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レティシア書房店長日誌

矢萩多聞&吉田亮人「はたらく動物病院」
 
 数年前、京都在住の矢萩・吉田コンビによる「写真絵本はたらくシリーズ」が自費出版で刊行されました。そして今回、大阪の創元社から一般書籍として流通されるようになりました。
 第一作は、阪急水無瀬駅にある個性派書店「長谷川書店」が舞台。第二作が「はたらく中華料理店」、第三作「はたらく製本所」、第四作「はたらく図書館」、そして第五作が、今回取り上げる「はたらく動物病院」(新刊2420円)、第六作は「はたらく庭師」です。
 本シリーズの目的をこうありました。
「ぼくらの生活は、だれかの仕事のおかげで成り立っているはずなのに、彼らが日々なにを思い、どんなふうに暮らしているのかはあまり知りません。夜道で足をとめて星空を見上げるように、目の前を通りすぎるいろんな『はたらく』を見つめたい。大人も子どももおなじ地平に立って、はたらくってなんだろう、と考えてみる。そんなふうにして、このシリーズをつくりたいとおもいます」
 「はたらく動物病院」は、京都市上京区にある「上京どうぶつ病院」です。ご夫婦でされている動物病院です。朝早くから夜遅くまで動物のためにはたらく、町の小さな動物病院の一日が矢萩さんの文章と吉田さんの写真で描かれます。
 

「ひる12時 午前の診察はおしまい 安川先生(当病院の先生です)はインスタントみそ汁を ごはんに ぽん やかんのお湯をかけて ねこまんまをすすります」安川先生が正座して、ねこまんまをすすっている姿が写真になっています。なんか微笑ましい!
「どの犬も 猫も それぞれの家族との物語があります 
であいと わかれ よろこびと かなしみー
なにげない でも かけがえのない 毎日の風景が ぽろりぽろぽろ こぼれてきます」ここで治療中の犬や猫の何気ない表情の写真と、この文章が同居しています。みんな幸せになってねと言葉をかけたいページでした。
 本書と一緒に矢萩さんの「本とはたらく」、「美しいってなんだろう」、「本の縁側」、そして吉田さんの「しゃにむに写真家」も一緒に並べました。私はすべて読みましたが、とてもユニークで、面白くて、笑わせてくれて、でも素敵な人生を送っているなぁと思いました。
 矢萩さんは京都新聞「現代のことば」でもコラムを持たれています。その中で、台北アートブックフェアに参加した時のことが書かれていました。そこに立ち寄った人類学者と話が盛り上がり、彼が帰り際に矢萩さんに言った言葉が「あなたたちの人生は美しい」でした。本人は、そんなこと言われたことがないので、照れ笑いしかできなかったそうです。
 コラムは「人との出会いが本をつくらせ、本が人と出会わせる。そうして、また本をつくる。」という文章で締めくくられています。

レティシア書房ギャラリー案内
2/19 (水)〜3/2(日)「あっこランド」ちいさな絵とちいさなお人形
3/5(水)〜3/16(日) まるぞう工房展
3/19(水)〜3/30(日)絵本「いっぽうそのころ」原画展

⭐️入荷ご案内
「京都町中中華倶楽部 壬生ダンジョン編」(825円)
「新百姓2」(3150円)
坂口恭平「自己否定をやめるための100日間ドリル」(1760円)
モノ・ホーミー「線画集2『植物の部屋』(770円)

comic_keema「教養としてのビュッフェ」(1100円)
折小野和弘「十七回目の世界」(1870円)
藤原辰史&後藤正文「青い星、此処で僕らは何をしようか」
(サイン入り1980円)
コンピレーション「こじらせ男子とお茶をする」(2200円)
牧野千穂「some and every」(2500円)
マンスーン「無職、川、ブックオフ」(1870円)
笠井瑠美子「製本と編集者」(1320円)
奈須浩平「BEIN' GREEN Vol.1"TOURISM"」(1300円)
小野寺伝助「クソみたいな世界を生き抜くためのパンク的読書」(825円)
佐々木みつこ「戦前生まれの旅する速記者」(1980円)

山口史男「植物群のデザイン」(1650円)
万城目学「新版座・万字固め」(1870円)
和山弘子「WADDLE YA PLAY」(1760円)
万行紗衣「奥能登地震生活記」(2300円)
モノ・ホーミー「頭蓋骨を散歩する」(1320円)
green birds「book like spotlight vol2」(500円)
清田隆之「戻れないけど、生きるのだ 男らしさのゆくえ」(2090円)
堂本かおる「絵本戦争」(2970円)
武田裕煕&最相葉月「口笛のはなし」(2200円)
「アルテリ19号」(1320円)
「book like spotlight02」(500円)
「いろいろな本屋のかたち」(1650円)
「コトノネ53号 特集『マンガ』でひらくドア」(1100円)




 

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