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患者さんからの電話に「〇〇先生は~」と“先生”をつけるのはおかしいか問題
患者さんからの電話に対して、事務や看護師が、
「○○先生の外来は~」
と“先生”をつけるのはおかしい。一般企業であれば呼び捨てで対応すべき場面で、なぜ「先生」をつけるのか。
という意見がある。
みなさんはどう考えるだろうか。
これについて、私は以下のように考えている。
電話の取り次ぎで職員が主治医を呼び捨てにすると、電話した患者さんからすれば「主治医はあなた側ではなく、こちら側の人間です」という「壁のようなもの」を感じてしまうかもしれない。
実際、医師を呼び捨てにしたところ患者さんから怒られた、という話も聞く。医師が「病院側の人間」なのは確かなのだが、患者さんが「主治医は自分側の人」と思いたい気持ちも分かる。
また、「『チーム医療』のチームには患者さんも含む」という考えもある。これに従うなら、同じチームなのだから、医師について「お互いに普段の呼びかたを用いる」というのは自然なことかもしれない。
この問題は、一般企業でのマナーを厳格に当てはめるのではなく、「主治医と患者」という病気をテーマとして関わり合うデリケートな関係において、「患者さんの感覚」はどうなのかも考慮に入れたい。
一般企業では「社員は会社を代表していると心構えよ」と教育されるし、顧客もそういう感覚に近い。しかし、医療において、患者さんが「主治医は病院を代表している」と感じているかというと……、そういう人は少ないのではなかろうか(もちろん、電話して「◯◯先生は~」と言われるのはおかしいと思う患者さんも多くいるだろう)。
ここでふと、野球のヒーローインタビューが思い浮かんだ。あの場でも、選手は身内である人たちに敬称や敬語を用いる。
「あの場面、長嶋監督が思いきり行けと仰ったので」
こういうとき、「監督の長嶋が行けと申しましたので」とは言わないはずだ。
「監督もファンも身内」という感覚だからかもしれない。
同じように、患者さんと主治医は同じチームに属する、という感覚だと、電話の取り次ぎで、
「(あなたのチームの主治医である)◯◯先生は~」
カッコ内が無意識に働いて、こういう言いかたになってもおかしくはない。
そして、それは一概に間違いとは言い切れないのではなかろうか。