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ビジネス書作家に聞く!「起業成功の鍵」―3C分析と出版戦略で市場ポジションを確立する方法

「なぜ本を出そうと思ったんですか?」

この質問に対する若手起業家の回答から、ビジネス成功への興味深い戦略が見えてきました。今回は、物件カメラマンほか、民泊の運営など複数の事業を立ち上げて成功している坂口康司さんの起業ストーリーを通じて、3C分析と出版戦略がいかにビジネスの成功を後押ししたのかを紐解いていきます。

 

ポイントは「0→1の時に行う3C分析」にありました。

そして、「ポジションを築くための出版戦略」が坂口さんの独自の戦略になっています。

それでは見ていきましょう。


↑坂口康司さんのXはこちら



↑坂口さんのご著書はこちら


▼そもそも3C分析ってなに?


これから起業を考えている人やマーケティングをやったことがない人は3C分析をご存じないかもしれませんので、簡単ではありますが、解説をいたします。

 3C分析は「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つの視点から市場環境を分析するフレームワークです。マーケティング戦略の策定や事業計画の立案に不可欠な手法として知られています。


大事なのは3C分析で自社の強みを把握すること

 

Customer(顧客)分析

顧客分析では、市場全体の規模や成長性、市場状況の変化を見極めていきます。さらに個別の顧客層に着目し、具体的なニーズや購買行動、その背景にあるプロセスまでを深く理解することが求められます。市場全体を俯瞰する視点から、個々の顧客の行動パターンまでを把握することで、効果的な戦略立案が可能となります。

Competitor(競合)分析

競合分析では、業界内での各社のポジションや市場シェアの推移を確認します。また、競合他社の商品・サービスの特徴、開発力、資金力、宣伝力などの要素も詳しく分析します。これらの要素を総合的に見ることで、市場における競争環境の全体像が明らかになります。

 Company(自社)分析

自社分析では、自社の商品・サービスの特徴や市場シェアの推移、資産状況、資本力などを客観的に評価します。同時に、活用可能なリソースの状況や企業としてのビジョンも見直します。この分析により、自社の強みと弱みを明確化し、市場での独自のポジションを確立するための基礎となります。

 

3C分析の目的と意義
主な目的は、マーケティング戦略に必要な情報を収集し、自社の差別化ポイントを明確にすることです。また、市場における自社のポジショニングを確立し、製品やサービスの改善点を発見することにも役立ちます。特に変化の激しい現代のビジネス環境において、3C分析は市場参入や新規事業展開の確実な戦略を立てるための重要な基礎となっています。



▼起業の第一歩となった3C分析

 それでは一つひとつ詳しく見ていきましょう。

 Customer(顧客)

坂口さんは、物件撮影のニーズを持つ不動産業界に着目しました。特に、レンタルスペース業界において、質の高い写真撮影へのニーズが存在していることを見出しました。レンタルスペースビジネスにおいて、スペースの魅力を効果的に伝えることは収益に直結します。しかし、業界の認知度はまだ発展途上で、「もっともっとレンタルスペースに興味を持ってくれる人」が必要な状況でした。

その中で、以下のような顧客ニーズを見出しました。

 

·  レンタルスペースの価値を視覚的に伝える必要性
·   物件の特徴を効果的に表現できる専門的な撮影技術へのニーズ
·   業界の成長に伴う、質の高い写真コンテンツの需要増加
·   供給側(スペースオーナー)の増加に伴う、プロフェッショナルな写真サービスの需要

 

 Competitor(競合)
多くのカメラマンが人物撮影「ポートレートカメラマン」に特化していました。インショップや物件撮影に特化したカメラマンは少なく、そこに市場機会を見出しました。

 

Company(自社)
物件撮影というニッチな領域に特化することで、独自のポジションを確立。撮影技術を磨き続け、さらにIT業界出身であったため、PCスキルの高さが強みに。撮影後のディレクションなどはPCで行うため、その技術が高いと、写真のクオリティもより高められます。また自身の存在感を高めるSNS発信やWebマーケティングもIT企業に勤めた経験が多分に生きました。


坂口さんの3C分析

▼出版戦略による差別化―なぜ出版が効果的だったのか

坂口さんはこれまでに2冊の書籍を出版しています。
「0→1の起業家こそ出版する理由は大きい」という坂口さん。

出版の事業へのインパクトに関して具体的にお話しいただきました。

 

1. 権威性の確立

坂口さんは以下の3つの理由から「カメラマンは社会的地位が低い」という課題を実感していました。

・カメラマンは数が非常に多く、供給過剰な状態
・生計を立てられていないという偏見が存在
・プロとしての専門性や技術が理解されていない
 

こういった課題を著書を持つことで克服し、信頼性を獲得したかったようです。

「本を書いているカメラマンは、ほぼゼロ」という状況を逆手に取り、差別化に成功しました。

 

2. 業界貢献による認知度向上

「レンタルスペースに興味を持ってくれる人」を増やすことで、市場自体の拡大に貢献したいと考えていました。これにより、業界におけるプレゼンスを確立しました。

実際『レンタルスペース投資の教科書』が出ると、東洋経済オンラインなどのwebメディアで本書は取り上げられ、レンタルスペース業界自体が注目を浴び始めました。

↑東洋経済オンラインの記事

業界のプレーヤーがどんどん増えていくことで業界への貢献、そしていいコンテンツを出しているご自身のビジネスも飛躍していったそうです。トレンドインではなく、トレンドの創出を描いていたとも言えます。

出版後の展開

 出版を通じて確立した信頼性は、新規事業展開の基盤となりました。「信頼があったから」こそ、民泊運営代行事業への参入もスムーズに進み、「わずか1ヶ月で売上500万」という成果につながりました。

成功のポイント:段階的な戦略展開

1.  まず3C分析で市場機会を特定
→レンタルスペースの物件カメラマン
2.  専門性を活かした差別化戦略の実行
→IT企業出身の知見を活かしたPCスキルとweb戦略のノウハウ
3.  出版による権威性の確立
→カメラマンと言えば坂口さん、レンタルスペースの物件撮影と言えば坂口さんと言われる状況の創出
4.  信頼基盤を活用した事業拡大
→レンタルスペースの実績を活かして他ジャンルへの進出
 

これから起業する方へ

 市場分析と差別化戦略は重要ですが、それだけでなく、本事例が示すように、出版活動を通じた信頼性の構築が、長期的な成功への重要な要素となり得ます。

「今は本当に、自分がやりたいことだけやり、関わってくれる人たちからお礼の言葉をいただいている」という坂口さん。この言葉が示すように、戦略的な市場ポジショニングと信頼構築の組み合わせが、持続可能なビジネスの成功につながりそうです。

とはいえ、一番重要なのは、自身のスキルを高め続けること。
成長をやめれば、自社の強みは消え、顧客からの信頼も消失します。
本を書くということは「成長し続ける」という自身への誓いにも似たものかもしれません。