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【本を出したい人に向けて 第4回】タイトルに行き詰ったら類書をみろ!

タイトル作成の記事も今回で4回目となります。
企画会議向けのタイトルにせよ、本を発売する際のタイトル付にせよ、
やはり迷うことと思います。

「バズっているワードをフックにしたいな」
「アテンションを集めるためには、メッセージ形式にしようかな」
「すぐに覚えてもらうためにタイトルはシンプルなものにし、
帯によくある共感ワードをいれようかな」
「ライト感をだすタイトル付をしようかな」

などなど、出版社に提出するタイトル案を悩む著者さんは数多いです。

こうやって悩みだすと、
訳が分からなくなるという方もいらっしゃいます。

その悩みよくわかります。なんせ私がそうでした。
編集1年目のころ、
「どうしよう、締め切りが迫っているのに、タイトルでいい案が
浮かばない」
「バズっているワードをいれたほうがいいのかな」
「企画自体はいいけれど、タイトルにパンチがない、あせる」
などなやみまくった経験があります。

そんな時、
「これやると心が落ち着く」ルーティンがわかってきたので、
これから書いていこうと思います。


★タイトル、行き詰ったらこれ! 類書分析・レビュー分析で解像度が爆上がり

悩むときに一番おすすめなのが答えを見てしまうことです。

そこから成功パターンを抽出してみると、
タイトルの方向性が見えてきます。

答えとして一番重要なのが類書。とくに読者の方々のレビューです。
レビューを分析することで方向性も見えてきます。

わかりやすく説明したいので、自分の知り合いの編集者が
本をだすとしたらという前提で話を進めてみましょう。

テーマは仕事術。
「年間30冊の本を世に出し、ベストセラー連発をしてきた
仕事術」というコンテンツで出版社からオーダーされたとしましょう。

さて、仕事術のタイトルで売れている本を見てみると、
『ありえない仕事術 正しい“正義”の使い方』という本がヒットしました。
レビューは234個(Amazon)あります。

▼タイトル分析
まずタイトルのインパクトワードが
「ありえない」。
帯のインパクトワードは「世に出ている「仕事術」なんて
嘘ばっかりじゃないか」。
このワードは顧客が普段実は根深いところで感じているけれどあまり口に出さないインサイトワードでもあります。
読者が言いたかったことを帯に持ってきて、共感を集めるワードになっています。

ただ、このままだとどんな本かよくわかりません。
帯文をほかにみてみると、「既存の様式を破壊する新ビジネス論」とあります。
つまり今までを否定し、「独立」「企画書作成」「メンタル」などに
関する新しい概念をもってきたよ、と言っているのです。

エッジがたっており、常に新しい仕事の仕方を探している読者層、感度の高い顧客に響く設定になっております。

これをみて、「この企画もこの方向性でいきたい!」と
強く思いました。

そこで、このタイトルの方向性から抽出できるものをまとめます。
・今までの仕事術を否定して、斬新な概念があること
・世の中とは異次元のキャリアを打ち立てられるだけの
ものであることがわかることが重要で、かつタグのような形で、中に何が書いてあるのかわかると、なおいいのかなという仮説がたちました。

類書を見て、成功要因を分析。

▼レビュー分析(Amazon)
・筆致は的確、なめらかで読者に負担をかけない、さすがにTV番組制作者である
・過去との決別と受け取りました。このまま前職の働き方を続けていたらなっていたであろう自分との決別。
・テレビマンとして学んだセオリーの話はとても興味深かった。

ここからなにがわかるかというと、
テンポ感の良いかきぶりでいくことが、現代の読者にあっているということ。冗長さ禁止。

また、著者の今までの経験を活かした目線が欲しいということもわかります。

そして、読者の方々が今までやってきた仕事術をやめてでも取り組むべき
と思えるかが重要です。

▼Amazonの商品解説
Amazonの商品ページをみてみると、 

「様々な業界の第一人者が「仕事術」の本を出しています。しっかり読めばわかりますが、どれもこれも概ね同じ内容です。
「本当に重要なことは書かれていない」か、あるいは「当たり前の(だけど真似できない)ことが書かれている」かのどちらかです。
考えてみれば当然です。どの業界のどんなスターだって、自分の手の内をそう易々と明かすわけはないのです。」

Amazonの『ありえない仕事術 正しい“正義”の使い方』の商品ページより引用

とあり、これをみたら自分の本はノウハウ全公開決定です。


★オリジナリティをいれる! 自分がやるとしたら…


ここまで考えて、
「今回の企画はベネフィット感をもう少し打ち出した方がいいのかな」
と思ってしまいました。

知名度的な観点でいうと、この著者さんは頭ひとつ抜けています。
それに、事業インパクトもこちらの企画よりも金額的にかなり上。

とすれば、数で勝負。年間30冊の本を作り、
かつ、1万部以上のヒットも多数作った著者なので、
そこを訴求すべきかな、と考えました。

ただ、これは他業界からすると、わかりづらい。
なので、シンプルにベストセラー連発として、表現します。
ベストセラー連発の著者から「いい仕事術」を得られるのでは? と思ってもらうことが重要です。また、さきほどお話しした、「著者の今までの経験を活かした目線が欲しい」というニーズにもこたえています。

