見出し画像

レティシア書房店長日誌


 落合加依子・佐藤友理編「ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活」

 東京・国立市にある小さな出版社&書店の「小島書房」から、素敵な新刊が届きました。落合加依子・佐藤友理編「ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活」(2200円)です。

 ひとり暮らしの生活をちょっと見せていただくということで、職業も住む場所も多種多様な(京都の方も登場します)100の部屋の雰囲気を伝えています。素敵な写真と、文章で構成されています。中途半端なインタビューでお茶を濁すようなことはせずに、その部屋の主人がきちんと文章を書いているのが魅力です。例えば、こんな具合です。
 「汗だくで目が覚めた。部屋のエアコンが止まっていて、前の住人が残していった薄いカーテンからは、午前の日差しが容赦なく降り注いでいる。窓を開け放ち、キッチンに移動して頭から水をかぶって部屋を振り返ると、梅シロップの瓶が陽を浴びて光っている。白い気泡はプツプツと微細な音を立てており、テレビの無いこの部屋の夜は、だれかのつぶやき声にも聞こえる。」
 なんだか、いい雰囲気の都会派短編小説の出だしみたいですね。清潔感があり明るく、心地よい風が通るような部屋です。住んでいるのは、仙台で文化施設にお勤めの方です。趣味欄に「わな猟師」と書いてありました。どの県に住んでいて、何をしているか等の最低限の情報が書き添えられていて、ここから通勤しているんだな、と想像が膨らみます。
 本屋の店主は、きっと本だらけの部屋だろうと思ったら、壁には何もない。ベットから壁を写した写真が載っていますが、「プロジェクターで何かを写したみたい」というキャプションの通り、真っ白なのです。いや、ここまでいくと、潔よし!ですね。
 「この辺りは飛行機が頻繁に飛んでいく。飛行機の音が聞こえてくると、何か考え事をしていても一旦それを止めるようにしている。音が遠のいていて完全に聞こえなくなるまで、何も考えずただ耳を澄ませる。ここに住み始めてからこの習慣ができた。特に意味はない。毎日だいたい朝9時くらいから聞こえてくるから、まどろみの中でただ飛行機の音を聞く。起きるきっかえになることもあれば、再び寝入る事もある。」
 いいですね〜。もし私が映画監督なら、白い壁、遠くに聞こえるジェット音、降り注ぐ陽光、幸せそうに眠る主人公の寝顔をワンカットに捉えると思います。
 なぜ他人の部屋って見ていて楽しくなるのだろう?本書の編集者、佐藤友理は巻頭のエッセイで、こんな文章を書いています。
 「生きていればまあいろいろあって、今日は明日になればすぐ昨日になって、そうして暮らしは続いてゆく。部屋は、言葉を話すわけじゃない。でもありったけの息を吸って暮らすわたしたちを、静かに見守ったり叱ったりしているのかもしれない。記憶も匂いもそこに残って、見慣れたはずの毎日の隙間に、あの恋やあの会話、さみしさ、まばゆさが染みついている。」
 同時に、小鳥書房のZINE「『犬の看板』から学ぶ いぬしぐさ25選」(660円)も入荷しました。犬派なら、マストの一冊。

●レティシア書房ギャラリー案内
11/27(水)〜12/8(日)「ちゃぶ台 in レティシア書房」ミシマ社
12/11(水)〜12/22(日)「草木の色と水の彩」作品展

⭐️入荷ご案内
GAZETTE4「ひとり」(誠光社/特典付き)1980円
スズキナオ「家から5分の旅館に泊まる」(サイン入り)2090円
「京都町中中華倶楽部 壬生ダンジョン編」(825円)
「オフショア4号」(1980円)
青木真兵&柿内正午「二人のデカメロン」(1000円)
創刊号「なわなわ/自分の船をこぐ」(1320円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
SAUNTER MAGAZINE Vol.7 「山と森とトレイルと」

いさわゆうこ「デカフェにする?」(1980円)
「新百姓2」(3150円)
青木真兵・光嶋祐介。白石英樹「僕らの『アメリカ論』」(2200円)
「つるとはなミニ?」(2178円)
「ちゃぶ台13号」(1980円)
坂口恭平「自己否定をやめるための100日間ドリル」(1760円)
「トウキョウ下町SF」(1760円)
モノ・ホーミー「線画集2『植物の部屋』(770円)

モノ・ホーミー「2464Oracle Card」(3300円)
古賀及子「気づいたこと、気づかないままのこと」(1760円)
いしいしんじ「皿をまわす」(1650円)
黒野大基「E is for Elephant」(1650円)
ミシマショウジ「茸の耳、鯨の耳」(1980円)
comic_keema「教養としてのビュッフェ」(1100円)
太田靖久「『犬の看板』から学ぶいぬのしぐさ25選」(660円)
落合加依子・佐藤友理編「ワンルームワンダーランド」(2200円)
秦直也「いっぽうそのころ」(1870円)
折小野和弘「十七回目の世界」(1870円)

いいなと思ったら応援しよう!