見出し画像

心を豊かにするのが、エッセイ

忙しい日常で、自分の人生を考えてみたくなる。そんな瞬間って誰にもあると思います。

私もそうです。

そんなとき、ふと、本について語りたくなった現役編集者です。

今回は特に、私の心に深く根付いているエッセイについて、皆さまと共に考えてみたいと思います。

情報過多な時代に見失うもの

今や、私たちの周りには二つの大きな情報の流れがあります。

一つは、即効性のある実用的な知識。「今すぐ使える」「成果が出る」というノウハウ系の情報です。もう一つは、著名人やインフルエンサーの日常を切り取った、どこか親近感のある情報の数々。

そんな中で、エッセイという存在は、後者に近いようで、実は全く異なる深い味わいを持っています。

ビジネス書とエッセイ、その違い

私は普段、ビジネス書の編集に携わっています。そこでは常に「正解」を求められます。問題解決の方法、スキルアップの手順、組織運営の極意—。どれも「これが最適解である」という断定的な結論に向かっていきます。

こうした明確な指針は、現代社会を生き抜く上で必要不可欠な知恵となります。私たち一人一人が、仕事で成果を出し、組織の中で活躍していくために、ビジネス書から学ぶべきことは数多くあるのです。

その一方で、エッセイは違った角度から私たちの人生を豊かにしてくれます。 
「私はこう生きている」
「こんな考え方もあるよね」
と、著者の人生観を通して、新しい視点を優しく提示してくれます。それは、私たちの心に静かに寄り添い、考えるきっかけを与えてくれるのです。

『そうか、もう君はいないのか』が教えてくれたこと

私がおすすめしたい一冊が、城山三郎さんの『そうか、もう君はいないのか』です。

経済小説の巨匠として知られる城山三郎さん。数々の歴史的人物や企業家を描いてきた筆が、最愛の妻との別れを綴ったとき、そこには深い人間性が溢れていました。

文章からは、強さの中にある繊細さ、成功の中にある寂しさ、そして何より、大切な人と共に歩んだ人生の意味が浮かび上がってきます。

エッセイが持つ力

忙しない日々の中で、私たちは時として立ち止まることを忘れてしまいます。
「このまま進んで良いのか」
「本当にやりたいことは何か」
—そんな問いかけを後回しにしがちです。

でも、時にはゆっくりと考える時間も必要なのではないでしょうか。

エッセイは、そんな私たちに優しく語りかけてくれます。他者の人生を通じて、自分の生き方を見つめ直すきっかけをくれるのです。

成長を求められ、変化を強いられ、時に息苦しくなる現代社会。

そんな時こそ、一冊のエッセイが、あなたの心に小さな安らぎを届けてくれるかもしれません。

静かな夜に、お気に入りの一冊を手に取ってみませんか?
きっと、あなたの心に響く言葉が見つかるはずです。📕

いいなと思ったら応援しよう!