![本屋](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/10814777/rectangle_large_type_2_32f3f88bb21042bc93018c38cb1de787.jpeg?width=1200)
本の顔をつくる(小説編集者の「先生には言えない話」③)
編集者にとって、書店は戦場だ。
数多くの本の中から、担当作を選んでもらわないといけない。
なにしろ大型書店になると1店舗の蔵書数は100万冊にも及ぶ。
だから第一印象となる表紙を作る仕事は重要なのである。
ちなみに、最近表紙買いした本はこちらです。
どれも素敵……!
本の顔となる表紙だが、デザイナー、イラストレーターまたは写真家を誰にお願いするかを考えるのは編集者だ。
そして作家と相談しながら、具体的にどんな表紙にするかも決める。つまりアートディレクションもできる。
僕はこの仕事がとても好きだ。
そして、表紙は内容に合ったものでなくてはいけない。
だから写真を使うときは、ありものの写真ではなく、新規で撮影するようにしている。
今でも恥ずかしい思い出がある。ある青春小説の表紙を作った時のことだ。
「光溢れる教室で女子中学生がたたずんでいる」という写真にしたいと考えた。
まずは撮影場所だ。教室のようなスタジオが見つからず、母校に交渉する。
当時の教師が残っておらず難航するが、何とかOKをもらった。
モデルは女性誌にいる同期に紹介してもらう。
問題は衣装の制服だった。
女友達に借りようとするも、個性的すぎるデザインで断念。
仕方がないので買うことにする。調べると高島屋にあるようだ。
お店に入った瞬間、「まずい」と気づいた。
店内は女子中高生ばかり。視線が痛い。
険しい顔をした店員が光の速さで声をかけてくる。
「何かお探しですか」
「いや、制服を」
しどろもどろになってしまう。制服を買おうとする男はまあ不審者である。
「どんな制服をお探しですか?」
「じょ、女子中学生が着るようなものを」
完全に変質者である。
「ええと、どのような目的で?」
「えっ、着せて撮影しようと思いまして」
完全に性癖の曝露である。
途中で名刺を出すことを思いついたので事なきを得た(?)ものの、もう少しで別室行きだったと思う。
これも編集者の仕事だ。と書こうとしたものの、これは相当レアな仕事だと思う……。
(第3回おわり)※第4回更新は5月1日です。令和元年になる日ですね!
「コラム街」は、講座「企画でメシを食っていく」の4期生のメンバーでつくるウェブマガジンです(毎月1日更新です)。ほかの執筆者のコラムはこちらから!
https://note.mu/bookandmusic/n/n918043f2d2f2