本屋七転八倒記(仮)

本屋になりたかった

小2のとき、将来の夢に「ほんやさんになりたい」と書いた。
教員を辞めてバイトした本屋で、「ここでずっと働けたらいいな」と思った。
「敷島、本の森」で個人書店・古書店を営む人たちを見て、「私もそれをやりたい」と強く感じた。
ずっと本屋になりたかった。

書店で正社員として働いた経験はない。
ものすごく本に詳しいわけでもない。
成人して以降は、精神的に低調な時期が長く、本好きと言えるほどの読書量もない。
ただ憧れを貯金に変えてちびちび積み上げ、5年勤めた会社をえいやっと辞めて、今年5月に店をオープンさせた。
私は本屋になった。夢を叶えた。
それは間違いない。のだが。

本屋、途方に暮れる

そりゃそうだと言われる気しかしないが、自分の店を始めるというのはたいへんなことだ。
まことにたいへんなことだったのだ。
わかった上で始めたつもりだったのに、始めてからたぶん毎日改めて「どうしたらいいんだ」と呟いている。

お客さんが来ない日。
「何やってるかわからなくて入りづらい」と言われたとき。
店の名前を間違えられるとき(結構多い)。
想定よりいっぱい来ちゃった仕入れ代の請求。
それなりに張り切って行ったのに思いきりコケた創業スクールの最終プレゼン。

日々刻々と、リアルタイムで、うずたかく積み上がる煩悶。焦り。
もっとかっこいい店にしたいのに。
どうすればみんな来てくれるんだろう。
来月の支払いは果たして乗り切れるのか。
その先は?
こんなんじゃだめだ。
ごめんなさい。私があさはかでした。ごめんなさい。

とそんな感じでどん底状態にしばしば陥り、それでも母や友人知人、お客さんに見守られ、励まされ、4ヶ月なんとか店を続けている。
大きなことを言ったと思ったら早々に音を上げているわけで、各方面に恥ずかしく申し訳ないことこの上ないが、どうせ迷惑をかけるのならできるだけ素直で朗らかであろう、と心がけている(まだ十全にできているとは言いがたいけれど)

「書く」くらいしかできることがない


一日の大半を悶々としていると、毎日がまるで掌から砂がこぼれるように過ぎていってしまう。
このままではだめなんじゃないか、と思ったとき、私には「書く」ことくらいしかできることが思いつかなかった。

つらいとき、悩んだとき。
ときには面白い本を見つけたり、うれしいことがあるかもしれない。
他の人が読んで楽しめるようなものには今のところならなそうだが、とにかく書くことでなにか、考えがまとまって、新しい出会いや気づきがあるのではないか。
ただ単に心細くて、だれかが見ているところで吐露しないとやってられないだけかもしれないけど。

ともかく書こうと思います。それなりに得意だと言えることは今のところ書くことくらいしかなく、へこたれずに働くためにはなにかしらの達成感を得つつトライ&エラーしていく必要がある。
おまじないみたいなものだ。なるべく素直な心持ちで、祈るように書く。なんとかなる。なんとかする。


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