レティシア書房店長日誌
「星の道夫 悠久の時を旅する」
久々に、星野道夫写真展が京都で開催されています。自分で本屋をやってみたかったのは宮沢賢治と星野道夫の本を置きたかったんだ、ということは以前にもブログで書いた覚えがあります。しかし、いつから星野道夫に心酔していたのかは覚えていません。20年以上前に大型書店の店長をしていた時、可愛い犬猫の写真集を置かず、星野の写真集を大展開して本部の商品部から白い眼で見られていました。ということは、その頃から追いかけていたのかもしれません。
「無窮の彼方へ流れゆく時を、めぐる季節で確かに感じることができる。自然とは、なんと粋なはからいをするのだろうと思います。一年に一度、名残惜しく過ぎてゆくものに、この世で何度めぐり合えるのか。その回数をかぞえるほど、人の一生の短さを知ることはないのかもしれません」
これは著書「旅をする木」の中の文章ですが、長男の翔馬さんは、「新版悠久の時を旅する」(新刊2750円)で、父の文章の中では好きな一節だと述べて、こう続けています。
「春の風に感じる甘い匂いや、日が短くなってゆく夏の夕方など、私たちが日々生きる中で、ふと、新たな季節の訪れを感じさせる場面があります。それは人々に様々な想いを起こさせ、時に流れを感じさせるものでしょう。普段何気なく接している感覚を、父は優しく思い起こさせてくれると感じます。その語りかけてくれる大切な感覚は、きっと有限の時間で生きることの美しさなのだと思います。」
厳しい自然の中で、雄大な風景の中で、生きる動物たちの一瞬を見事にフィルムに収めた作品に深い感動を覚えるのは、「有限の時間で生きることの美しさ」がそこにあるからだと思います。何度見ても、驚きと感動をもたらすのは、そこに、その一瞬を生きている輝きがあるからです。
「この旅は、僕にひとつのことを教えてくれた。それは、こんな地の果てと思っていた場所にも人の生活がある、というあたり前のことだった。人の暮らし、生きる様の多様性に魅かれていった。どんな民族であれ、どれだけ異なる環境で暮らそうと、人間はある共通する一点で何も変わらない。それは、だれもがたった一度のかけがえのない一生を生きる、ということだ。世界はそのような無数の点で成り立っている、ということだ。」
これは、星野が初めてアラスカシシュマレフ村で数ヶ月滞在した19歳時の言葉です。彼の原点です。見たことのある方も、まだ見たことのない方も、この機会にぜひ展覧会で大きな作品に会ってほしいと思います。
(写真展は30日まで)
●レティシア書房ギャラリー案内
9/18(水)〜9/29(日) 飯沢耕太郎「トリロジー冬/夏/春」刊行記念展
10/7(水)〜10/13(日) 槙倫子版画展
10/30(水)〜11/10(日)菊池千賀子写真展「虫撮り2」
⭐️入荷ご案内
子鹿&紫都香「キッチンドランカーの本3」(660円)
おしどり浴場組合「銭湯生活no.3」(1100円)
岡真理・小山哲・藤原辰史「パレスチナのこと」(1980円)
GAZETTE4「ひとり」(誠光社/特典付き)1980円
スズキナオ「家から5分の旅館に泊まる」(サイン入り)2090円
「京都町中中華倶楽部 壬生ダンジョン編」(825円)
坂口恭平「その日暮らし」(ステッカー付き/ 1760円)
「てくり33号ー奏の街にて」(770円)
「アルテリ18号」(1320円)
「オフショア4号」(1980円)
「うみかじ9号」(フリーペーパー)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
青木真兵&柿内正午「二人のデカメロン」(1000円)
創刊号「なわなわ/自分の船をこぐ」(1320円)
加藤優&村田奈穂「本読むふたり」(1650円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
孤伏澤つたゐ「悠久のまぎわに渡り」(1540円)
森達也「九月はもっとも残酷な月」(1980円)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
TRANSIT 65号 世界のパンをめぐる冒険 創世編」(1980円)