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導入事例記事には「型」がある

「導入事例が今、すんごくキている」という話をしました。

だから、「ライターのみんな、導入事例を書いてみない?」とお誘いしているわけです。
仲間を増やして市場を大きくしたいぞ作戦のために、〆切の合間を縫ってせっせと note をしたためております。

導入事例記事、書いたことのない人には、ちょっとハードルが高く感じられるかもしれません。
なので今回は、「導入事例ってこういうものだよ」と、記事の構造について解説してみようと思います。


導入事例記事の基本構造

導入事例には、明確なパターンがあります。

私は常々、「導入事例って水戸黄門みたいだな」と思っています。
時代劇の『水戸黄門』です。
若い方は知らないかもしれませんが、気にせず話をつづけます。

『水戸黄門』って、毎回、話のパターンが一緒なんです。
① 水戸光圀(徳川光圀)が身分を隠して旅をする。
② 旅先で町人が困っている様子を見かけ、解決に乗り出す。
③ 悪者に反撃され、乱闘になる。
④ 葵の紋が入った印籠を出し、身分をカミングアウト。
⑤ 悪者が「へへーっ」と平伏。悪者を捕らえ、一件落着。
⑥ 町に平和が戻り、光圀ご一行は旅を続ける。
ほぼ全話、このパターン。

パターンが決まっていても、ドラマが成り立つ。
それは、視聴者も「そういうものだ」と思って見ているからです。

導入事例も同じです。もう明確な型があります。
そして読者もまた、それを知った上で読んでいます。

では、この導入事例の「型」について、解説していきます。


導入事例記事は、ほとんどが「課題解決型」

導入事例の構造は、ほとんどが「課題解決型」で、そして一部が「比較検討型」です。

というのも、そもそもBtoB商材自体が、課題解決に特化した商品だからです。
BtoC商材の場合、問題解決以外にも、ユーザーを楽しませるとか、癒すとか、いろんな目的が存在します。
でも、BtoB商材の目的は、ほぼ100%「顧客の課題解決」です。

だからこそ、導入事例記事では「このサービスを使うことで、こんな課題が一気に解決しました!」ということを伝えたい。
なので、「課題解決型」が非常に多いのです。

それに対し、「比較検討型」の記事は、その商品をなぜ選択したのかについてスポットを当てた記事になります。
類似する他社製品とどのように比べ、検討し、決定したのか。そのプロセスを聞き出し、書いていきます。

これは、ローンチしたばかりの商品の導入事例に多い「型」です。
というのも、導入間もない商品については、課題解決の実績がまだ出ていないことが多いからです。
商材にもよりますが、導入後1~2週間かそこらで目覚ましい成果なんて、なかなか出るものではありません。
でも、ローンチしたばかりだからこそ、導入事例をたくさん掲載して、アピールしたい。
そういうときに、「比較検討型」の記事を作成することになります。

ちなみに、「課題解決型」の記事にも、他社製品との比較検討のフェーズについて書いてあります。
つまり、「課題解決型」の記事の一部分をクローズアップして書いた(他の部分はまだ書けないから)ものが、「比較検討型」の記事になります。


「課題解決型」導入事例記事の構成

「課題解決型」の導入事例記事は、次のような構成になっていることが多いです。
絶対ではありませんが、私はほぼこの構成で書いています。
(掲載先のトンマナが決まっている場合には、そちらに合わせましょう)

  1. 現在の事業と業務
  2. 導入前に抱えていた課題
  3. 解決策の模索
  4. 製品・サービスの導入
  5. 導入後の効果


1. 現在の事業と業務

インタビュイー(取材を受ける人)の会社の事業、部署、役職、担当業務などを書きます。

このとき、クライアントが「取材先と同じ業界に今後食い込んでいきたい」と狙っている場合には、事業について詳細に書く。

役職者にアピールしたい、あるいは現場で実際に使うユーザーの使い勝手をアピールしたい、といった場合には、そのポジションにあたる方の業務や役割についても詳細に書く。

といったように、ただ企業やインタビュイーを紹介するだけでなく、クライアントの狙いに合わせた書き方ができると尚Goodです。


2. 導入前に抱えていた課題

成功事例のポイントは、「課題を抱えてすごく大変だった(谷)」と「導入後に課題が解決してこんないいことがあった(山)」のギャップを描くことです。
なので、導入前に抱えていた課題が深刻であればあるほど、導入後とのギャップを稼ぐことができます。

しかし、ここで一つ気をつけなければならないことがあります。

それは、あまりにも深刻すぎる課題を赤裸々に書いてしまったのでは、取材先の信用を毀損しかねないということです。

また、機密情報に関わることだから詳細には書けない、というケースもあるかもしれません。

ライターとしては記事に抑揚をつけるためにどどーんと大きな課題や失敗談などを盛り込まねば......という思いもあるでしょう。
でも大丈夫です。導入事例の場合、ドラマチックな話の展開よりも大切なポイントがあるんです。

それは、読者(見込み客)に「共感」してもらうこと。

ちょっとしたことだけれど、本人たちには結構つらい。
そんな課題でも充分です。

「わかるわー」「そうそう、これがなかなか大変なんだよ」と感じてもらうこと。

そして、「もしかして、この課題が解決できちゃうの?」と期待してもらうこと。

これが、次の項目へと読み進めてもらうエンジンになります。
これこそが、「2. 導入前に抱えていた課題」の項目で狙いたい部分です。


3. 解決策の模索

前項で出てきた課題を解決するために、ああでもない、こうでもないと解決するための施策やサービスを探したはずです。
どうやって調べたのか、他の何と比較検討したのかについて、書いていくのが、この「3. 解決策の模索」の項目です。

