レティシア書房
北山耕平(翻案)「虹の戦士」
「白人の作った鉄砲のことは忘れるしかない。あれはただの冷たい鉄の塊だ。インディアンのつくる弓には魂がある。弓は、お前の手のなかで生命を取り戻すのだ。だから、弓をつくるときには、愛と尊敬をもって細部までていねいにつくらなければならない。いささかも、手を抜くことは許されない。お前の中にあるスピリットの力を弓にこめるのだ。そうして父親がどうしても折れないような弓をできたら、それを持って山に入り、わたしのために鹿を一頭捕まえてきておくれ。でも、たったひとつ、これだけは忘れてはいけない、よいか、インディアンは、ぜったいに、必要なもの以外は、殺さないのだ」(第5章「技をものにする」)
本書「虹の戦士」は、1991年河出書房から出版されて、99年太田出版より旧版が、2017年に同社から定本版が出て、今回リトルブック版で登場しました。(新刊/太田出版1760円)
元になっているのは、1962年に出た100ページにも満たない小冊子「虹の戦士ーインディアンの人々に伝わる奇妙で予言的な一部」に収録されている「スピリットの帰還」という著者不明の逸話です。それが翻訳されて、長いあいだ読み継がれてきたのです。
ネィティブ・アメリカンへの関心の高まりは、いつ頃から起こったのでしょうか?地球環境問題が、広く市民の間に広がってきた頃でしょうか。そして、自然との共生を実践する彼らの精神が、時代のキーワードみたいになっている「癒し」という、あるような無いようなジャンルの中に取り込まれて、多くの本が出たと記憶しています。
北山耕平は、こう言います。
「自分を癒すことが直接的に社会や地球そのものを癒すことにつながっていることを知らなくてはならない。この繁がり、環を、どこかで、断ち切ってしまったら、それは癒しなどでは無いのである。つまり、これは逆も言えることであり、地球や社会が汚れて病気になったいるとしたら、それはあなたや私が汚れて病気になっていることでもあるのだ。」
当店でネィティブ・アメリカンや、アイヌ民族関係の本が長く売れているのは、そんな癒しを求める人が多くなったからかもしれません。
「地球が病んで 動物たちが 姿を 消しはじめるとき みんなを救うために 虹の戦士たちが あらわれる」
難しい言葉も、複雑な文章は全くありません。でも、小さなサイズに収められたこの物語から、ネィティブ・アメリカンの生き方を学び、私たちもまた地球を生きる一人の人間だということを知ることができるのです。搾取され、追い詰められていった少数民族の人たちが持ちつづjけた希望と再生が、物語には詰まっています。
「願わくば太陽が あなた方に日々新たな力を もたらしますように。 願わくば月が 夜ごとあなた方を元どおりに 回復させますように。
願わくば雨が あなた方の悲しみを 洗い流しますように。
そして優しい風が あなた方に新しい力を与え あなた方の日々の生活を豊かにし 願わくばあなた方が 世界を優しく歩いて渡り 世界の美しさとあなた方の美しさを 理解しますように。」
●レティシア書房ギャラリー案内
11/29(水)〜 12/10(日)「中村ちとせ銅版画展」
12/13(水)〜 24(日)「加藤ますみZUS作品展」(フェルト)
12/26(火)〜 1/7(日)「平山奈美作品展」(木版画)
●年始年末営業案内
年内は28日(木)まで *なお26日(火)は営業いたします。
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