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読了「わたしたちが孤児だったころ」カズオ・イシグロ
1930年代のイギリスが舞台。
イギリス在住の主人公が上海で過ごした幼少期を想起していく。
彼は孤児で、両親は死んだのか、失踪したのかもわからない。
それを紐解くミステリー小説のような要素も楽しめた。
日中戦争など世界情勢が絡んでくるため、
歴史小説としての重厚感があった。
アキラという名の日本人との友情も印象的。
幼少期についてふと気づいたり、そろりそろりと記憶をたぐり寄せていく描写がとてもうまく、まるで自分の記憶を思い出しているように錯覚した。
純文学は読みにくいものが多いが、イシグロの文章は1ページ目からとても読みやすくて、美しい。
後半で明かされる真実に心がざわついた。
何が本当なのかわからず、少し怖いような気分になった。
夢中になって読み耽った最高の一作。
"Our chilhood becomes like a foreign land once we have grown"
大人になってしまうと、幼少期はまるで外国のように不慣れで不確かなものになってしまう。