女、三界に家なし

「女、三界に家なし」と言われます。
 
三界(サンガイ)とは、仏教用語で、欲界・色界・無色界、すなわち全世界のこと。

この「女、三界に家なし」という言葉で言えば、女は,子供とのときは親に従い、嫁いでは夫や舅姑に従い、老いてからは子に従うしかなく、死ぬまで「自分」を出して身を落ち着けられる場所はない、ということらしい。まぁ、実家、婚家、死んでからも婚家のお墓の中で窮屈な思いをするから、どこにも居場所はないということか。

確かになぁ。

老親に何かしら問題が出てきて、私はそれを痛感してます。

舅姑の問題や介護については、「嫁」という立場でなかなか強くは言えない。
義父の車の運転も、車の鍵を取り上げてでも阻止したいし、自転車だって止めさせたい。代わりに運転するから、と言っても「手間をかけさせたくない」「自分でできるから!」と。
そこでの手間を惜しんで、事故を起こされたり、転んで怪我をしてしまったりする方が、もっと大変なんだけど、そこまでは嫁の立場で強く言えない。
「大丈夫」という人に「ダメでしょ、無理でしょ」とは嫁は言えない。

実父母については、はっきり言えるつもりでいました。車の鍵を隠すことも「無理でしょ」とハッキリいうことも、実の娘なんだから言える、と。
でも実際は、違ってた。
どんなに心配してても、意見や提案があっても、嫁に出てしまったら、「離れている立場で勝手なことを言う」ことになってしまう。

危険な階段の上り下りをするときは立ち会って様子を見、時に介助してあげてほしい。
Uberやネットスーパーの使い方を教えるのもいいけど、実際の買い物も食事の支度もフォローしてあげてほしい。
たまには一緒にご飯食べてあげてほしい。

離れた立場で勝手なこととはわかりつつ、同居している弟家族にお願いするしかない。
私の実の親のことなのに、働いているお嫁さんに負担をかけてしまって申し訳ない。

結局、婚家でも実家でも、「よそ者」みたいな立場になってしまって、役に立てないどころか、単に「かき混ぜる」だけみたいな存在になってしまう。

義父にできることは毎日ご飯のおかずをお裾分けすることくらい。
実父母にできることはテレビ電話で声をかけることくらい。

「女、三界に家なし」ならぬ、「私、どこにも家なし」にならないように、せめて自分の家では、役に立てる存在、必要とされる存在でいたいな。

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