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『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか? 読むだけで「会計センス」が身につく本!』林 總
概要
本書は、会計の知識を身につけるための入門書でありながら、ストーリー形式で楽しく学べる内容が特徴です。主人公の矢吹雪は、突然父の跡を継いでアパレル会社「HANNA」の社長となり、経営の困難に直面します。隣人である公認会計士の吾妻の助けを借りながら、会計を学び、経営を立て直していく姿が描かれます。専門的な用語や概念が、日常の例え話やストーリーを通じて解説されているため、初心者でも理解しやすい構成です。キャッシュフロー管理や損益分岐点、在庫の重要性など、ビジネスに必要な知識が詰まっています。特に、中小企業の経営者や会計を学びたいビジネスパーソンにとって、実践的で役立つ一冊です。
本のジャンル
ビジネス、自己啓発
要約
1. 突然の社長就任と吾妻との出会い
物語は、主人公の矢吹雪が父の急逝によって、アパレル会社「HANNA」の社長に就任するところから始まります。経営について何も知らない雪は、会社の低迷に苦しみます。銀行からはリストラを迫られ、社員からも孤立。そんな雪を救ったのが隣人の公認会計士、吾妻でした。吾妻は「会計を学べば経営が見えてくる」と助言し、雪に基礎から教え始めます。この物語の核となるのは、雪が会計の知識を習得し、それを経営に活かして会社を再建するまでのプロセスです。
2. 決算書は「化粧された真実」
吾妻は決算書の本質について「決算書は会社の真実を表しているようで、実際には『化粧』されたものである」と説明します。例えば、利益が出ているように見えても、キャッシュフローが赤字であれば会社は資金繰りに困窮します。吾妻は、「経営者は決算書を数字そのものとして受け取るのではなく、その裏側にある真実を見抜く能力が必要だ」と強調します。これは、経営における数字の読み方を学ぶ重要性を示しています。
3. 在庫の管理とキャッシュフローの改善
築地の料亭での会話を通じて、吾妻は「在庫管理の重要性」を教えます。寿司屋を例に、大トロは仕入れ値が高く、売れるまでに時間がかかるため、資金が「寝て」しまう。一方、小肌は仕入れたその日に売れるため、現金の回転率が高い。この概念を理解した雪は、自社の在庫過多の問題に気づき、ブランドと製品の種類を絞ることで、在庫削減に取り組みます。この取り組みが、資金繰りの改善と業績回復の第一歩となりました。
4. 餃子屋と高級フレンチの利益構造
吾妻は「餃子屋」と「高級フレンチ」を例に、限界利益と固定費の概念を説明します。餃子屋は薄利多売で固定費が低い一方、高級フレンチは高単価ですが固定費が高く、売上が損益分岐点を超えると利益が大きく増えます。しかし、売上が損益分岐点を下回ると、一気に赤字になるリスクもあります。この違いを学んだ雪は、HANNAを「固定費が少なく、限界利益率が高いビジネスモデル」に変えることを目指しました。
5. キャッシュフロー管理の重要性
吾妻はキャッシュフローを「水槽と蛇口」に例えます。水槽にたまった水は営業キャッシュフローであり、蛇口から出る水は投資キャッシュフローや財務キャッシュフローです。吾妻は、「経営者の仕事は蛇口から水を効率よく出し入れすること」だと説きます。雪はこの考え方を基に、過剰な借り入れを控え、営業キャッシュフローを黒字化する計画を立てました。この学びは、父の時代に行われていた非効率な資金運用の反省点ともなりました。
6. 中国進出の判断基準
生産コスト削減のための中国進出案について、吾妻は「キャッシュフローの現在価値を基に判断すべき」と助言します。中国での生産は一度に大量の在庫を発注する必要があり、資金の寝かせ期間が長くなるリスクがあります。この点を考慮し、雪は国内生産を維持することを決定しました。この判断は、キャッシュフローの効率化を最優先にしたものです。
7. 経営の最適化と会社再建
雪は吾妻の指導を受けながら、会計を基にした経営の最適化を進めます。具体的には、在庫管理の改善、損益分岐点を意識した利益構造の見直し、キャッシュフロー管理の徹底などです。これらの取り組みにより、HANNAの業績は回復し、雪は経営者として大きく成長しました。
まとめと感想
本書は、会計の基本を分かりやすい例えやストーリーを通じて学べる点が素晴らしいです。特に吾妻のユーモラスな指導が、難しい内容を楽しく読ませてくれます。数字が苦手な人でも、物語を通じて自然に知識が身につく構成は秀逸です。キャッシュフローや損益分岐点など、ビジネスに欠かせない概念が具体的に解説されており、中小企業の経営者やビジネス初心者には特におすすめの一冊です。
口コミでも「初心者に最適」「会計が身近に感じられる」と評判で、ネット上でも高評価が目立ちます。ぜひ本書を手に取り、物語とともに会計の世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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