行きたくなる街)。(もちろん、東洋きっての軍港な街ですから、戦災目線で見ると、萩と呉は戦争体験では大きな違いがあったと思いますが。)
この漫画では、作者のこうのさんご自身があとがきに書かれているように「戦時の生活がだらだらと続く様子」が描かれます。それがいい。漫画ってこんなにも人の「生活」を伝える力があるんだなあ。一人の女の子の人生が進んでいく様子を、近くでその人の人生に伴走した(走る、というよりも歩く、一緒に散歩する&寄り道する、座っておしゃべりする、という感じですが)ような、そんな気持ちになります。
「『戦災もの』についてもうまく理解できていない気がする」、と作者が語っているのもとても興味深く思いました。そういう感覚を持ちながら描かれたものがこんなにもリアルに、当時の雰囲気や「当事者にとって、当たり前の日常」に自分を連れて行ってくれた逆説に驚きます。綿密に当時の生活を調べられたことや、呉という街への愛情が絵のひとつひとつから伝わってきます。とっても好きな作品に出会えて嬉しいです。描いてくださってありがとうございました。
自分の祖母や祖父、幼い頃の父母も過ごした昭和9年から20年くらいまでが描かれます。生活史というか、風物というか、自然すぎて普通に世界にはまり込みました。NHKの朝の連ドラで普通に見たい感じでもあります。自分の祖父母や幼い父母が過ごした時代の空気感のようなものが伝わってきます。彼らの時代に想いを馳せました。彼らの時代があって、自分がいることも。
読んでいて、なぜか若い頃通っていた映画学校や蓮見さんの授業の影響で何回もみたテオ・アンゲロプロスというギリシャの映画監督さんの「霧の中の風景」という映画のシーンがなんども想い出されました。時代も国も違うのですが(きっと作者の作風も違う)、「その場にいるような、現実を体感するような体験」だったのかもしれません。アンゲロプロスも久しぶりに観たいなあ。眠くなりそうだけど。
アニメでも描かれるのかどうか知らないのですが、当時の空気感もよく出ていて、かつ「シェアリングエコノミー」についてこのところ探求している自分としては、以下のシーンがお気に入り。欄外にある歌詞、ご存知の世代の方は「ドリフだよ全員集合!」のテーマ「ド・ド・ドリフの大爆笑♪」の音楽に合わせてどうぞ。
この歌詞が、素敵です。
「とんとんとんからりと隣組
格子を開ければ顔なじみ
廻して頂戴 回覧板
知らせられたり 知らせたり
とんとんとんからりと隣組
あれこれ面倒 味噌醤油
ご飯の炊き方 垣根越し
教えられたり 教えたり
とんとんとんからりと隣組
地震や
雷
火事
どろぼう
互いに役立つ用心棒
助けられたり助けたり
とんとんとんからりと隣組
何軒あろうと一所帯
こころは一つの屋根の月
まとめられたり
まとめたり」
当時の「隣組」、近いがゆえの息苦しさとか、面倒さとか、気遣いとか、想像に難くないですが、、、寂しくはない。孤独でもない。生きていける気がする。シェアリングエコノミーの一つの本質がすでにここにあるように感じました。作った人の意図は知りませんが、当時の感覚が出てて、すごい好きな歌詞だなあ。
素敵な作品です。おすすめ。
人生の中で、こんな作品に、もっともっと出会いたいです。
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