『科学的な適職』 鈴木祐
概要
『科学的な適職』は、鈴木祐さんが書いた、科学的根拠に基づいて自分に合った仕事を見つける方法を解説した本です。多くの人が抱える「この仕事は自分に合っているのか」「好きなことを仕事にすべきか」といった疑問に対し、著者は従来の常識を覆し、脳科学や心理学の視点から新しい仕事選びの基準を示します。好きなことや年収を基準にするのではなく、「脳が気持ちいいと感じる仕事」を見つけることで幸福度が高まると主張しています。具体的なアプローチとして、避けるべき仕事選びのポイントや、重視すべき要素を7つずつ紹介し、読者が自身に合った職を見つけるためのガイドラインを提供します。
本のジャンル
自己啓発、ビジネス、メンタル・マインドフルネス
要約
『科学的な適職』は、仕事選びに対する根本的なアプローチを再考するための本です。著者の鈴木祐さんは、仕事を選ぶ際に「好きなことを仕事にする」「年収を重視する」という一般的なアドバイスが必ずしも幸福につながらないと指摘します。これらの基準で仕事を選ぶことの問題点を解説しつつ、脳科学や心理学に基づいた新たな基準を提案します。それは「脳が気持ちよくなる仕事を選ぶ」ということです。この考え方を理解するために、以下のポイントについて詳しく説明します。
1. 「好きなこと」を仕事にするのはリスクがある
一般的に「好きなことを仕事にするのが成功への道」と言われていますが、著者はこれに異を唱えます。なぜなら、好きなことを仕事にすると、理想が高まりすぎてしまうからです。たとえば、「自分の趣味が仕事になれば最高だ」と思いがちですが、実際に仕事となると責任やプレッシャーが生まれ、楽しさが薄れてしまうことが多いのです。これは、白馬の王子様が自分を迎えに来るのを待つようなもので、現実的ではありません。
さらに、多くの成功者が「好きなことを仕事にした」と言うのは、過去の成功を美化して語る傾向があるからです。たとえば、スティーブ・ジョブズの有名なスピーチでも「好きなことを見つけなさい」と語られていますが、実際には彼の人生の中で最も関心があったのはテクノロジーではなく、スピリチュアルな領域でした。ジョブズが成功したのは、結果的に取り組んでいたことに興味を持つようになり、それを好きだと思い込んでいたからです。同様に、多くの偉大な芸術家や起業家が最初からその分野を「好き」だったわけではありません。自分の工夫や努力で仕事を理想的なものに変えていくことが、より現実的で効果的なアプローチなのです。
2. 年収で選ぶと幸福度が長続きしない
お金が幸福をもたらすかどうかについては、さまざまな研究が行われています。著者は、年収が上がることで短期間の幸福感が得られることは認めつつも、その効果は長続きしないと述べています。たとえば、豪華なステーキを毎日食べると、最初は嬉しいですが、次第にその喜びが薄れていきます。これを「限界効用逓減」と呼びますが、お金に対しても同じことが言えます。年収800万円から900万円までは幸福度が上昇する傾向があるものの、それ以上になるとほとんど影響を与えなくなります。さらに、年収3000万円を超えると逆に幸福度が下がるケースもあるのです。
また、他人と比較してしまうことも、年収での仕事選びが幸福につながらない理由の一つです。高収入の職業に就くと、同じように高収入の人々が周囲に集まり、自然と「もっと稼がなければ」というプレッシャーを感じるようになります。このように、他人との比較によって自分の幸福感を見失うことがよくあります。
3. 攻撃型と防御型に合わせた仕事選び
著者は、仕事を選ぶ際に「攻撃型」か「防御型」のどちらのスタイルが自分に合っているかを見極めることが大切だと述べています。攻撃型の人は競争が好きで、チャレンジ精神旺盛なタイプです。たとえば、テクノロジー業界や広告業界など、スピード感のある職場が向いています。一方、防御型の人は安定した環境でミスなく着実に仕事をこなすことが得意で、技術職や経理などの仕事に向いています。
自分のスタイルに逆らった職場に身を置くと、脳が自然とストレスを感じ、幸福度が低下する傾向があります。そのため、まずは自分がどちらのタイプに近いかを診断し、それに基づいて職業を選ぶことが推奨されます。
4. ヘルパーズハイを活用する
「ヘルパーズハイ」とは、人を助けることで得られる快感のことを指します。著者は、他人に貢献することで感じる満足感が長期的な幸福感につながると述べています。たとえば、ボランティア活動や介護など、人の役に立つ仕事は、報酬が少なくても満足度が高い場合があります。これは、他人を助けることが脳内の報酬系を刺激し、ポジティブな感情を引き起こすからです。仕事を選ぶ際には、自分がどれだけ他者に貢献できるかを考えることが重要です。
5. 理想の仕事は探すのではなく作り出す
著者は、「理想的な仕事はどこにも存在しない」と断言します。しかし、「現時点で悪くない」と思える仕事を自分の工夫で「理想的」に近づけることは可能だと言います。これは、最初から完璧な条件の仕事を探すのではなく、自分のスキルや興味に応じて仕事をカスタマイズしていくことが大切だという意味です。たとえば、最初は退屈だと思っていた仕事でも、自分なりの工夫で新しい挑戦を取り入れることでやりがいを見つけることができるのです。
感想とまとめ
『科学的な適職』は、仕事選びに対する新たな視点を提供してくれる本です。特に「好きなこと」や「年収」といった表面的な基準にとらわれず、脳が自然と喜ぶような仕事を見つけるという考え方は、今後のキャリア選択に大きな影響を与えるでしょう。また、攻撃型と防御型の分類やヘルパーズハイの活用といった具体的なアプローチも、実際の仕事選びに応用しやすいです。この本を読むことで、仕事に対する考え方が一変し、毎日の働き方がより豊かになるきっかけとなるでしょう。ぜひ、これからのキャリアに悩む方に手に取ってほしい一冊です。その中には、きっと自分らしい働き方を見つけるヒントが詰まっているはずです。
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