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導入事例のインタビューで気を付けること

導入事例記事は、ある程度「型」が決まっている。そんな記事を、前回書きました。

「型」があるため、書くこと自体はそこまで難しくありません。
気を付けるべきポイントが多いのは、インタビューの部分です。

ということで、導入事例取材について、解説していきます。


導入事例取材の現場

エンドクライアントのお客様へ取材する

導入事例は、「商品の提供企業(エンドクライアント)の顧客」へ取材を行います。
つまり、ライターにとっては、お客さんのお客さんにインタビューすることになるわけです。
商品提供企業から直接依頼を受けることもありますが、間に編集プロダクション(以下、編プロ)が入ることもあります。
この場合はもっとややこしくて、ライターは、お客さんのお客さんのお客さんにインタビューすることになります。

大抵の場合、商品提供企業(エンドクライアント)の営業さんが取材に同席します。また、編プロの担当者も同席することがあります。つまり、気を遣わないといけない相手がいっぱいいるということです。

もちろん、一番気を遣うべき相手は、インタビュイー(取材先)である導入企業の方です。
取材の場では、《導入企業》 対 《商品提供企業・編プロ・ライター》という立場になります。つまり、エンドクライアントもクライアントも、仲間です。
とはいえ、エンドクライアントはお友達ではありません。
プロダクトを下げるような発言はNGですし、自虐ネタで場を盛り上げるなどもってのほか。
節度のある振舞いが求められます。

とか言うと、なんだかすごく大変なように感じるかもしれませんが、普通で大丈夫。
場を盛り上げたり和ませたりするのは同席している営業さんにお任せして、ライターは記事に必要な情報を丁寧にヒアリングすることに集中すればいいのです。


良好な関係が築けている場

クライアントとエンドクライアントと取材先企業と、「気を遣う先がいっぱいで大変だ」と感じるかもしれません。

でも、それぞれ良好な関係が築けているはずなので、場の雰囲気は悪くありません。

取材先の企業さんは、その商品を使ってうまくいってるからこそ、導入事例に登場するわけです。
だから基本的に、「お陰様で助かっています」というスタンスです。

また、導入事例の取材に応じてくれるということは、商品提供企業との間に良い関係が築けている証でもあります。
なので、取材をしていて険悪な雰囲気になることは、まずありません

人物を深掘りするようなインタビューだと、中にはムッとされる方とか、あまり協力的ではない方もいたりしますが、導入事例の場合、そういうことは起こりません。

なのでライター側も、敢えて答えにくい質問をすることで本音を焙り出す...みたいな捻り技は使いません。
正面からきっちり聞いていくことが大切です。

無駄な駆け引きが必要ないところが、導入事例取材のよいところです。


時間配分はやや巻きで

取材時には、予定時間と質問案を見比べて、「あと10分で3問ね」みたいにペース配分をしていると思います。

導入事例取材の場合には、時間配分は巻きめで行いましょう

導入事例記事の文字数は、多くて4000字程度です。あまり長くても読まれないため、2000字程度の記事もたくさんあります。
なので、あまり話を広げずに、コンパクトに深く聞く感じになります。

また、事前に質問案を送っていることも多く、答えの準備をしてくださっていたりすると、非常にスムーズに進行します。

ですから基本的に、そこまで取材に時間はかかりません。

必要な話を聞きだせたら、私は早めに営業さんに振るようにしています。

「ありがとうございます。私が聞きたかった内容は、お聞きすることができました」
(営業さんのほうを向いて)
「何か、補足で聞いてくださることはありますか?」
みたいな感じです。

すると営業さんが、いろいろ聞きたいことを聞いてくれます。

このとき、実は、記事に使えそうな質問は、ほとんど出てきません

取材というのは、通常の商談とは異なる接点のため、いつもとは違う雰囲気でヒアリングを行える場です。
優秀な営業さんは、このような機会を逃しません。

「現場から『ここが使いにくい』みたいな声はあがっていますか?」
「追加であると嬉しい機能は何ですか?」
「ご年配の従業員さんは、使いこなせていますか?」
など、今後につながる話や商品の改善に向けた質問が出てくることが多いです。

でも、商品の改善してほしい点というのは、導入事例に掲載すべき内容ではないため、インタビューの取れ高には加わりません。

ということで私は、聞きたいことを一通り聞いてから、最後に営業さんへバトンタッチするようにしています。


撮影の時間も忘れずに

現地取材で撮影が入る場合には、撮影時間も考慮する必要があります。
取材前に、「インタビュー45分、撮影15分」みたいな段どりをしっかり確認しておくことが大切です。

