【100分de名著を語ろう】中井久夫スペシャル(2)
こんにちは。
開催当日の公開となってしまいましたが、「中井久夫スペシャル」第2回放送分のレジュメをお届けいたします。今回のサブタイトルは「『病』は能力である」、扱われる著作は『分裂病と人類』(1982年)です。
「S親和者」とは何か
統合失調症を人類史的視野で検証し、人類史に寄与する側面があったというポジティブな評価を発信。
「S親和者」=統合失調症に親和的気質を持つ人、「まだ発症はしていないけれども、もし精神疾患を患うとしたら統合失調症になるだろう人」を示す言葉。
ほんのわずかな兆しを敏感に察知する力:「もっとも遠くもっともかすかな兆候をもっとも強烈に感じ、あたかもその事態が現前するごとく恐怖し憧憬する。
ante festum (祭りの前=先取り)、未来に対して先取り的な構えを持つ。統合失調症患者が持つ構え。(post festum(事後=後の祭り)、過ぎた過去に対してのこだわりをもつ。うつ病患者がもつ構え)。木村敏による概念。
先取り的構え=微分回路=変化に敏感に反応するが、とても疲弊しやすい回路。
あとの祭り的構え=積分回路=過去のデータベースを参照しながら変化に反応し、不測の事態には対応できない回路。
狩猟採集時代のS親和者
狩猟採集時代におけるS親和者の優位性
農耕社会誕生による変化
几帳面さや秩序を重んじる強迫症的な気質が農耕社会では優位。
現在中心的・カイロス的時間 → クロノス的時間が成立。
農耕民のクロノス的時間の成立が、権力や宗教を生み出したと指摘。
「はじめは一つの『気質』、次に『美質』や『徳目』であったものが、時代の変化によって道徳的に正しくないものと見なされ、やがてその失調形態が精神疾患として認識されるようになっていった」
S親和者的な気質が発揮されるとき
非常時または特定の職業倫理において力を発揮していたS親和者的気質。
「社会の全面に出(い)で、個人的利害を超越して社会を担う気概を示す」
「問題解決者としてではなく、問題設定者」
誰もが統合失調症になりうる
主役になる気質の変化は、一人の人間の中でも起きる。
統合失調症的な気質もすべての人が持っており、S親和者とは特にその気質が表れやすい人。
この病気には絶対ならないとは言えない=患者に向き合う治療者は、「私もなっていたかもしれない」という視点を持つべき。
統合失調症は「税のごときもの」
post festum 的構えの人だけの社会は「大惨事」に対応しきれない。
近年、統合失調症の新規発症者が減少傾向にある。
執着気質者の代表・二宮尊徳
「執着気質的職業倫理は、本質的に『建設の倫理』ではく『復興の倫理』である」=「立て直し」を図ろうとする倫理。
「立て直し」と「世直し」
世直し路線はひ弱で幻想的。
世直し路線を立て直し路線にくり込むような動きは、現代においても失われていないと思える。
武士階級の職業倫理
武士道的な自己抑制の倫理観+町人の合理的価値観=境界人(大石内蔵助)。
執着気質者が破綻するとき
「立て直し」のプロセスが終わって「常態」化すると、執着気質的職業倫理の持ち主は困惑する。
「成功体験をうまく処理できない」日本人。
臨床医としての視点
病気をポジティブに評価する
人類全体の病跡学
終了後の追記
※12月16日(金)以降に追加される場合があります。
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