【本093】『リカバリー・カバヒコ』
著者:青山美智子 出版社:光文社
町の公園にある古いカバの遊具・カバヒコ。カバヒコはいつも公園にいて、やんわりとした笑顔でこっちを向いています。雨の日も、風の日も。
カバヒコには、不安や痛みのある部分に触ると回復するという伝説があります。様々な重荷を抱えた主人公たちは、カバヒコの頭、足、目などを、カバヒコに語りかけながら撫でていきます。
この小説を読んで、人は静のなかでこそ、回復する力をチャージできるのかもしれないと思いました。カバヒコに語りかける言葉は自分に語りかける言葉。語りかけながら少し視点をずらすだけで、新しい気づきが生まれるんだと。人から「あーしろ、こーしろ」と言われるのではなく、自分で自分をみつめたときにこそ、最良の回答が得られるのかもしれないと思いました。
「病気や怪我をしたっていう、その経験と記憶がつく。体にも心にもね。回復したあと、前とは違う自分になっているんだよ」
人は何かしら失敗します。そして、一度失敗するとどうしても恐怖がつきまとってしまいがち。そんなとき、しかたないと諦めるのではなく、前とは違う自分になったと、違う一歩がふめるといいなと思いました。
どんな人も持っている「しなやかな生きる力」を優しく包む小説です。
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