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実録・神保町ブックフェスティバル120分

――もはやこれは祭でない。狩猟である。

10月も終わろうとする27日、私はたっぷりと寝溜めして8時過ぎに起床した。午前中はドラマアプリで某女性外科医のコメディと中年男性が1人でグルメする某ドキュメンタリー(もとい飯テロ)を見ていた。
さてお昼に何を食べようか、「腹が、減った」と思い切りドラマの内容を引きずりつつ何気なくTwitterを開くと、『神保町に来ています!』といった投稿が目に入った。はてなんだろう、と思いつつ調べるとなんと「神保町ブックフェスティバル」をやっているらしい。
「行かねば」私はそう思い、猛然と家にあった食パンを口に詰め、リュックをひっつかんで駅へ走った。

電車に揺られて神保町についたのは2時前のことだった。さてさて祭はどこかいな、と思った刹那、例のでかでかとした看板とその下の本棚に群がる人々を発見。早速私も飛び込んだ。どうやら美術関連のゾーンのようであったが、寅さんやら広辞苑やらと雑多な品揃えでなかなかカオス。まずは『美術館の窓から』大川栄二(芸術新聞社)を購入。500円也。

さくら通りへと歩みを進め、角のワゴンで『猫と偶然』春日武彦(作品社)も500円で購入。平松洋子さんの帯コメントの誘惑に負けた。
地理の授業でお馴染みの清水書院ブースで『千畝 一万人の命を救った外交官 杉原千畝の謎』ヒレル・レビン(清水書院)を買う。私だってたまには真面目な本も読むのである。
並びの如月会館ブースで東京會舘のクッキーも買う。辻村さんのトークショーの時にお世話になったんですよ、と私が伝えると、そうでしたか、辻村さん共々今後もよろしくお願い致します、と仰っていた。この辺りのコメントにプロ意識を感じる。如月会館の人だったら知らないであろうイベントに言及してしまったのは今更ながら申し訳なく思う。

方向転換していよいよ本丸のすずらん通りへ。
こちらの方がより祭感はあるが、もはやこれは祭でない。狩猟である。真剣勝負で欲しいものを選ぶ、戦なのだ。……といったなかなか過激な(?)思想を抱きつつ晶文社のワゴンで『江戸の人になってみる』岸本葉子(晶文社)を半値でお買い上げ。まあそもそも先祖が江戸の人(のはず)なので私は江戸の人の末裔(であるはず)だが。
入場規制していた東京創元社ブースに並んでみる。比較的早く入れた。が、実は私は海外ミステリーはあまり読まないのである。さてさて、折角入れたが出ようかな、と思っていたところ『死ぬまでお買物』エレイン・ヴィエッツ(東京創元社)という現在の状況を表したような本を見つけた。まあ私は死ぬまで読書ですけどね。1冊400円ということもありシリーズ既刊4冊をまとめ買い。

唐揚げやらなんやらを美味しそうに食べている人がいた。ちょっと小腹が空いたなあ、と思い歩いていると中華料理のお店を発見。なんと北京ダックをその場で作って売っていた。これはもう買いだな、と思い350円で1つ購入。古本市の中で食べる北京ダックはなかなか乙なものであった。ちょっと硬いのはご愛顧。

その後も色々な本との葛藤を繰り広げつつ駿河台下の交差点まで到達。この時点で所持金は1000円ほどであった。
そのまま折り返し明治書院で『2時間でわかる 源氏物語』北川真理・森秀雄(明治書院)を購入。定価より半額、となっていたのだがご厚意で半額以下の400円で売って頂いた。ビバ・明治書院!

途中で藤の花のしおりも購入。これで心おきなく幻冬舎文庫も読めるというものである。
もちろんその後2本目の北京ダックを買う買わないで脳内議会が紛糾したのは言うまでもない。結局我慢したが。

神保町の交差点から西へ青空古本市へ行く。先ほどに比べかなりディープな品揃えだったが琴線に触れるものはなく西の端で再び折り返す。とろとろと歩き東に向かっていると、ビルの外壁一面に本棚が据え付けられている古本屋を発見。これは何か「ある」。そう思い見てみると、なんと浅田次郎の『プリズンホテル』シリーズの状態の良いのが1冊100円で売られていた。本屋で見かける度に悩んでいたのだがこの場で400円で手に入るということは神の思し召しだなと確信し購入。

再びすずらん通りに舞い戻る。何か最後にもう1つ、と思い東に進む。そこで出会ったのがTAKANOの「熱っつ熱つのロイヤルミルクティー」250円也。これがもうマジ旨い。こんな感じで語彙力破壊するレベル。これで締めた。

まさに知の祭典。目に入る文字だけでオーバーフローするレベルであった。
普段見ないようなジャンルからお馴染みのあの文庫レーベルまで一気呵成に迫ってくる。そこから自分の欲しい本を見つけ出すという、私にとっては狩猟であった。
帰ってからTwitterを見ていると数人のフォロワーさんも神保町にいたようであった。ネット上の顔も知らない知り合いが同じ空間にいたということはちょっと奇妙な気分である。
そして、誰もが自分の気に入った本を手に帰ることを想像すると嬉しく思う。そんな日曜の午後であった。