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極私的批評 オーファンズブルース 

お久しぶり。浮いた話など見当たらず、何があったわけでもないけど、なんとなく最近幸せ。でも変わらず、風が吹くだけでとてつもなく悲しい気持ちにもなる。大通公園で散歩する犬を眺めるという趣味を夏頃から始めたのだけど、ふわふわのお気に入りを見かけた際などの瞬間に訪れる気持ちをまだ言葉に出来ないでいる。友達と飲みながらキューティーワンちゃんウォッチャーしてた時にふと思いがけず、大胆にも胸に飛び込んできた白いふわふわな毛並みのポメラニアンを抱いた際の感動がまだ忘れられない。まぁつまり犬見ることくらいしか無いくらい暇です。

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今回は手短にいくね。ネタバレ無しでいってみよー!



京都造形芸術学部の卒業制作として撮られた・工藤梨穂監督『オーファンズ・ブルース』を観ました。好みど真ん中の重い作品で、めちゃくちゃ喰らいました。

「思い出を忘却する前に少女は大切な友の姿を追い求める」

記憶が欠落する病を抱えるエマは行方不明の幼なじみのヤンを友人らと探しに。その存在と大事な思い出が消える前に彼女の再会の願いは叶うのか?失われゆく記憶に嘆き苦しむ少女の切なる叫びが聴こえるロードムービー。

2018年/カラー/89分

まぁ、もうね、一言で言うとべらぼーにセンスが良い。とても映画撮り初めの監督だとは思えない感性。カメラlikeクリストファードイルのビビッドな躍動感と簡素でありながら効果的な演出。そして主演の村上由規乃さんの達観の極地のような表情。久々に映画冒頭からずっと胸のざわめきが止まらなかった。最近面白い映画に当たってるなーと思っていたけど、本作は輪をかけて好みにドンピシャでした。

何に似てるだろうと考えながら見ていて浮かんできたのは青山真治監督の「サッドヴァケーション」や塩田 明彦監督の「害虫」
映画に触れたての頃に見た時のあの動揺が懐かしかった。「これは本当に見ていてもいいのだろうか?どうにかなるのではないか?」といった自問自答の感覚を思い出すほどに、壊れてしまった(失ってしまった)人間の感情や心の機微がリアルだった。タイトルが示す通りオーファン=見捨てられた子供達の今と過去が凄く胸に痛かった。


暗澹とした話運びだが、画面上に「映すもの/映さないもの」の選択が非常に巧みで、見えないからこそ浮かび上がるキャラクターの過去を表現するフレッシュな俳優陣の演技は見事でした。数多にある、技術不足をエモでコーティングして雑に出してくる凡百の映画とは一線をかくしていた。

傷を負っているが、それでも生きていきたい。そんな人間の再生を巡る表現が私は好きです。

本作の工藤梨穂監督・新作『裸足で鳴らしてみせろ』が札幌では来月公開される。

「一緒では苦しすぎるが、ひとりでは生きていけない」フランソワ・トリュフォー監督『隣の女』のセリフから着想を得た——『オーファンズ・ブルース』の新鋭・工藤梨穂が紡ぐ、 やさしくて痛い青春のきらめき寡黙な青年二人の間であふれ出る愛情や欲望の行方を、肉体のぶつかり合いと、偽りの旅を通して描き出す。

『裸足で鳴らしてみせろ』めちゃくちゃ楽しみです。札幌ではシアターキノにて11/12より上映。見逃せない映画監督がまた一人増えたことがとても嬉しいよ。


またね!

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