ちなみに、読者のほとんどは、その記事を読んでいるたった今、この「解決策の摸索」の段階にいるはずです。
だからこそ、導入事例を読んでいる。

この項目、つなぎのような地味な役割ではありますが、実は共感を得やすい重要なポイントなのです。

ここでも一つ、気をつけるべきことがあります。

それは、ライバル商品の悪口を絶対に書かないこと。

取材の席では「A社の○○って製品は全然使えなくてね、それで乗り換えを検討したんだよ」なんて話はよく出てきます。

でも、それをそのまま書いちゃダメです。

「以前使っていた製品には××の機能がなかったんです。そのため、どうしても工数が余計にかかってしまいました」
のような書き方にします。

他社製品のよくない部分を書くときは、特に品性が問われるものです。

クライアントの商品を持ち上げたいばかりに、ライバル商品の悪口を書いてしまったのでは、クライアントと取材先、両方の評判を落としてしまいかねません。

比較検討した商品の名称や販売元は書かずに、事実だけを伝える。
困惑している現場の様子を伝える。
その程度に留めておき、信頼維持に配慮しましょう。


4. 製品・サービスの導入

「4. 製品・サービスの導入」の項目では、比較検討の段階を経て導入を決定してから、実際に使いこなせるようになるまでの様子を伝えます。

BtoB商材の場合、買うだけで誰でも簡単に使えるものばかりではありません。
むしろ、そんな商材のほうが少ないでしょう。

社内システムに組み込む導入そのものが大変だとか、自社の運用に合わせるためのカスタマイズが大変だとか、実際に使用する社員に使い方をレクチャーするのが大変だとか、導入時にはさまざまな困難やトラブルがつきものです。

もし、困難やトラブルがなかった場合には、「こんなに導入が簡単でスムーズでした」というポイントをアピールします。

導入時に何らかの苦労があった場合には、どのようなトラブルが発生し、それに対してどのようなサポートを受けることができたのかを書きましょう。

読者さんは「いろんな機能があるのはいいけど、ちゃんと使いこなせるかなぁ」「うちには新しいシステムを嫌がるメンバーがいるんだよなぁ」と、不安に感じているはずです。

先回りしてその不安が解消するような情報を出してあげることも、導入事例記事の大切な役割です。

もちろん、カタログには「手厚いサポート」と書いてあると思います。
でもそれだけでは、何がどのように手厚いのか、具体的にはどんなサポートをしてもらえるのかは分かりません。
だからこそ、取材を通してエピソードを聞き出し、丁寧に書いていくんです。


5. 導入後の効果

いよいよここが、導入事例のクライマックスです。
その製品やサービスを導入したことによって、何がどれだけよくなったのかを書いていきます。

これは、聞いているほうも話しているほうも気持ちのよい話題です。話もサクサク進みます。

だからといって、
「このアプリの使い勝手がよくて、ミスも減ったし、すごく楽になったんです」
「それは素晴らしいですね!」
でおわりにしちゃダメです。

何がどう楽になったのか、ディテールを聞いておかないと、原稿を書くときに2行で終わっちゃいます。

このとき、必ず聞いておきたいのは「数字」です。

コストが何円下がったのか、あるいは何%下がったのか。
納期を何日短縮できたのか。
何人のスタッフを集めることができたのか。
具体的な数字で聞きましょう。

もし、「まだ集計できていなくて…」と言われても、諦めてはいけません。
「ザックリとでいいのですが、1/2くらいですか? 1/3くらいですか?」
「体感としては、何%くらいに減った感じがしますか?」
と食らいつきましょう。

また、成果を書く際には、その記事のターゲット読者に合わせた表現を選ぶことが重要です。

たとえば「残業時間が1/3に」という成果を書くとします。

そのサービスを実際に使う一般社員をターゲットにした場合、「早く帰れるからアフターファイブが充実する」みたいな書き方ができるかもしれません。

導入の調査検討をする中間管理職がターゲットの場合、「子育て中で残業のできなかった部下が引け目を感じずにすむようになった」とか、「部の残業削減目標をようやく達成できるようになった」といった部分にフォーカスして書くとよいかもしれません。

決裁権を持つ経営層がターゲットの場合、「残業時間が減ることで削減できたコストを新規投資に回し、攻めの経営に転じることができている」みたいな書き方ができるでしょう。

もちろん、このような言葉が取材のなかで都合よく出てくるわけではありません。
ターゲット読者に刺さる言葉を引き出せるような質問をしていくことが大切です。

とはいえ、まぁ、いくら質問しても、出てこないときは出てきません。
取材はナマモノなので、そんなときもあります。ドンマイ。


おまけ:今後の展望

「今後、その商品をどんなふうに活用していきたいか」
「その商品を使うことで何にチャレンジできそうか」
ということを、最後に聞いてみましょう。

ここで記事のネタになりそうな話が引き出せるかは、1/2くらいの確率です。

いい話を聞くことができたら、最後に今後の展望を書いて、記事を締めます。
そうでなければ、「こんな成果がでました!」というところで終わって大丈夫です。

たまに、今後の展望で語られた内容が、うまいこと次にリリースされる商材へ繋がることがあります。
そんなときは、新商品紹介のURLなどにうまく誘導できるような締め方を提案してみましょう。

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