導入事例取材の場合、取材中のカットと、会社入口で社名プレートを入れたカットの2パターンを撮ることが多いです。

会社入口でのカットは、インタビュー後に撮影することがほとんどです。
いろいろ話した後のほうが、表情も和らいでいますから。

営業さんにバトンタッチする時間のほかに、写真撮影の時間も考えて、インタビューの時間を配分しましょう。

ただ、途中で抜けるインタビュイーがいたり、屋外で撮影するのに天気が崩れそうだったりした場合には、先に撮ってしまうこともあります。

ちょっと話は変わりますが、私は、レコーダーが邪魔にならないか、カメラマンさんに確認してから録音するようにしています。
「この辺まで大丈夫ですか?」と確認しながら、邪魔にならないギリギリまで、インタビュイーの近くにレコーダーを置きます。

導入事例取材は、担当営業さんやカメラマンさんとともに、チームで行うものです。ライターが一人でできることではありません。
チームワークを考え、お互いのパフォーマンスを高めあえるような振舞いをしたいものです。


狙うべきポイントと注意すべきポイント

谷(課題)と山(解決)のギャップがほしい

導入事例の取材で聞き出すことは、「谷(課題)」と「山(解決)」です。
これは、どんな文章にも言えることですが、谷が深ければ深いほど、山が高ければ高いほど、そのギャップによって読みごたえが出てきます。

でも、突っ込みすぎない

インタビューによって、「谷」と「山」を聞き出します。
このとき、谷が深いほど、話としては面白い。けれども、あまり突っ込みすぎてはいけません。

というのも、深い谷をそのまま書いてしまうと、取材先の企業の信頼を損なうことに繋がってしまうから。
話の面白さと信頼性、このあたりのさじ加減は、すごく大切です。

課題やトラブルが大きいほうが面白い読み物にはなるものの、原稿確認時に「取材では話しましたが、やっぱりこの話はカットしてください」みたいなことが起こりがちです。

また、読み手から「わかるー。あるよね、こういうこと」と共感してもらうことも大切な目的なので、あまりに突飛な話を書いてもしょうがない。
割とありがちな課題でいい。いや、むしろそのほうがいい。
それが、その業界や業種特有の「ありがち」だったりすると、サイコーです。

このありがちな課題について、具体的で詳細なシチュエーションを描くことで臨場感を出し、「こんなに困ってたのか」と思わせる演出を施しましょう。

とはいえ、インタビューの際、あまり突っ込んで聞きすぎると、「それはちょっと……」と相手も及び腰になってしまいます。そこは、空気を読みながら、という感じになります。

最初に
「お聞きしたことをすべて書くわけではありません。また、公開前に原稿をチェックしていただきますので、修正や削除してほしい箇所がありましたら、遠慮なくおっしゃってください」
と伝えておくと、ざっくばらんに話してもらいやすいです。
(これは、営業さんが伝えてくれるケースも多いです)


質問案はだいたい似てる

あれこれ気をつけることが多くて「導入事例の取材って、なんか難しそう」と感じるかもしれません。
でも、質問の内容はだいたい似ているので、慣れてくればスムーズにできるようになっていきます。

前回の記事で、「導入事例の構成はほぼ変わらない」とお伝えしました。
出来上がりの記事の構成がほぼ変わらないということは、インタビューについてもそこまで変わらないということです。
なので、質問案も、だいたい似てきます。

基本の質問案を作っておけば、それを業界やプロダクトに応じてアレンジするくらいで、使いまわすことができます。

しかし、パターン化されているからといって、全く同じ内容になってしまっては困ります。
同じような記事にしないために、インタビューで掘り下げていくことが大切です。

そのためには、質問案に沿った質問をしつつ、いただいた回答の中から「ここを掘り下げよう」というポイントを定め、メモしておきましょう。

話の切れ目に、
「○○があったのは、いつ頃の話ですか?」
「そんなイレギュラーな事態に、どうやって対応したのですか?」
と掘り下げて質問していきます。

この掘り下げによって、シチュエーションの違いを見せていくわけです。
同じような事態であっても、リソースの制約、語り手の立場、迫りくる納期など、状況によって異なるストーリーとして伝えることができます。

導入事例記事は、基本的に、たくさんの記事が横並びで公開されるものです。サムネイルも、さして代わり映えしません。
だからこそ、他の記事と同じ記事にならないような工夫が、ライターに求められているのです。


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