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レティシア書房店長日誌

橋本亮二「音と言葉の日々」
 
 「十七時退勤社」という、ワークマンなら大賛成!という声が聞こえてきそうな名前の個人出版社があります。その代表の橋本亮二の本と出会ったのは、2019年に出された「うもれる日々」でした。本に、そして本とともに生きる人たちに対する、愛情に満ちた素敵なミニプレスでした。当店では笠井瑠美子著「製本と編集者vol1,2」、日野剛広著「本屋なんか好きじゃなかった」を同社から仕入れ、完売しました。そして2023年、「音と言葉の日々」(1210円)が出ました。どんどん音楽を聴いて、どんどん本を読んで、 日々の幸福を言葉で綴った、とても気持ちの良い一冊。
 

 著者は、様々な本のイベントに参加していきます。中にはタイトなスケジュールの強行軍もありますが、ルンルン気分で飛び込んでゆくのです。岩手県一ノ関では、地元のスーパーに興味津々で、「知らない町に来たらスーパーめぐりをしたい」とイベントの合間に向かいます。
 本のことだけでなく、自分の子供たちとの暮らしの些細なことも丁寧に取り上げていて、著者の人となりがわかってきます。
 「東日本大震災が発生した時、娘は四歳、息子は一歳だった。十年が経ち、娘は中学三年生でまもなく高校受験、息子も来春から中学生となる。きっと、日々問いを持ち続けている。大きくなるにつれ、不思議から疑問に変わるかもしれない。世界の外側へ向けること、自身の内面に向けることも成長につれて変わっていくだろう。幼い頃は問いへの真摯な答えをもらえず、泣いてその不満を示したり、まるめこまれてその問いを畳んで自身の内へしまったこともあるはずだ。成長していくと、問いは膨らんでいく。同時に問いを持つことを放棄することもあるかもしれない。一つひとつの問いに水遣りと養分をあげる大人が周りにいるかどうか、教育において一番大事なことだと思う。自分はそうやれているか。取り返しがつかないが、まったくできておらずに後悔しかない。」
 子どもの心に生じた疑問を、大人が上手により広い世界へと導いてゆくという考え方は大事だと思いました。90ページほどの薄い本ですが、とても心に残る一冊でした。

●レティシア書房ギャラリー案内
5/8(水)〜5/19(日)ふくら恵展「余計なことかも知れませんが....」
5/22(水)〜6/2(日)「おすよ おすよ」よしだるみ新作絵本出版記念原画展
6/5(水)〜6/16(日)村瀬進個展
6/19(水)〜6/30(日)書籍「草花の便り」出版記念原画展 西山裕子

⭐️入荷ご案内モノ・ホーミー「貝がら千話7」(2100円)
野津恵子「忠吉語録」(1980円)
坂巻弓華「寓話集」(2420円)
村松圭一郎「人類学者へのレンズ」(1760円)
きくちゆみこ「だめをだいじょうぶにしてゆく日々だよ」(2090円)
森田真生「センス・オブ・ワンダー」(1980円)
友田とん「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する3 先人は遅れてくる」(1870円/著者サイン入り!)
川上幸之介「パンクの系譜学」(2860円)
町田康「くるぶし」(2860円円)
Kai「Kaiのチャクラケアブック」(8800円)
安西水丸「1フランの月」(2530円)
早乙女ぐりこ「速く、ぐりこ!もっと速く!」(1980円)
上野千鶴子「八ヶ岳南麓から」(1760円)
島田潤一郎「長い読書」(2530円著者サイン入り)
つげ義春「つげ義春が語る旅と隠遁」(2530円)
山本英子「キミは文学を知らない」(2200円)
たやさないvol.4「恥ずかしげもなく、野心を語る」(1100円)
花田菜々子「モヤ対談」(1870円)
子鹿&紫都香「キッチンドランカーの本」(660円)
夏森かぶと「本と抵抗」(660円)


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