そして、『ありえない仕事術 正しい“正義”の使い方』のレビューでも掲載されていたように、今までの(結果がでない)仕事術を否定し、あらたに取り組んでもらうためのベネフィット感も必要です。

そうすると、タイトルは
『ベストセラー連発の著者が教える キャリアを爆上げする○○な仕事術』

とわたしは設定しました。「キャリアを爆上げ」というワードで、今までとはちがう人生を歩める感じを演出しました。

帯は、「年間30冊の本をだし、圧倒的に世の中にリーチする」
とか、「メールは優先順位をつけずに、来た順にレスをする」
とか、本の具体性を表現するものとします。

あとは○○なに当たる部分をどんなインパクトワードにするのか、です。

▼企画の目次から考える
本の目次が仮に下記のようなものであったとしましょう。

1章 来たメール順に返信する
2章 打ち合わせは初回から企画を本決まりさせる覚悟で臨む
3章 自分の立ち位置を明確に 編集者ではなく、ビジネス書の編集者
4章 タスク管理はデイリーカレンダーに
5章 帰宅する前にやる儀式
6章 一般的なキャリアの3倍上をいかなくてはならない理由
7章 やりやすい仕事~数年がかりでやらないとできない仕事を同時並行で行う
8章 上司の仕事を他を差し置いて最優先に取り組み、信頼を得る
9章 読みたい本は後回し。仕事に直結する本をライバルが休んでいる間に読む

的な感じの目次があったとします。
この中で目を引くものはなんでしょうか?

「3倍」「初回MTG」「デイリーカレンダー」「信頼を得る」
などでしょうか?

これらで先ほどのタイトルに活かせそうなものは「3倍上」。(あくまで私の考えです。違うものを選んでいただいても
かまいません)

とすると、

『キャリアを爆上げする○○な仕事術』

『キャリアを爆上げする3倍上を行く仕事術』

とすると、インパクトがありそうです。

▼インサイトワード
「世に出ている「仕事術」なんて嘘ばっかりじゃないか」
のようなインサイトワードをあとは帯にいれてみましょう。

すさまじく本を作り、ベストセラー連発。
ちょっと嫉妬もしましたが、その人はさくっと定時あがりだったのです。

そんなことから、私はこの知り合いの編集者に対してこんなイメージをもっていました。
「どうやったらそれができるの?」と。


類書『ありえない仕事術 正しい“正義”の使い方』を分析し、得た要素を活かしてタイトル案を入れてみました。


インサイトワードに関しては、後日触れたいと思いますので、
ここで詳しい解説は書きませんが、読者の本心を帯にいれることで、
「これは自分のための本だ!」と感じてほしいため、
帯文とはいえ、しっかり考えなくてはなりません。

わたしはこれを自分の偽らざる気持ちを入れることにしました。

★振り返り

さて、今までの流れを整理すると、
類書分析をすることで、タイトル、帯、コンテンツに必要な要素が浮かんできました。
※実際は1冊ではなく、複数冊分析するべきです。

そこから、オリジナリティをだすために、どうすればいいかを考え、
企画の目次をたどりました。

企画の幹やテーマがわかっているので、類書を分析し、必要なエッセンスを
集めることができます。

もちろん、タイトルの決め方はほかにもたくさんありますが、
行き詰ったら類書を分析して、読者が反応しているところを分析すると、
答えが出てきたりします。

独りよがりではなく、読者が実際に反応している部分にフォーカスするので、自然と自分の考えにも自信を持てます。

★レビュー分析はこの本から学んだ
2023年11月に『売るための努力ほど、無駄なものはない!』という本を編集して世の中にだしました。

「本当にいいものをつくれば、売れていく」ことを提唱し、本当にいいものとは市場の声を分析し、ニーズのあるジャンルで商品開発をおこなうことであるとする曽我浩行さんの本を編集したのがきっかけです。

その時までは、本をつくるために重要なのは自己研鑽と考え、
自身のスキルにばかりフォーカスしてしまっていました。

今は商品を企画する際に必ずレビューも見るようにしています。

自分が考えた仮説が世間と乖離していないか、
自分の思いついたままの目次構成でいいのかどうか、
レビューを見るとよくわかります。

ポジティブなレビューはなぜ引き起こされているのか?
ネガティブなレビューはなぜ引き起こされているのか?

それを考えることで得られるメリットははかりしれません。

まだやったことがない人はぜひ一度レビュー分析をしてみてください。

★類書のタイトルは見まくろう

最後に、類書のカバーは目を凝らし、すみからすみまで見てください。
帯の言葉でどこが強調されているのか?
タイトルのリード文は小さいのに何でついているのか?
タイトルのメリハリはなぜついているのか?

タイトルは出版社とデザイナーが考える以上、意図をもって
フォントが大きかったり小さかったりするはずです。

それらをみて重要なエッセンスは何なのか?
浮かんできます。

こちらもやったことがない人はぜひやってみてください。