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レティシア書房店長日誌

パブロ・ベルヘル監督「ロボットドリームス」
 
 
この映画のことを思い出して、観終わった後の帰り道、とても幸せな気持ちで胸一杯になるアニメ映画です。
 スペインのパブロ・ベルヘル監督が、初めて手がけた長編アニメーション映画。アメリカの作家サラ・バロンによる同名のグラフィックノベルを原作に、1980年代のニューヨークで、犬とロボットが織りなす友情を、セリフやナレーションなしで描いていきます。
 物語の舞台には人間は登場しません。住んでいるのはあらゆる種類の動物たちで、歩き、仕事をし、生活を楽しんでいます。そんな中で、マンションで一人暮らしをする犬にカメラが近づいていきます。孤独な夜、なんとなく点けたTVの番組でとあるCMに心動かされます。それは、お友達になってくれるロボットの販売広告でした。早速、彼は注文します。
 数日後、犬の元に大きな箱が到着します。早速説明書を片手に組み立てたロボットと一緒に、彼は外に飛び出していきました。セントラルパーク、エンパイアステートビル、クイーンズボロ橋等々、ニューヨークの名所を巡りながら、犬とロボットは友情を育んでいきます。ローラースケートを履いて、アースウィンド&ファイアの名曲「セプテンバー」をバックミュージックに二人が踊るシーンは幸福感でいっぱいで、こちらにもその気分が伝わってきます。

 しかし夏の終わり、海水浴を楽しんだ後にロボットは錆びて動けなくなります。運んで帰るにはあまりに重い。出直して浜辺に行ったのですが翌年の夏まで閉鎖されていて、入ることはできません。映画は1時間40分ぐらいの長さですが、始まってここまで40分くらい。ここから、二人が再会を心待ちにしながら、それぞれの時を過ごしてゆく様が描き出されていきます。
 ロボットは、何度も犬の家に戻る夢を見ます。その一方で、犬は偶然知り合ったアヒルと仲良くなり遊びに行ったりしますが、やがて彼はまたひとりぼっちになってしまいます。そして夏、待っていた海開き。犬は真っ先に、ロボットを置き去りにした海岸に飛んでいくのですが………。
 この二人の再会は、哀しく切ないものでした。けれど映画は、二人の今の幸せな姿を描いたところで幕を閉じます。その幸せの余韻を慈しむように劇場を後にしました。
 物語も絵も極限までシンプルなのに、表情があまりに豊かなので、感情が伝わってきます。人間が演じるよりも、感情移入してしまいました。名曲「セプテンバー」が、物語の深まりとともに、深い意味合いを持ってくるところもうまい。ラストに曲がかかったらもう涙が止まりません。音楽の力って凄い!見終わって、パンフレット買おうと思ったらなんと完売!チラシも無い。パンフ完売なんて、「パーフェクトディズ」以来でした。もし、劇場にあれば、先に買うべし!

●レティシア書房ギャラリー案内
11/13(水)〜11/24(日)「Lammas Knit展」 草木染め・手紡ぎ・手編み
11/27(水)〜12/8(日)「ちゃぶ台 in レティシア書房」ミシマ社
12/11(水)〜12/22(日)「草木の色と水の彩」作品展

⭐️入荷ご案内
GAZETTE4「ひとり」(誠光社/特典付き)1980円
スズキナオ「家から5分の旅館に泊まる」(サイン入り)2090円
「京都町中中華倶楽部 壬生ダンジョン編」(825円)
「オフショア4号」(1980円)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
青木真兵&柿内正午「二人のデカメロン」(1000円)
創刊号「なわなわ/自分の船をこぐ」(1320円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
SAUNTER MAGAZINE Vol.7 「山と森とトレイルと」

いさわゆうこ「デカフェにする?」(1980円)
「新百姓2」(3150円)
青木真兵・光嶋祐介。白石英樹「僕らの『アメリカ論』」(2200円)
「つるとはなミニ?」(2178円)
「ちゃぶ台13号」(1980円)
坂口恭平「自己否定をやめるための100日間ドリル」(1760円)
「ヴィレッジ・コード ニセコで考えた村づくりコード45」(1980円)
「トウキョウ下町SF」(1760円)
モノ・ホーミー「線画集2『植物の部屋』(770円)

モノ・ホーミー「2464Oracle Card」(3300円)
古賀及子「気づいたこと、気づかないままのこと」(1760円)
いしいしんじ「皿をまわす」(1650円)
黒野大基「E is for Elephant」(1650円)
ミシマショウジ「茸の耳、鯨の耳」(1980円)
comic_keema「教養としてのビュッフェ」(1100円)



 


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