【100分de名著を語ろう】中井久夫スペシャル(3)
こんにちは。
今回は12月22日(木)21時からclubhouseで実施する「100分de名著を語ろう」ルームで用いる「レジュメ」をお届けします。2022年内に実施する会は、これでおしまいです(29日は原則お休みといたします)。年明けは、1月2日(月)22時からの「100分deフェミニズム」を視聴しながらの、mocriを用いたオンラインチャットから始める予定です。1月6日(木)は、中井久夫スペシャル(4)ができればと思っていますので、放送日程が確認でき次第、再度ご案内いたします。よろしくお願いいたします。
第3回 多層的な文化が「病」を包む――『治療文化論』
今回の放送(12月19日)の放送で取り上げられたのは、斎藤環さんも「中井さんの本から1冊を敢えて選ぶとしたらこれ」と明言されていた『治療文化論』(1983年)です。ここでは、そもそもが「病む」とは、そして「癒える」とはどういうことであるのかを照射されているように思われます。以下、放送テキストの小見出しごとに、内容をピックアップして、話し合いの一助としていきたいと考えます。
①「個人症候群」という新たな概念
ある個人にしか該当しないような精神疾患として「個人症候群」という概念を提示。「普遍症候群」「文化依存(結合)症候群」から派生した第三の分類。
DSMやICDなどの「普遍的分類」をも相対化し、それが文化の一部かもしれないというとらえ方をしている。
精神疾患は、文化や個人史といったローカルな特性の影響を受けやすいという特徴をもつ。
「治療文化とは、何を病気とし、誰を病人とし、誰を治療者とし、何を以て治療とし治癒とし、治療者―患者関係とはどういうものであるか。患者にたいして周囲の一般人はどういう態度をとれば是とされ、どういう態度をとれば非とされるのか。その社会の中で患者はどういう位置をあたえられるか。患者あるいは病いの文化的ひいては宇宙論的意味はどのようにあたえられるか。あるいは治療はどこで行われるべきで、それを治療施設というならば、治療施設はどうあるべきで、どうあるべきでないか、などの束である。いいかえれば、この種の無数のことがないまぜになって、一つの「治療文化」となる。」
②地域特有の「文化依存症候群」
「普遍症候群」は、ヨーロッパの精神医学を「標準」とするが、特定の地域にしか存在せず、その地域の土着的な文化と深く結びついているのが「文化依存症候群」。
文化依存症候群によって精神医学は「豊かにされてきた」。
③中山ミキの「創造の病い」
「創造の病い」 「病い」を通過して何か新しいものをつかんだという感じとそれを世に告知したいという心の動きと、確信に満ちた外向的人格という人格変容を来たす過程。
「通常の科学者」から「パラダイムをつくる科学者」に変わる過程や、新しい宗教の創始者などに見られる。
④「妖精の病い」を診察する
強すぎる薬物は、安易に使うとQOL(生活の質)を落としてしまう可能性もある。
⑤中井の「知己」に起きたこと
普遍的な病名をつけようがない「例外状態」。
⑥「熟知者」が治療できる病
通常では、自分の家族を治療することはできないことになっているのが精神医療=距離感や客観性が保てないからとされるが、むしろ熟知者こそが治療できるのが個人症候群。
⑦治療文化の多様な形態
非職業的治療文化と職業的治療文化。
⑧精神医学は普遍化できるのか
SMOP 標準化指向型・近代医学方精神医学=医学部を出た「普通人」の実践しうる医学をめざす。
治療を始めてみなければ診断が付けられないことがある(発達障害やひきこもりなど)。
⑨普遍性からは見えないもの
力動精神医学≒精神分析。
べてるの家(当事者研究)。
⑩追記
※12月23日(金)以降、追記をして再公開する場合があります。
今回のレジュメは、以上といたします。mocriの使用テストについては、別途noteにてご案内させていただきます。最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。年末年始、どうぞお健やかにお過ごしください。それではまた!
⑪ご連絡(22/12/22追記)
2023年1月2日(月)22時からの「100分deフェミニズム」を見ながらのオンラインチャットは、mocri を使って実施いたします。以下からアクセスし、mocri アカウントを作成なさってください。各種アカウントと連携して作成できます。