校閲ボーイ?(小説編集者の「先生には言えない話」⑤)
校正・校閲という言葉をご存じだろうか。
石原さとみさんが主演したドラマ『校閲ガール』でその存在を知った方も多いかもしれない。
校正・校閲は先生が書いた原稿の内容や表記の間違いをチェックすることである。
細かく言うと校正は表記の間違いや誤字をチェックする、校閲は内容の間違いをチェックする、という違いがあるものの、私の編集部ではどちらも「校正」と呼んでいる。
さて、実は編集者もこの校正を行う。
専門の校正者がチェックした原稿をさらに編集者もチェックするのである。
それを先生に見せて、先生が直すかどうかを決める。
この校正の作業、間違い探しのようで結構面白い。
例えば、このコラムを読んでくださっている方は、
下記の文章で指摘すべき点が分かるだろうか。
(5個潜んでいます)
東西線神楽坂駅の3番ホームで、ついに私は犯人を追い詰めた。 焦った犯人はおもむろにナイフを突き出してくる。 それをかわし、腹にパンチを叩き込んだ。 犯人の端正な顔が苦痛にゆがむ。 間髪入れずに二発目をその顔に叩きこんだ。
(↓答え?はスクロール↓)
私なら先生にこう指摘をします。
●神楽坂駅に3番ホームはありません。1番か2番の間違いでは?
●おもむろは「落ち着いて、ゆっくりと行動するさま」の意ですが、文脈上OKでしょうか?
●端正→端整 (顔立ちが整っているさまは「端整」)
●間髪入れずに→間髪を容れずに(成句です)
●叩き込んだ、叩きこんだ、どちらかに表記を統一しますか?
このレベルなら基本直すことが多いが、例えば「敷居が高い」「姑息」など誤用が一般化した言葉は、辞書と意味が違っても直さないこともある。(特に会話の中でつかう場合)
文章の間違いをゼロにするのは不可能だけれど、ゼロに近づけるのが編集者の大事な仕事なのである。
最近、AIが校正をする日が来るというニュースが盛んに報じられている。
編集者が校正をしなくてもいい日が割とすぐ来ると思う。
他の作業に集中できるということはあるものの、少しだけさびしい気もする。
※第6回更新は7月1日です。
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