letter from books selva01

 あぁ、売れないなぁ……。海外小説を並べた棚を見て、本には悪いと思いつつ、こんな言葉が漏れる。しかし、どうしても発注してしまう。強風のなか、手巻きタバコを巻いてしまうような感覚だ。運が悪いと、葉っぱが飛んでいってしまう。
 こりゃ、おもろい、と最初に感じた海外の小説は、『ラ・カテドラルでの対話』。ノーベル賞作家、バルガス=リョサの「独裁政権下ペルーの腐敗しきった社会の現実を多面的に描き出」(岩波ホームページ)した長編。「これまでに書いたすべての作品の中から一冊だけ,火事場から救い出せるのだとしたら,私はこの作品を救い出すだろう」(バルガス=リョサ)。おすすめは、旦敬介氏訳の岩波文庫版。文体について、旦氏は「ひとつの句点にいたるまでの過程で、話法がつぎつぎに変化して、激しく文の視点が運動しているのだ。彼のやっていることは(…)きわめてダイナミックな話法すなわち視点の運動」と解説。「自由間接話法の楽しみを生かすことを試みたのが今回の翻訳」という。最初は読みにくかったが、読み進めていくうちに良い波に乗っているかのように物語に引き込まれていく。この本をきっかけに、さまざまな国の小説に手を出した。チベット、アルバニア、ルーマニア……。どれも、それぞれの味わいがある。もちろん、さっぱり意味がわからない本もあったが、それはそれで良し。数年後にはわかるかもしれないし、わからなさも、本の醍醐味だ。

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