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レティシア書房店長日誌

高砂淳二写真展
  
 京都駅に隣接している伊勢丹7階、美術館『えき』KYOTOで開催中(5月19日まで)の「高砂淳二写真展ーこの惑星の声を聴く」は、期待以上に胸に染み込む作品展でした。
 高砂淳二は1962年石巻市生まれ。専門誌「月刊ダイビングワールド」の専属カメラマンを経て89年に独立し、ネイチャーフォトを中心に様々な写真を撮り続けています。展覧会は「海の声」「大地の声」「空の声」の3部で構成され、生きている惑星、地球の様々な姿を捉えた約100点の作品です。今まで星野道夫をはじめ、多くのネイチャーフォトグラファーの作品や作品集を観てきました。やっぱり、機会があれば、どの写真家の作品も実際に観るべきだと思いました。
 「大地の声」のコーナーに、向こうから近づいてくる一頭の象を捉えた作品がありました。孟子だったか、孔子だったか忘れましたが、こんな言葉を思い出しました。「孤独の歩め、林の中の象のごとくに。悪をなさず、求めるところ多くなく......。」作品に写っている象は、林の中にいるわけではありません。サバンナの向こうからやってくるのですが、観た瞬間、どこかで覚えたこの文章が脳裏をかすめました。背後に広がる青空、乾いた大地。そこに屹立する一頭の象。見入ってしまいました。
 もう一点、おぉ!美しい!と思ったのが、彼の作品集「PLANET OF WATER」(古書2200円)の表紙になっているフラミンゴが湖面に佇んでいる作品です。一枚の絵画を観ているような気がします。(撮影場所はボリビアウユニ湖)この本はテーマが「水は、生命をつなぎ、かくも美しき星をつくった」という作品集で、水、海、雨、雪の美しが表現されているのです。

作品集

 さらにもう一点、ボリビアで撮影された「夜の”天空の空”」。広大な大地にポツンと立っている一人の青年。その背後に広がるディープブルーの夜空と満点の星。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に、「するとどこかで、ふしぎな声が、銀河ステーション、銀河ステーションと云う声がしたと思うといきなり目の前が、ぱっと明るくなって」という文章があって、ジョバンニがはるか彼方への旅を始めるのですが、まるで銀河を旅する列車がやってくるようです。

夜の”天空の空”

 「僕ら人間も他の様々な生き物同様に地球を構成する一つの大事な細胞として、今を生きている。それぞれの生き物がピースのように絡み合って一つの地球という生命を成り立たせている。」
 この写真家の言葉が、よく理解できる写真展ですよ。

●レティシア書房ギャラリー案内
4/24(水)〜5/5(日)松本紀子写真展
5/8(水)〜5/19(日)ふくら恵展「余計なことかも知れませんが....」
5/22(水)〜6/2(日)「おすよ おすよ」よしだるみ新作絵本出版記念原画展

⭐️入荷ご案内モノ・ホーミー「貝がら千話7」(2100円)
野津恵子「忠吉語録」(1980円)
坂巻弓華「寓話集」(2420円)
村松圭一郎「人類学者へのレンズ」(1760円)
きくちゆみこ「だめをだいじょうぶにしてゆく日々だよ」(2090円)
森田真生「センス・オブ・ワンダー」(1980円)
友田とん「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する3 先人は遅れてくる」(1870円/著者サイン入り!)
川上幸之介「パンクの系譜学」(2860円)
町田康「くるぶし」(2860円円)
Kai「Kaiのチャクラケアブック」(8800円)
安西水丸「1フランの月」(2530円)
早乙女ぐりこ「速く、ぐりこ!もっと速く!」(1980円)
上野千鶴子「八ヶ岳南麓から」(1760円)
島田潤一郎「長い読書」(2530円著者サイン入り)
つげ義春「つげ義春が語る旅と隠遁」(2530円)
山本英子「キミは文学を知らない」(2200円)
たやさないvol.4「恥ずかしげもなく、野心を語る」(1100円)
花田菜々子「モヤ対談」(1870円)
子鹿&紫都香「キッチンドランカーの本」(660円)

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