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長男の嘔吐と人類進化のロマン

深夜、3歳の長男が嘔吐した。

吐物のにおいは、こちらの嘔吐感も刺激する(いわゆる「もらいゲロ」)。その刺激たるや、糞便のにおい以上だ。

大便は誰もがほぼ毎日する正常なことだが、嘔吐はそうではない。嘔吐するということは、なにかに感染している可能性があり、吐物は糞便以上に避けるべきものだ。
小集団で生活していた太古人類のうち、他者の吐物のにおいでもらいゲロする個体は早めの感染対策をしたことになり、その遺伝子は生存に有利で、我々に受け継がれた。

間違うといけないのは、「感染しないためにもらいゲロするよう進化した」わけでないということ。
「もらいゲロする遺伝子がたまたま有利で生存し拡がった」というのが進化だ。

進化は無目的である。
個体のばらつきのうち、たまたまその時代の生存に有利だったものが生き延びて、次世代に受け継がれる。

典型的な勘違いに「キリンは、高いところの食べ物を食べられるように首が長くなった」というのがある。これを子どもに教えている人やテレビ番組がある。
正しくは「首の長い個体が有利だった時代があり、そこで生き延びた個体が次世代に首が長くなる遺伝子を遺した」のだ。

不快に感じることや身体症状、一部の遺伝性疾患なども、それらがあったからこそ有利になって生き延びられた時代があり、それがいまの自分たちに受け継がれている結果なのである。
(たとえば鎌状赤血球症は貧血になるがマラリアを発病しにくいとか、ヘモクロマトーシスはペストに感染しにくいとか)

そう思うと、長男の吐物のにおいも、というか、もらいゲロしそうになる自分の反応にも、人類進化のロマンが詰め込まれているのだと感じてしまう午前3時であった。

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