見出し画像

編集者って、必要ですか?(小説編集者の「先生には言えない話」⑥)

ここ10年くらい悩んでいる。

編集者って、出版社って本当に必要なのだろうか?


出版社に限らず、テレビ・音楽・映画など、
作品を世に出す業界(以下メディアと呼びます)は、ずーっと勘違いしてきたのだと思う。

自分たちは、才能があるクリエイターを「発掘」し「育て」、「プロデュース」する力があると。
だから作品から得られる収益をもらうことができると。
そんな風に、ちょっと偉そうにしていたところがあるのではないかと思う。

でもそれは大いなる勘違いだ。

もちろん、優れた編集者やプロデューサーはいるし、そのような存在の助けによって生まれた作品はたくさんあるだろう。
僕自身もあこがれの編集者はいる。

しかし、メディアがクリエイターに対して影響力があった最も大きな要因は、

「流通を握っていたから」

ではないか。

90年代までは、出版社やテレビ局やレコード会社を通さなければ、世に作品を出すことはできなかった。
つまり流通をメディアが握っていたのだ。
だからこそ、クリエイターに対して大きな影響力を持っていた。

しかし、ネットが全てを変えた。
この20年で徐々に、しかし確実に、メディアを通さなくても作品を発表できるようになった。
メディアが流通を寡占していた時代は終わったのである。
(流通の主がIT企業に移ったともいえるが)

そしてそれは「才能を寡占」させて頂いていた時代の終わりも意味する。


小説はまだ電子書籍が主流となっていないが、少しずつ流れは変わってきている。

だから「出版社って必要?」と、この10年悩んでいるのだ。

2019年現在の結論としては「仕事の精度を高めて、作家(クリエイター)の方に必要だと言って頂かなくてはならない」というものだ。

第1回から書いてきたようなことを愚直にやるしかないのだ。

小説のテーマや展開のアイディアを出す。
必要な資料を集め、取材を手配する。
作家の方が執筆に集中できるような環境を整え、
モチベーションを上げるようサポートする。
原稿をより良くするための改善点を提案する。
文章の校正をする。
センスある装丁を考える。
プロモーション案を考え実行する。サイン会も執り行う。
映像化など、権利関係の処理を代行し、推し進める。

そして結果を出す。
作家の方々に「出版社と付き合った方が良い」と思って頂かなくてはいけないのだから。

編集者の真価が問われる時代が来ている。
流通を握っていたことにあぐらをかいている編集者がいたとしたら、彼/彼女は淘汰される。
今までよりはるかに厳しく、結果が問われる時代だ。
そしてそれは正しい変化だと思う。

冒頭の疑問は作家の方々も、あるいは読者も胸に抱きつつある。

編集者って、出版社って本当に必要なのだろうか?

それに胸を張ってイエス、と答えられるような編集者でありたい。


「コラム街」は、講座「企画でメシを食っていく」の4期生のメンバーでつくるウェブマガジンです。 ほかの執筆者のコラムはこちらから!