発達障害と運動
発達障害と運動指導に関心があり、スポーツ指導者の視点から参考になる情報がなかなかなかったので、2020年、専門家と共著で書籍「発達が気になる子が輝く柔道&スポーツの指導法」を制作しました。
その関係で、一昨日、2025年1月26日(日)、静岡県掛川市にて、心結館が主催した「発達が気になる子が輝く為の指導法ワークショップ」に参加させていただき、他の講師とともにお話をさせていただきました。
2022年12月の文部科学省の調査によると、小中学校の通常の学級において、特別な教育的支援を必要とする子供は8.8%。
以下の3点で困難がある子供を調査したもので、
行動面:「不注意」「多動性‐衝動性」
行動面:「対人関係やこだわり等」
学習面:「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」
上から、注意欠如多動症、自閉スペクトラム症、限局性学習症の特性になっています。なお、この調査は発達障害の有無についての調査ではなく、あくまで教師の視点から困難がある子供についての調査であり、8.8%というのは発達障害のある子供の数を表しているわけではありません。
発達障害というと、上記のように行動面や学習面の課題がクローズアップされますが、注目すべきは、多くの子供達が身体の不器用さを有していること。
発達性協調運動症(DCD)と言いますが、自閉スペクラム症の約8割、注意欠如多動症・限局性学習症の約5割に、身体の不器用さがみられるという調査があります。
これまでは、子供の不器用さに気づいても、この子はちょっと不器用だ、と思う程度でスルーされてきたのですが、近年の研究などから、不器用さの悪影響が明らかになってきました.。
不器用さに起因して、学校に行くことができなくなった事例。
不器用さによって、どのように精神面に悪影響が生じるのか、DCDマニュアル(p83)から抜粋すると、
「鉄棒、マット運動、ボール運動、徒競走など、他の子どもよりも動作が遅く、不正確になってしまうため・・それを友達から笑われたり、馬鹿にされたり、真似をされたりすることが、傷つき体験となる」
「教師からの評価として、・・やる気がない、さぼっている、真剣に取り組んでいない、というように判断され、・・また日常の場所移動、着替え、給食などにも他児より時間がかかり、不真面目だと評価される場合があります」
「体育大会での全体行動やクラスリレー、音楽会での集団での楽器演奏などの時には、同級生やときに教師から「足を引っ張っている」、「負けたのは〇〇のせい」というように、うまくいかなかった結果の責任を追及されたりする」
「・・うまくいかなかったときに、笑ってごまかすようになり、物事に真剣に取り組まなくなる場合があります。また学校への適応状況が悪くなり、不登校になったり、チャレンジング行動が目立ったりする」
などなど。
大事なことは、先に挙げた子供の学習面や行動面の課題が、身体面の課題から生じている側面があるのではないか、つまり、運動して身体がもっと良く動くようになったら行動面や学習面の課題が改善する側面があるのではないか、という視点をもつことです。
文部科学省の幼児育成指針は、毎日、合計60分以上、楽しく体を動かすことを推奨しています。いろいろな心配があって、思いめぐらすことがたくさんあるなかで、「この子は、この一週間、どれぐらい楽しく身体を動かしたかな?」「運動がたりなかったのではないかな?」と考えること。
例えば、やんちゃだった子供がスポーツを始めたら落ちいてきた、というのはスポーツ指導の現場でよく見られたことですが、近年の研究では、ADHDの衝動性が有酸素運動によって改善されることが示されています。
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「・・運動すると気分がスッキリすることは誰でも知っています。けれどもなぜそうなるのかわかっている人はほとんどいません。本書は「運動と脳」の関係に神経科学の視点から初めてしっかりとメスを入れ、運動するとなぜ学習能力が上がるのか──のみならず、ストレス、不安、うつ、ADHD、依存症、ホルモン変化、加齢といった人間の生活・人生全般に影響を及ぼすのか、運動がいかに脳を鍛え、頭の働きを取り戻し、気持ちを上げるかを解き明かします。」という本です。
女川でこのテーマでの勉強会をいずれ開催できたらと思っています。