レティシア書房店長日誌
ファイト・ヘルマー監督作品「ゴンドラ」
ドイツ出身のヘルマー監督の最新作は、なんと台詞なし映画!それでいておしゃべりな、とても豊かな映画なのです。
父の死をきっかけに村に帰ってきたイヴァは、村にあるゴンドラの乗務員として働き始めます。そこにはもう一人、ゴンドラ乗務員の先輩乗ニノがいました。ほとんど客のいないゴンドラですが、谷間をつなぎ、村人の役には立っています。駅長は威張り屋で、その態度は今ならセクハラ、パワハラオヤジとして糾弾されるところです。そんな駅長を無視して、二人は仲良くなり、やがてゴンドラを着替えさせる遊びに夢中になります。ニューヨーク行きの飛行機にしたり、リオ行きの蒸気船にしたり、火星行きのロケットにしたりと、豊かな想像力と手仕事でゴンドラを作り変えて、すれ違う瞬間を楽しんだりしています。そんな奇想天外なやりとりは、2人の距離をどんどん近づけていきます。しかしある日、2人の優しい悪戯が駅長を激怒させてしまい、とんでもない騒動へと進んでゆくのですが…….。
映画に登場するゴンドラは、ジョージア(旧グルジア)南部、小コーカサス山脈の西にあるフロという小さな村に実在しました。「ジョージアで最も長い距離をつなぐゴンドラ」と言われ、途中の支柱が全くないので、風が強いとかなり横に揺れるそうです。映画は、様々な角度から愛らしいゴンドラの姿を捉えていきます。現実の風景なのに、まるで絵本の世界に入ってしまったような感じです。セリフはありませんが無声映画ではないので、ガタガタゴトゴトという車体の音や、風の音が聞こえてきます。残念ながら、数年前にこのタイプのゴンドラは新しい車体に変えられたそうで、フィルムに焼き付けられた姿はとても貴重です。
「上り」と「下り」のゴンドラが空中ですれ違う様子を、多種多様なカメラワーク、ノスタルジックな音楽、二人の乗務員の表情等で単調になることなく、奇想天外なドラマに仕立て上げた監督の手腕に驚きました。これでもか、これでもかと湧き出すような監督のイメージの洪水に、最後まで酔わされた映画です。
谷間の行き来だけなのにどこまでも飛んでいけるような、何もかも自分たちの手で作ってとことん遊ぶ二人の自由さは、ネットと携帯の情報の洪水に溺れがちな今の私たちから見ると、この上なく魅力的に見えてきます。
●レティシア書房ギャラリー案内
11/13(水)〜11/24(日)「Lammas Knit展」 草木染め・手紡ぎ・手編み
11/27(水)〜12/8(日)「ちゃぶ台 in レティシア書房」ミシマ社
12/11(水)〜12/22(日)「草木の色と水の彩」作品展
⭐️入荷ご案内
GAZETTE4「ひとり」(誠光社/特典付き)1980円
スズキナオ「家から5分の旅館に泊まる」(サイン入り)2090円
「京都町中中華倶楽部 壬生ダンジョン編」(825円)
「オフショア4号」(1980円)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
青木真兵&柿内正午「二人のデカメロン」(1000円)
創刊号「なわなわ/自分の船をこぐ」(1320円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
TRANSIT 65号 世界のパンをめぐる冒険 創世編」(1980円)
SAUNTER MAGAZINE Vol.7 「山と森とトレイルと」
いさわゆうこ「デカフェにする?」(1980円)
「新百姓2」(3150円)
青木真兵・光嶋祐介。白石英樹「僕らの『アメリカ論』」(2200円)
「つるとはなミニ?」(2178円)
「ちゃぶ台13号」(1980円)
坂口恭平「自己否定をやめるための100日間ドリル」(1760円)
「ヴィレッジ・コード ニセコで考えた村づくりコード45」(1980円)
「トウキョウ下町SF」(1760円)
モノ・ホーミー「線画集2『植物の部屋』(770円)
モノ・ホーミー「2464Oracle Card」(3300円)
古賀及子「気づいたこと、気づかないままのこと」(1760円)
いしいしんじ「皿をまわす」(1650円)
黒野大基「E is for Elephant」(1650円)