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レティシア書房店長日誌

「没後50年 香月泰男のシベリアシリーズ」展

 先週、山口県立美術館で開催されている「没後50年 香月泰男のシベリアシリーズ」展に行ってきました。京都から、新幹線とローカル線で約2時間半、山口駅に到着。商店街を抜けて約15分、落ち着いた佇まいの美術館へ。
 香月泰男は(1911年〜1974年)は、山口県出身の洋画家。1942年、招集され満州へ出兵します。1945年、ソビエトに抑留され、シベリア、クラスノヤルスク地区のセーヤ収容所で厳しい強制労働に従事しますが、多くの同僚が抑留中に死んでいきます。この体験が、その後の彼の重要な作品、シベリアシリーズになっていきます。今回、同美術館でシベリアシリーズ全57点、その軌跡を辿る展示が催されました。
 

シベリアシリーズ「北へ西へ」

 1947年に帰国後、生きるか死ぬかの一歩手前までいった抑留生活の苦しさと望郷の思い、そして手当もなく死んでいった同僚の兵士たちの悲しみを描き続けます。生気のない無表情の人物が並んだ作品を見ていると辛くなるのですが、絵が発する力にやはり足が止まります。モノクロに近い暗い色合いの作品から、やっと帰国できる!という、ナホトカの港の海の青さが目にしみました。
 店の在庫には香月に関する本がいくつかあり、その中の一冊、平松達夫著「戦場へ行った絵具箱 香月泰男のシベリア・シリーズを読む」(古書2200
円)には、招集、敗戦、抑留、帰国、そして戦後、画家としての活動が詳しく書かれています。また、「香月泰男画文集 <私>の地球』(古書2800
円)には、シベリアシリーズが収録されていて、自身のこんな文章がありました。
 「私はいま、シベリアで幾夜夢に見続けた、自分の生まれ育った山口県の三隅町に住んでいる。周囲の山の彼方に五つの方位がある。ホロンバイル、シベリヤ、インパール、ガダルカナル、そしてサンフランシスコ。いまわしい戦争にまつわる地名に囲まれた小さな町。ここが私の空であり、大地だ。
ここで死にたい。ここの土になりたいと思う。思い通りの家の、思い通りの仕事場で絵を書くことができる。それが私の地球である。」(六十歳記/1971年)シベリアの一連の作品を見て、戦争が画家に残した深い傷を知り、改めて戦争の惨さを知りました。
 山口駅の隣JR湯田温泉駅に、中原中也記念館があります。「中也とランボー、ヴェルレーヌ」という企画展が開催中でした。中也に大きな影響を与えたフランス象徴派の詩人、アルチュール・ランボーとポール・ヴェルレーヌ。中也は17歳のときに彼らの詩に出会い、魅了されます。二人の詩人の影響が中也の作品にどのように影響を与えたか、また中也の翻訳の魅力に迫る企画展でした。滅多に見られない本も展示されていて、こちらはのんびり見て回りました。JR湯田温泉駅前には、大きな白い狐。バックの青空と相まっていい感じです。が、とにかくめちゃくちゃ暑かった……。

JR湯田温泉駅

●レティシア書房ギャラリー案内
8/10(土)〜本日まで 待賢ブックセンター古本市
8/21(水)〜9/1(日) 「わたしの好きな色」やまなかさおり絵本展
9/4(水)〜9/15(日) 中村ちとせ 銅版画展

⭐️入荷ご案内
子鹿&紫都香「キッチンドランカーの本2」(660円)
些末事研究vol.9-結婚とは何だろうか」(700円)
夕暮宇宙船「小さき者たちへ」(1100円)
「超個人的時間紀行」(1650円)
柏原萌&村田菜穂「存在している 書肆室編」(1430円)
「フォロンを追いかけてtouching FOLON Book1」(2200円)
庄野千寿子「誕生日のアップルパイ」(2420円)
稲垣えみ子&大原扁理「シン・ファイヤー」(2200円)
くぼやまさとる「ジマンネの木」(1980円)
おしどり浴場組合「銭湯生活no.3」(1100円)
岡真理・小山哲・藤原辰史「パレスチナのこと」(1980円)
GAZETTE4「ひとり」(誠光社/特典付き)1980円
スズキナオ「家から5分の旅館に泊まる」(サイン入り)2090円
向坂くじら「犬ではないと言われた犬」(1760円)
「京都町中中華倶楽部 壬生ダンジョン編」(825円)
坂口恭平「その日暮らし」(ステッカー付き/ 1760円)
「てくり33号ー奏の街にて」(770円)
「アルテリ18号」(1320円)
「オフショア4号」(1980円)
ススキナオ「家から5分の旅館に泊まる」(サイン入り2090円)

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