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極私的批評「ぼくのお日さま」
ネタバレ気になる人は見てから読んでね
交わる事の無いそれぞれの視線から伝わる愛や孤独が痛々しくも美しかった。誰かが誰かを見つめてる姿を見ることが出来るのって映画の中だけだと思う。そんな醍醐味が詰まっていた。
伸びやかな身体性を切り取るカメラワークが抜群。ざらついた映像に差し込む光線。少年の汗や熱気がうっすら見えてリアルで凄く綺麗だった。私の地元釧路市はアイスホッケーが盛んで冬の体育がスケートだった事もあって子供の頃に感じた純粋に身体を動かす喜びみたいなものを思い出した。(私は氷上を滑る事は出来るけど止まれなくていつもクルクル回転して尻餅をついてばかりだった)
スケート場の非日常な雰囲気とか氷上に立っている時に感じた感覚がフラッシュバックした。冷気に肌がざわつく感じ。凄く好きだった。
鑑賞しながら同じく北海道ロケの鉄道屋とかアイヌモシリ等、冬景色を映した映画を思い返していた。比較する訳では無いけど本作における街や自然などの被写体の取捨選択は抜群だったように思える。カンヌのある視点部門賞的な(伝わる?)日本だけど日本じゃないというか、その街の特色・概念を丁寧に掬っているように感じた。衣装も華美でも地味でもない北国のリアルさがあって好感だった。
こう振り返ってみるとあらゆる点でめちゃくちゃ肌に合う、自身の感覚的に馴染む映画だったんだなと思う。
村社会と古のジェンダー感についての描写があるんだけど、そこの救いのなさについて身の周りで数名言及していて、ここについては直接意見を交わしたいと思った。映画が映すべきものと映したいものと現代の文化芸術がどうあるべきなのか?って話に通じる事だと感じた。
全てをハンバートハンバートに託したラストはもうズルすぎ。涙止まらず。でも今後は腰を据えて最後の最後まで映し尽くす様な作品を作って欲しいと思った。めっちゃ期待しちゃってる奥山 大史監督の商業デビュー映画「ぼくのお日さま」みんなも見てみてね。