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レティシア書房店長日誌

オリバー・パーカー「二度目のはなればなれ」
 
 それぞれ2度のオスカー受賞経験を持つ、イギリスの名優マイケル・ケインとグレンダ・ジャクソンが、「愛と哀しみのエリザベス」以来50年ぶりに共演しました。 

 2014年夏、イギリスのブライトンの老人ホームで暮らす89歳のバーナード(マイケル・ケイン)とレネ(グレンダ・ジャクソン)夫婦は、穏やかに人生最期の日々を過ごしていました。ある日バーナードは、老人ホームの規則を破って、フランスのノルマンディーへの一人旅に出ます。そこではノルマンディー上陸作戦70年記念式典が行われるのです。彼は、戦時中に兵士として過酷なノルマンディーの戦場で、戦友を失ったこと、戦争に加担してしまったことに深い後悔を感じ、長い間苦しんでいました。戦争に駆り出された時から、二度とレネと離れないと約束していたバーナードでしたが、レネが彼の背中を押します。お互い歳をとっていて、心臓の弱いレネとどんな事故に巻き込まれるかわからないバーナードです。レネ自身も勇気のいる選択でしたが、必ず帰ってくることを約束をして…….。
 ちょっと頑固で、でも優しい老人をマイケル・ケインが、もうこれ以上の魅力はないというぐらいユーモアを持って演じています。ヨロヨロの老人が、海辺に向かって立っているだけでカッコよく見えてくるのです。
 若き日の作品「アルフィー」以来、ハリウッド映画スターにはないクールさとシニカルな雰囲気に魅了されて以来、彼が主演ならと劇場に通ったものでした。最近ではクリストファー・ノーラン監督の「インターステラー」で老いた天文学者の役が強く印象に残っています。ディラン・トーマスの有名な詩の一節”Do not go gentle into that good night”(穏やかな夜に身を任せるな。)を口癖にように語っていました。「穏やかな夜に身を任せるな。老いたならば、暮れゆく日に燃え上がり、怒るべきだ。消えゆく光に向かって、怒れ、怒れ。」と、死期の近づいた体に反抗するかの如く呟く演技に、惹きつけられました。
 「二度目のはなればなれ」について、ピーター・バラカンは「戦争報道では戦死者を統計として捉えてしまいがちですが、それぞれが一つの命です。
そして生き残った人にとって、戦争が終わってもそのトラウマは心の中で一生消えることがないでしょう。主人公2人の抑制の効いた演技からそんなことが、静かな感動と共に伝わってきます。」と評価しています。

 そう、この映画でマイケル・ケインは、バーナードの心に今もなお残っている戦争のトラウマを大げさにもならず、ゆっくりしたリズムで優雅に演じていきます。グレンダ・ジャクソンのシワを刻んだ顔も、とても美しくチャーミングで、深い味わいのある素敵な映画でした。

●レティシア書房ギャラリー案内
10/30(水)〜11/10(日)菊池千賀子写真展
虫撮りII」
11/13(水)〜11/24(日)「Lammas Knit展」 草木染め・手紡ぎ

⭐️入荷ご案内
GAZETTE4「ひとり」(誠光社/特典付き)1980円
スズキナオ「家から5分の旅館に泊まる」(サイン入り)2090円
「京都町中中華倶楽部 壬生ダンジョン編」(825円)
「オフショア4号」(1980円)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
青木真兵&柿内正午「二人のデカメロン」(1000円)
創刊号「なわなわ/自分の船をこぐ」(1320円)
加藤優&村田奈穂「本読むふたり」(1650円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
孤伏澤つたゐ「悠久のまぎわに渡り」(1540円)

森達也「九月はもっとも残酷な月」(1980円)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
TRANSIT 65号 世界のパンをめぐる冒険 創世編」(1980円)
SAUNTER MAGAZINE Vol.7 「山と森とトレイルと」

いさわゆうこ「デカフェにする?」(1980円)
「新百姓2」(3150円)
青木真兵・光嶋祐介。白石英樹「僕らの『アメリカ論』」(2200円)
「つるとはなミニ?」(2178円)
「ちゃぶ台13号」(1980円)
坂口恭平「自己否定をやめるための100日間ドリル」(1760円)
「ヴィレッジ・コード ニセコで考えた村づくりコード45」(1980円)
「トウキョウ下町SF」(1760円)

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