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映画館で見るべき『竜とそばかすの姫』
細田守監督の話題の新作、『竜とそばかすの姫』を観てきた。『サマーウォーズ』ぶりに観てみようと思った。
見終わった感想としては、一言。もう一度見たい。
ネット上を見ると、賛否両論で、確かに疑問に思う点はある。しかし、音楽と映像の迫力、Uというネット空間の表現の仕方は、本当に素晴らしく、映画館でこそ見るべきものだと思った。
ここからは、内容にも触れていくので注意してほしい。
特に印象に残っているのが、最初の場面。アプリの起動から始まって、Uの空間で、歌姫であるベルがクジラに乗って力強く歌う。Uの空間は『サマーウォーズ』を思い出し、細田監督のイメージするネット空間の世界が伝わってくる。一転、主人公のすずが住むのは、山奥の田舎。この田舎の山や川の映像もアニメとリアルのバランスが良く、非常に目に心地が良い。ここ何年かでアニメ自体の背景のクオリティーが格段に上がっている気がする。また、美女と野獣をイメージしたいくつかのシーンも演出がロマンティックだった。
社会に訴えかけたいこと、メッセージ性も強く感じた。限られたコミュニティーの中で簡単に炎上すること。見えないけど、確かに存在するスクールカースト。すずの母の行動に対する無責任な世間の批判。匿名だからこそできること。正義が悪に変わる瞬間。鋭い社会風刺を感じるとともに、物語ならではの甘酸っぱい青春、頼もしい友達の存在がすごく良い。物語としての面白さと、現実問題のバランスは、様々な作品で表現されているが、難しい問題だと思う。そのバランスが上手くいっている作品というのが、個人的には名作と言われるのではないかと思う。
今作について、いくつか疑問点を挙げるとするならば、結局兄弟が最終的にどうなったのか、5億人から1人を見つけることのあっけなさ、だろうか。1人を見つけた後の厳しい展開をどのようにまとめるかは難しいものがあったと思う。娯楽要素だけに振り切った話は、どこか内容が薄く感じてしまう。好みの問題もあるが、そういった意味では、今回はそのバランスを意識しているような作品に感じられた。