テケテケ
(やばい! 今日も忘れた!)
学校に宿題を忘れてきたことに気がついたぼく。
実はここのところ、毎日のように忘れ物をしている。
そろそろ連絡帳に「忘れ物が多いようです」って書かれてしまうかも知れない。
(そんな事になったら、ママに怒られる)
時間は夕方、先生たちはまだ学校にいるはずだ。
(よし、取りに行こう!)
ぼくは急いで学校に向かった。
学校に到着した頃には、すっかり日も暮れていた。
(あれ?)
校舎の二階の廊下の窓に誰かがいる。
(女の子だ)
窓から顔を出しているその子は、両ひじを窓枠について、にこにこしながらぼくを見ている。
おかっぱ頭の、笑顔のかわいい女の子。
(あんな子、いたかなあ…)
女の子はすっといなくなった。
僕は職員室に向かうと、先生に事情を話す。
「また忘れたのか、仕方ないな」
と苦笑されたけど、教室に入るのを許してもらえた。
校舎の中はガランとして誰もいない。
(なんだか気味が悪いな)
ちょっとびくびくしながら、教室がある3階に向かう。
宿題は机の中にあった。
(良かった、怒られなくてすむ)
ほっとして階段を下りながら、二階に差し掛かった時。
ふと、廊下の女の子が気になった。
(そう言えば……あの子はなんでこんな時間に学校にいるんだろう?)
気になって、二階の廊下をのぞいてみる。
女の子の後ろ姿が見えた。
相変わらず窓枠にひじをついて外を見ている。
しかし。
「うわあああああ!!!!」
ぼくはおどろいた。
その女の子の腰から下がなかったのだ!
女の子はくるりとうしろを向いた。
笑顔がみるみる鬼のような、ものすごい顔にかわる。
そして上半身が浮いた状態でぼくの方に向かってきた!
「ぎゃああああああ!!!」
ぼくは必死に逃げた。
テケテケテケ……
女の子は両腕を前で組んだまま、猛スピードで追いかけてくる。
僕もまけじと全力で走る。
階段を降り、昇降口を飛び出し、校門に向かい…
なのに、校門の前。
ついに距離が縮まる。
テケテケテケ……
奇妙な音と、生臭い息を背後に感じた。
(かみつかれる!)
そう思ったとたん、ぼくは何かにつまづいて転んでしまった。
だけど、結果的にはそれが良かったらしい。
女の子は急に止まることができなかったのだろう。
そのままものすごいスピードでぼくを追い越し、校門に激突。
スッと消えた。
おそらく、あの女の子はテケテケという妖怪なのだろう。
ぼくは、ぜったいに忘れ物をしないと心にちかった。