レティシア書房店長日誌
パトリシオ・グスマン「私の想う国」
この映画は、チリで起こった大きなデモを描いたドキュメンタリーです。
2019年10月サンティアゴ市地下鉄運賃値上げをきっかけに、貧富の差や経済政策に不満を持った学生たちが蜂起し、機動隊と衝突。その後デモは拡大化していき、多くの市民が参加していきます。10月末には経済と政治の変革を求めるデモに、なんと120万もの人々が参加しました。そしてその後、独裁政権は倒れ、若き大統領が誕生して新しい憲法制定に向けて動き出します。
そのプロセスを追いかけたのが本作品なのですが、不思議なことにデモを引っ張るリーダーもいなければ、組織もないのです。こういう自然発生的なデモは、暴徒化したり空中分解したりするのが常なのですが、そうはならなかった。何故か。それは多くの女性が参加したことだ、と映画は教えてくれます。
「私たちを裁く家父長制 生まれた途端に裁き、罰を与える ご覧の通りの暴力で どこに居ても何を着ても私の罪じゃない どこに居ても何を着ても私の罪じゃない 暴力犯はお前! 警察官たち! 裁判官たち! 国家! 大統領! 抑圧国家は暴行犯!」
と、シュプレピコールを叫びながら、街頭に飛び出した女性たちの姿を描きます。
「デモの群衆の中でも特に存在感を放ったのが、チリの先住民マプーチェの旗だ。民族の尊厳を象徴する旗を掲げ、独裁政権下の憲法で否定された土地の権利回復など、先住民としての土地の権利を求める。また、デモに参加する女性たちが身につける緑のバンダナは、ラテンアメリカにおけるジェンダー暴力や中絶合法化運動などのフェミニズム運動を象徴するアイテムである。」と、柳原恵(立命館大学産業社会学部)は指摘しています。
チリの普通のおばちゃんが「家父長制なんか燃えちゃえばいいのよ」と笑いながらカメラに向かって言うところなどで、この運動が、政治家や政党主導ではないことが見えてきます。
さて、これからチリがどんな方向へ向かうのか。トランプ報道べったりの日本のメディアからの有意義な情報発信は望むべくもありません。もし、この映画をご覧になったら(アップリング京都で上映中)、ネット等で情報を集めてください。ちなみにこの運動の後、新しい国の指導者になったのは、ガブリエル・ボリッチ。36歳で就任したチリ史上最年少かつ世界で最も若い現職国会元首の誕生です。
レティシア書房ギャラリー案内
2025年 1/8(水)〜1/19(日)古本市
1/22(水)〜2/2(日)「口を埋める」豊泉朝子展
⭐️入荷ご案内
「京都町中中華倶楽部 壬生ダンジョン編」(825円)
「オフショア4号」(1980円)
青木真兵&柿内正午「二人のデカメロン」(1000円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
SAUNTER MAGAZINE Vol.7 「山と森とトレイルと」
いさわゆうこ「デカフェにする?」(1980円)
「新百姓2」(3150円)
青木真兵・光嶋祐介。白石英樹「僕らの『アメリカ論』」(2200円)
坂口恭平「自己否定をやめるための100日間ドリル」(1760円)
「トウキョウ下町SF」(1760円)
モノ・ホーミー「線画集2『植物の部屋』(770円)
古賀及子「気づいたこと、気づかないままのこと」(1760円)
いしいしんじ「皿をまわす」(1650円)
黒野大基「E is for Elephant」(1650円)
ミシマショウジ「茸の耳、鯨の耳」(1980円)
comic_keema「教養としてのビュッフェ」(1100円)
太田靖久「『犬の看板』から学ぶいぬのしぐさ25選」(660円)
落合加依子・佐藤友理編「ワンルームワンダーランド」(2200円)
秦直也「いっぽうそのころ」(1870円)
折小野和弘「十七回目の世界」(1870円)
藤原辰史&後藤正文「青い星、此処で僕らは何をしようか」
(サイン入り1980円)
YUMA MUKUMOTO「26歳計画」(再々入荷2200円)
モノホーミー「自習ノート」(1000円)
コンピレーション「こじらせ男子とお茶をする」(2200円)
牧野千穂「some and every」(2500円)
マンスーン「無職、川、ブックオフ」(1870円)
笠井瑠美子「製本と編集者」(1320円)
奈須浩平「BEIN' GREEN Vol.1"TOURISM"」
小野寺伝助「クソみたいな世界を生き抜くためのパンク的読書」(825円)
小野寺伝助「クソみたいな世界で抗うためのパンク的読書」(935円)