見出し画像

万引き依存症(クレプトマニア)の人に伝えていること

※クレプトマニアの当事者にとっては厳しい内容になっているかもしれません。

物を盗むときの高揚感が癖になってしまう依存症、クレプトマニア。万引き依存症というほうが分かりやすいかもしれない。男性も女性もなりうるが、女性のほうが3倍多い。

クレプトマニアの人は、自分に必要なもの、価値あるものを盗むわけではない。盗む行為自体と高揚感が目的になっていて、商品そのものにはあまり興味がない。たとえば食べ物を盗んでも、持ち帰って食べるでもなく、捨てたり腐らせたりしてしまう。服を盗んでも、それを着るわけでもない。人によっては盗んだものを食べることもあるし、着ることもあるが、それでも盗むことと高揚感が目的であって、「食べものがほしい」「服がほしい」という動機ではない。

「高いものを盗ったわけじゃないんですよ」
「盗るのはどうでもいいものだけなんです」
「盗った食べものも腐らせちゃうんです」
「盗んだ服は捨ててしまいます」

彼らの中には、裁判を控えているという人が多い。弁護士からクレプトマニアの診断書をもらうように助言があるようだ。そのときに、「こういう症状があるからクレプトマニアと診断した」と記載してほしい、と頼まれることもある。

こういうとき私は、「少し厳しいと感じるかもしれませんが、どうしても伝えておきたいので」と断って、以下のような話をする。


あなたがクレプトマニアという病気で苦しんでいることは確かです。病気になってしまったのは誰のせいでもありません。治療は受けるほうが絶対に良い。それはお酒やギャンブルの依存と同じです。ただ、お酒やギャンブルと違って、スリップ・再発は必ず防がないといけません。他の依存症はスリップしても外来や入院で改めて治療に取り組むことができますが、盗んで逮捕されたらたいてい刑務所ですし、治療が途切れてしまいます。

それだけでなく、絶対に忘れてほしくないのは、あなたのスリップには被害者がいるということなんです。
「高いものは盗っていない」というのは、被害者にとってはまったくなんの言い訳にもならないんです。
「どうでもいいものしか盗らない」「腐らせる」「捨ててしまう」というのを被害者が聞いたら、お前ふざけんなと思うんじゃないでしょうか。病気だから仕方ない、とはなりません。むしろ逆でしょう。
被害者の人たちは、1個売って利益が何円、何十円というのを積み重ねて生活しているわけです。それを盗んだ人が、「どうでもいいもの」とか「腐らせる」とか「捨てる」とか言っているのを聞いたら、腸が煮えくり返りますよ。

(冒頭に書いたようにクレプトマニアには女性が多いので)少し想像してみてほしいんですが、あなたが電車で痴漢されたとして、「性欲があるわけじゃない」「ほんのちょっと触っただけ」と言われて納得できますか? 下着姿やトイレを盗撮されて、「撮るときの高揚感がほしいだけで、撮ったものは家では見ていません。すぐに処分しています」と言われて、被害感情がやわらぎますか? そうはならないですよね。
あなたに盗まれた人たちも同じなんです。

大切なことなので、繰り返しますよ。
あなたのスリップには被害者がいる。
これは絶対に忘れないでください。

いいなと思ったら応援しよう!