遺体処理技術の変遷① ドライアイスからエンバーミングへ
①葬儀業界にとってのドライアイス
人体は死んだ直後から腐敗が始まり、遺体内部に腐敗ガスが発生して腹部が緑色に変化していく。日本では2~3日、気温が高いともっと早く腐っていく。それを防ぐために、従来は二酸化炭素固体化させマイナス79度でゆっくりと溶け後始末も面倒ではないドライアイスを使って腐敗臭や損傷を抑えている。日本に初めてドライアイス輸入されたのは1929年。葬儀ビジネスにおいてはドライアイスは元手がかからないのに1日8000~10000円のドライアイス代を請求できるというおいしい商品であるし、そもそもドライアイスは化学製品を製造する際に余剰として生まれるもの(廃ガスという不用品をリサイクルさせたようなもの)なので、太平洋ベルト地帯などに近い葬儀屋はほぼタダでドライアイスを入手できるという低コスト商材となっている。
②葬送様式の変化、ドライアイスの役目の終わりとエンバーミング
エンバーミングとは遺体衛星保全の新たな技術のこと。本来、死体は血液就下といって心臓の停止で流れが止まった血液が重力によって下部に集まるという現象により、仰向けの遺体の血液が背中側にたまっていく。こうして顔から血の気が失せるのを防ぐためにもともと死に化粧を行っていたが、やはり死に化粧やドライアイスによる腐敗食い止めでは不自然な印象が残るため、そこでエンバーミングという遺体から血液を抜いて固定液(ホルマリン)を注入する作業を施す。アメリカではかなり普及していて日本円で2~4万円でできるが、2007年度には日本でのエンバーミングは全体の1%程度、大手葬儀社や関西での施工率は半数近くと高い。エンバーミングが普及しにくいのは日本だとコレラ流行によって遺体を火葬する文化が推進されたため。エンバーミングには血液と防腐固定液を入れ替えるコンプレッサーのようなエンバーミングマシンや専用の器具を輸入する必要がある。またエンバーマーという専門技術者の教育費や人件費も必要で、諸経費で月に一人当たり100万円ほどかかり、大手葬儀社にはだいたい3名が常駐しているため300万かかる。エンバーミングの処置費用は10~20万円ほどだが、防腐液を注入するだけの格安プランだと5万円ほど。