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【オンラインショップ更新】特集 マリー・ホール・エッツ
あけましておめでとうございます!
古本とがらくた paquet.オンラインショップ、今年最初の更新のお知らせです。
今回はわたしも大好きな絵本作家、マリー・ホール・エッツの作品を紹介します。
1895年にアメリカ・ウィスコンシン州ミルウォーキーで生まれたマリーは、1940年代から1950年代にかけてのアメリカ絵本の黄金時代を彩った絵本作家のひとりとされています。1960年には「セシとポサダの日」でコールデコット賞を受賞して世界的にしられることとなった彼女ですが、最初の絵本を出版したのは40歳を過ぎてからでした。
大学時代に第一次世界大戦が勃発し、夫を戦争で亡くしたマリーは絵の仕事を諦めて社会福祉を学びなおし、シカゴに移ってソーシャルワーカーとして子どもの福祉のためにはたらいたそうです。しかし31歳のときに赤十字外国部員の赴任先であったチェコで医療事故に遭い、健康を害して帰国。その後二番目の夫となるエッツ博士に出会い、デビュー作「ぺ二ーさん」を描き始めました。
「ペニーさん」
マリー・ホール・エッツ
作・絵
松岡享子
訳
1997年6月30日 徳間書店 発行
原題は「Mister Penny」
1935年のアメリカで出版されたマリー・ホール・エッツによる最初の絵本です。
今にもこわれそうな小屋にたくさんの動物たちと暮らしているペニーさんは、彼らを養うために町の工場ではたらいています。
ペニーさんは貧乏なので、時計も持っていません。毎朝、動物たちの世話を終えると、工場のサイレンが鳴るのを合図に仕事にでかけます。
ある日、ペニーさんが留守にしているあいだに、動物たちが隣の家の畑を荒らしてしまいました。怒った隣の家の住人は、ペニーさんに損害賠償を求めます。けれどペニーさんには、お金も、言いつけられた仕事ができるほどの余裕もありません……工場の仕事に行かなければ、動物たちのごはんを買えないからです! 困ったペニーさんを見て、動物たちは考えました。
絵本、というには異例なほど長いお話で、絵はモノクロの版画です。
アメリカ絵本の発展においておおきな功績を遺したマリーがどんな作家だったのか、出発点を示してくれるすばらしい作品だと思います。
「もりのなか」
マリー・ホール・エッツ
文・絵
まさき るりこ
訳
1963
年12月20日 福音館書店 発行
アメリカでの初版刊行は1944年。マリーが手がけた三冊目の絵本であり、彼女の代表作ともいえる本作は、二番目の夫となったハロルド・エッツ博士の闘病中に描かれました。マリーは病におかされ弱っていく夫を懸命に看病しながら、動物に親しみ自然のなかでたのしく過ごした幼少時代の記憶を題材にしてこの絵本を描いたのだそうです。
夫を看取った翌年に出版された「In The Forest」の主人公は、紙でできた帽子をかぶり、らっぱを鳴らして歩く男の子。動物たちを連れて先頭を歩く姿はケイト・グリーナウェイ「ハーメルンの笛吹き」のオマージュとなっています。
「わたしとあそんで」
マリー・ホール・エッツ
文・絵
よだ じゅんいち
訳
1968年8月1日 福音館書店 発行
先に紹介した初期の代表作から約十年、第二次世界大戦後に出版された作品には、モノクロから一転、パステルカラーを基調としたものが多く見られます。
「あさひが のぼって、くさには つゆが ひかりました。わたしは はらっぱへ あそびに いきました。」
作中で“わたし”はさまざまな野生動物に出会い「あそびましょ」と声をかけますが、“わたし”が近づくとみんな逃げていってしまいます。しかたがないので池のそばの石に腰かけていると、ばったが、かえるが、かめが、りすが……やがてみんなが戻ってきました。
淡々とした調子の文には繰り返しの技法が使われており、小さな子への読み聞かせにもおすすめの一冊です。
「モーモーまきばのおきゃくさま」
マリー=ホール=エッツ
文・絵
やまのうちきよこ
訳
1969年8月 偕成社 発行
今回最後に紹介する「モーモーまきばのおきゃくさま」
原題「COW'S PARTY」は1958年、マリーが63歳のときに出版された作品です。
牧場で暮らすうしはみんなにおいしい草をごちそうしてあげたくて動物たちを招きますが、動物たちのなかには草よりも肉や魚が好きな者もいます。
ごちそうが草しかないと知って、ほとんどの動物は帰ってしまいますが、うまとやぎとひつじのこは草が好きで、なかよく草をたべました。
ピンクを基調としたかわいらしい印象の作品ですが、その内容は自然界のありのままがやさしい言葉で綴られています。
今回はマリー・ホール・エッツの絵本を特集してお届けしました。
彼女の強さと優しさを受け取ることのできる作品ばかりだと思います。ぜひ手に取ってみてください。
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昨年はイベント出店だけでなく、オンラインで出会った皆さまにもたいへんお世話になりました。
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