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レティシア書房店長日誌

福永壮志監督「AINU PURI」
 
 この映画は北海道・白糠(釧路)で伝統的なマレプ漁(鮭漁)をはじめとしたアイヌ文化を継承し、日常の中で"アイヌプリ”(アイヌ式)を実践する天内重樹さんとその家族を追ったドキュメンタリー映画です。白糠町で生きるアイヌの家族に密着し、祖先から伝わるマレプ漁の技術や、アイヌ文化を息子に伝えてゆく姿がフィルムに収められています。
 

マレプ漁の実際の現場は、秋から冬にかけての厳しい気候の中、冷たい川に入り、川を見つめ、モリを打ち込む。映画はそういう黙々と行われる作業をしっかりと撮影していきます。大量に魚を取るわけではありません。
 基本的にアイヌ文化は、全てのものに神が存在するというのがベースになっています。何をするにもまず神様に感謝することから始まります。ここでも、祈るシーンが何度も登場します。鹿を一発の銃撃で仕留めた後に解体するにも、天国へ帰っていった鹿の魂への感謝の言葉をつぶやきます。あるいは、釣り上げた魚を捌くところでも「ありがとう」とか「ご苦労さんやったな」と声をかけます。
 鹿の解体シーンでは、今死んだばかりの鹿の体から湯気が消えてゆく瞬間を映画は見せます。まるで魂が抜けていき、天へ登ってゆくようにも見えます。監督は、このシーンの意図をこんな風に語っています。
 「生き物の命をいただくことへの感謝や、その重みに対しての認識を現代人は失くしてしまっていると思うんです。僕も普通に生活していて、当たり前のようにお金を出して、肉を買って食べる中、そのことについて考えなくなっている。だからこそ、この映画の中では命をいただくことの重みを伝えること、それをリマインドさせることには、意味があるんじゃないかという考えが僕の中にはありました。」
 アイヌの事を取り上げると、差別を受け続けてきた歴史や、理不尽な扱いの記憶ばかりがクローズアップされてしまいがちです。でも、みんな普通に暮らしているんだ、という事をこの映画は伝えます。特に、父と息子の関係をカメラは丹念に追いかけていきます。漁も狩りも自分一人で行い、解体もする父親の後を息子は追いかけていきます。息子にしっかり向き合って生きる事を教えるという姿に感動しました。
 かつて、アイヌは差別されてきましたが、息子は「僕はアイヌ」だというと「かっこいい」と言われたそうです。これ、「ゴールデンカムイ」という映画化もされたコミックのおかげでしょうね。アイヌ文化の中で女性が狩りに行くことはなかったので、このコミック自体はファンタジーなのですが、これはこれで凄い事だと思いました。

年始年末休業のお知らせ:12月29日(日)〜1月7日(火)

レティシア書房ギャラリー案内
12/25(水)〜12/28(土)絵本ディスカウントフェア
2025年 1/8(水)〜1/19(日)古本市
1/22(水)〜2/2(日)「口を埋める」豊泉朝子展

⭐️入荷ご案内
「京都町中中華倶楽部 壬生ダンジョン編」(825円)
「オフショア4号」(1980円)
青木真兵&柿内正午「二人のデカメロン」(1000円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
SAUNTER MAGAZINE Vol.7 「山と森とトレイルと」

いさわゆうこ「デカフェにする?」(1980円)
「新百姓2」(3150円)
青木真兵・光嶋祐介。白石英樹「僕らの『アメリカ論』」(2200円)
坂口恭平「自己否定をやめるための100日間ドリル」(1760円)
「トウキョウ下町SF」(1760円)
モノ・ホーミー「線画集2『植物の部屋』(770円)

古賀及子「気づいたこと、気づかないままのこと」(1760円)
いしいしんじ「皿をまわす」(1650円)
黒野大基「E is for Elephant」(1650円)
ミシマショウジ「茸の耳、鯨の耳」(1980円)
comic_keema「教養としてのビュッフェ」(1100円)
太田靖久「『犬の看板』から学ぶいぬのしぐさ25選」(660円)
落合加依子・佐藤友理編「ワンルームワンダーランド」(2200円)
秦直也「いっぽうそのころ」(1870円)
折小野和弘「十七回目の世界」(1870円)
藤原辰史&後藤正文「青い星、此処で僕らは何をしようか」
(サイン入り1980円)
YUMA MUKUMOTO「26歳計画」(再々入荷2200円)
モノホーミー「自習ノート」(1000円)
コンピレーション「こじらせ男子とお茶をする」(2200円)
牧野千穂「some and every」(2500円)
マンスーン「無職、川、ブックオフ」(1870円)
笠井瑠美子「製本と編集者」(1320円)
奈須浩平「BEIN' GREEN Vol.1"TOURISM"」
小野寺伝助「クソみたいな世界を生き抜くためのパンク的読書」(825円)
小野寺伝助「クソみたいな世界で抗うためのパンク的読書」(935円9

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